8 / 13
皇帝=魔王 ベイザー現る
しおりを挟む
王宮の庭園がよく見えるバルコニーで昼食をとる。きれいな青空とよく手入れのされた木々や草花がこころを安らがせる。……あまりにもいろんなことがありすぎた。こんなリラックスできるひと時を過ごせることに感謝せねば。
「アルさん……お疲れさまでした」
と王女リファイアはオレをいたわってくれた。
「王女さま……建国姫イリスはどういう方だったんでしょうか?」
憧れている人物だ、だからリファイア王女はまちがいなく詳しいに違いない。
「アルさん……イリス姫が気になるのです?」
とリファイア王女は聞く。
「はい、きっと庶民の伝承とは実像が違うでしょうから、なかなか聞く機会もございませんし、たずねております」
「アルくん……は、勇者レンだと思う。私もう確信している……」
とエリルは脈絡もなく言った。表情をみるからに嫉妬しているのが伺えた。
他の女の話を彼女の前でするとこうなることがあるが、まさか建国姫相手にそれは反則だろう。
「いや、村人だって」
「あのね……300年前から来たから忘れただけだよ?」
「だから、オレはレンの村で育った記憶がキチンとあるんだって! 妹だっているんだぜ」
「妹さんね……、それも確信の理由のひとつなんだよね!」
「どういうことだよ?」
「結婚式の時あったじゃん。私に敵意むき出しだったし」
「あいつは、ブラコンなだけだって」
「私、アルくんの妹のエルさんなんだけどさ……名前は似ていても、双子とは思えないぐらい……似てないよね?」
「そうかな? でも、スゴイ気が合うんだぜ? 喧嘩もするけど」
「……痴話喧嘩なんじゃないのっ?」
「は? ちょっと待てよエリル。あいつは妹だぜ、いくらなんだって」
「でもアルくん、エルさんには頭あがらないよね? ……私以上にっ」
「おい、オレの妹に嫉妬してどうするんだよ?」
「私知っちゃったの、朝王女さまから聴いて」
「何を?」
「300年後に行くのに、レンとイリスはその反動で若返っていき、最終的に、たどり着いたさきで赤子になっている可能性が高いんだって!」
「つまりなんだ、オレとエルが……、レンとイリスっていうことかよ?」
「うん、そうだと思う」
「つまり、オレとエルが……300年前に婚約していると?」
「そうだよね! 歴史が正しければ」
「いやいやいや、どういう歴史よそれ? 知らんしっ」
その時だ意外な人物が昼食に現れた。
「なんか、楽しそうだな? 仲間にいれてもらっていいかね?」
と。そちらを見ると、胸には帝国の紋章をつけた壮年の男がいた。
階級章は軍最高司令官を意味するものをつけている……こいつは。
「皇帝ベイザー、なぜ、お前がここにいる!」
「ははは、居たらわるいのかい? 穏便にたのむよ」
「失礼ですが、訪問の知らせを我が国は受けておりませんが……」
リファイア王女が問いただす。
「わがうるわしのエリルの君に逢いに来ただけだからなっ」
「おい、エリルはオレの妻だ!」
「まあまあ、そう怒らず……それは……知らなかったよ」
「どこからそもそも来たんだよ!」
「鏡から……といえばわかるかな?」
「語るにおちたものだ。古代魔法語が使えるのは300年前の存在であることを意味する。……魔王なんだろ? お前」
「アルくん……」
「なんだよ?」
「アルくん……やっぱり勇者レンなんだ……」
「違うって、ホントにそんな記憶ないから!」
「……君は勇者レンじゃないか! 私がいえば君は信じるかな?」
と皇帝ベイザーは言った。
「……アルさん、申し訳ないのですが、わたくしも、あなたがレン様であることを確信しております……」
と王女リファイアまで言うのだ。
「……あんまりだ。こんなのってありかよ!」
「アルくんは明らかに魔法戦士だよね?」
とエリルが言う。勇者レンは魔法戦士だったと伝えられている。
「そら、攻撃避けたよ、古代魔法語使えたよ? それだけじゃん!」
「……それだけって……じゃ、イリス様の肖像画そっくりの妹のエルさんは?」
「……肖像画なんてみてないし……イリス様の顔は記録ないだろうに!」
「アルさん、機密情報ですが、王宮にはあるのですよ……」
「そ、あるの。さっき私みてきたから!」
「まさかと思うけど、勇者レンの肖像画もあるのか?」
「……ありますね」
とリファイアが言った。
「他人のソラ似かと想いましたが、……イリス様そっくりの妹がいるとなると話は変わりますね……」
……マジかよ!
ってそうじゃない!
「おい、ちょっと話それているぞ! 皇帝ベイザー! お前魔王なんだろ?」
ということはやつが魔王であることも自明ということだ。
それに対して皇帝ベイザーはそれをあっさりと認め、意外なことを切り出したのである。
「アルさん……お疲れさまでした」
と王女リファイアはオレをいたわってくれた。
「王女さま……建国姫イリスはどういう方だったんでしょうか?」
憧れている人物だ、だからリファイア王女はまちがいなく詳しいに違いない。
「アルさん……イリス姫が気になるのです?」
とリファイア王女は聞く。
「はい、きっと庶民の伝承とは実像が違うでしょうから、なかなか聞く機会もございませんし、たずねております」
「アルくん……は、勇者レンだと思う。私もう確信している……」
とエリルは脈絡もなく言った。表情をみるからに嫉妬しているのが伺えた。
他の女の話を彼女の前でするとこうなることがあるが、まさか建国姫相手にそれは反則だろう。
「いや、村人だって」
「あのね……300年前から来たから忘れただけだよ?」
「だから、オレはレンの村で育った記憶がキチンとあるんだって! 妹だっているんだぜ」
「妹さんね……、それも確信の理由のひとつなんだよね!」
「どういうことだよ?」
「結婚式の時あったじゃん。私に敵意むき出しだったし」
「あいつは、ブラコンなだけだって」
「私、アルくんの妹のエルさんなんだけどさ……名前は似ていても、双子とは思えないぐらい……似てないよね?」
「そうかな? でも、スゴイ気が合うんだぜ? 喧嘩もするけど」
「……痴話喧嘩なんじゃないのっ?」
「は? ちょっと待てよエリル。あいつは妹だぜ、いくらなんだって」
「でもアルくん、エルさんには頭あがらないよね? ……私以上にっ」
「おい、オレの妹に嫉妬してどうするんだよ?」
「私知っちゃったの、朝王女さまから聴いて」
「何を?」
「300年後に行くのに、レンとイリスはその反動で若返っていき、最終的に、たどり着いたさきで赤子になっている可能性が高いんだって!」
「つまりなんだ、オレとエルが……、レンとイリスっていうことかよ?」
「うん、そうだと思う」
「つまり、オレとエルが……300年前に婚約していると?」
「そうだよね! 歴史が正しければ」
「いやいやいや、どういう歴史よそれ? 知らんしっ」
その時だ意外な人物が昼食に現れた。
「なんか、楽しそうだな? 仲間にいれてもらっていいかね?」
と。そちらを見ると、胸には帝国の紋章をつけた壮年の男がいた。
階級章は軍最高司令官を意味するものをつけている……こいつは。
「皇帝ベイザー、なぜ、お前がここにいる!」
「ははは、居たらわるいのかい? 穏便にたのむよ」
「失礼ですが、訪問の知らせを我が国は受けておりませんが……」
リファイア王女が問いただす。
「わがうるわしのエリルの君に逢いに来ただけだからなっ」
「おい、エリルはオレの妻だ!」
「まあまあ、そう怒らず……それは……知らなかったよ」
「どこからそもそも来たんだよ!」
「鏡から……といえばわかるかな?」
「語るにおちたものだ。古代魔法語が使えるのは300年前の存在であることを意味する。……魔王なんだろ? お前」
「アルくん……」
「なんだよ?」
「アルくん……やっぱり勇者レンなんだ……」
「違うって、ホントにそんな記憶ないから!」
「……君は勇者レンじゃないか! 私がいえば君は信じるかな?」
と皇帝ベイザーは言った。
「……アルさん、申し訳ないのですが、わたくしも、あなたがレン様であることを確信しております……」
と王女リファイアまで言うのだ。
「……あんまりだ。こんなのってありかよ!」
「アルくんは明らかに魔法戦士だよね?」
とエリルが言う。勇者レンは魔法戦士だったと伝えられている。
「そら、攻撃避けたよ、古代魔法語使えたよ? それだけじゃん!」
「……それだけって……じゃ、イリス様の肖像画そっくりの妹のエルさんは?」
「……肖像画なんてみてないし……イリス様の顔は記録ないだろうに!」
「アルさん、機密情報ですが、王宮にはあるのですよ……」
「そ、あるの。さっき私みてきたから!」
「まさかと思うけど、勇者レンの肖像画もあるのか?」
「……ありますね」
とリファイアが言った。
「他人のソラ似かと想いましたが、……イリス様そっくりの妹がいるとなると話は変わりますね……」
……マジかよ!
ってそうじゃない!
「おい、ちょっと話それているぞ! 皇帝ベイザー! お前魔王なんだろ?」
ということはやつが魔王であることも自明ということだ。
それに対して皇帝ベイザーはそれをあっさりと認め、意外なことを切り出したのである。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
殿下、婚約者の私より幼馴染の侯爵令嬢が大事だと言うなら、それはもはや浮気です。
和泉鷹央
恋愛
子爵令嬢サラは困っていた。
婚約者の王太子ロイズは、年下で病弱な幼馴染の侯爵令嬢レイニーをいつも優先する。
会話は幼馴染の相談ばかり。
自分をもっと知って欲しいとサラが不満を漏らすと、しまいには逆ギレされる始末。
いい加減、サラもロイズが嫌になりかけていた。
そんなある日、王太子になった祝いをサラの実家でするという約束は、毎度のごとくレイニーを持ち出してすっぽかされてしまう。
お客様も呼んであるのに最悪だわ。
そうぼやくサラの愚痴を聞くのは、いつも幼馴染のアルナルドの役割だ。
「殿下は幼馴染のレイニー様が私より大事だって言われるし、でもこれって浮気じゃないかしら?」
「君さえよければ、僕が悪者になるよ、サラ?」
隣国の帝国皇太子であるアルナルドは、もうすぐ十年の留学期間が終わる。
君さえよければ僕の国に来ないかい?
そう誘うのだった。
他の投稿サイトにも掲載しております。
4/20 帝国編開始します。
9/07 完結しました。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる