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外伝 第一弾

高天原で…

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高天原たかあまはら

そこは日本の天津神あまつかみ達が住み、日の本の八百万神 やおよろずのかみが集う場所

空気は澄み、暑くも無く、寒くも無い。
周りを自由に飛び回る風は暖かく、あたっているだけで心穏やかにさせてくれる。

その風に吹かれ、さぁぁ…という、小さく控えめな聴き心地の良い音を草同士が鳴らす草原と、金色こんじきに輝き、風によってざあざあと波打っている田んぼ
そして、さらさらと静かな小川のせせらぎが響き渡る。


草は、まるで干したてのふとんのように柔らかく
ここで一休みと腰を下ろせば、あっという間に眠りに落ちてしまうだろう…

そこに、着ているものなど知らん!といったように仰向けになり、ちぎれた雲がぽつぽつと浮かぶ青空を眺める人影があった

着ている服は少々乱れ、所々草がつき、遠くから吹かれてきたのか桜の花びらが、地に広がっていた長く黒い髪に付いていた。
その影…いや、少女は空の一点を見つめ、口を少し開く




「暇じゃのぅ…」Oo。。( ̄¬ ̄*)ぽあぁん




…そう呟く影は、高天原を統べる主宰神

太陽神  天照大御神
であった…




「やはり、この場所は良いのう~♪日向ぼっこには最適じゃ!」(≧Д≦)ゴロゴロ♪



天照が草の上でゴロゴロしていると、黄金色に光る田んぼの向こうから、ザッザッという足音が近づいてきた。

それは天照に向かって真っ直ぐ近いてくると、天照の頭の方で足音が止んだ



「姉さん…やはりここに居ましたか…」(´`)=3



それは天照をよく知る神であり、
よく振り回されている神でもあった…



「おお!其方か、



夜の世界を統べる神であり、天照の弟

月の神  月読尊つくよみのみこと
であった


外見は20~30歳ほど、男としては少し長めの黒髪で長身の若い男であり、服装は天照と同じく平安時代の貴族の和服で、白と紺を基調としたシンプルな色合いの服であった。

天照と同じく顔は整っており、もしも人間界に降りたのならば色々と目立つ事は間違いないだろう。
…疲れ切ったサラリーマンのような雰囲気がなければの話だが…



「またその姿になっておられるのですか?」(ノ_-;)ハア…

「良いではないか!見た目は幼き方が目立たぬであろう?」ニヒッ♪

「十分目立っているのですが…この言葉何回目ですか…」

「そうじゃな~、確か~…」(´-`).。oO

「聞いていません!それほどまでに申し上げているのですよ!?それに、近衛はおろか付き人も連れずに御一人で何処かに行かないでいただきたいのですが!?もっと主宰神としての自覚を持ってください!!」
(   ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾これも何回目ですか!

「近衛なんぞ連れなくても妾一人で対処できるし、付き人なんぞ連れていたらこんな風に寝転べんだろ?それに普段はしっかりやっているつもりだが?…それを言いに来たのか?」(*´-`)~♪

「確かにそうかもしれませんが…ハァ…まぁ本題に入りましょう…」(ー ー;)

「やはり説教だけではないか…其方もまずは座れ、話はそれからじゃ」



天照は月読にそう言うと、体を起こし、さらりとした綺麗な黒髪を整え、乱れた服装を直すと、赤紅色の光が天照を包み込むと、その光は徐々に大きくなり光が消えていくと、そこにははつらつとして元気のある少女はいなくなり、代わりに儚いながらも気高く、おしとやかそうな女性が座っており、自分の右側の大地を撫でるかのように優しく、ぽんぽんと叩き、月読に座るよう促す。

月読は促されるまま静かに座り込み、少しの間、風にあたり心を落ち着かせる。
そして、目を閉じたまま月読の言葉を待っている天照に顔を向け、口を開く



「姉さん、お聞きしたい事があります」

「二回ほど姿を見なかった事なのですが…もしやでしょうか?」

「そうだな、ちょうど面白い人の子がいたのでな。今はその者に任せている。其方がどう思っているかは分からんが」

「姉さんが決めた事ですから、私は悪く思っていませんが…やはり、“人の子一人に任せるのはどうなのか”という話は耳に入って来ます…それに…わざわざ姉さんが出向き、姉さんの小太刀を与えるなど…」



その話は、天照を探すため歩き回っている最中に聞こえてきたものであった。確かに月読もその意見には一理あると思ってしまった。
小太刀の件も理解はしていたが、納得はしていなかった。

神でもない、ただの人の子一人に…と



「ふふっ、そうか…やはりそのような話もあるか…」



だが天照は、予想していたかのように、少し笑った後、そう呟く。
風が首元を通り過ぎ、天照の長い髪がふわりと後ろに流され、天照の整った横顔が現れる。
目を開き、月読を見ずに蒼い空を見上げる。
そして、髪についていた桜の花びらを優しく摘み、口を開く



「月読よ…確かに妾達は神で、あの者は数多くいる人の子の中の一人に過ぎない。あっという間に散ってしまう花びらの一枚に過ぎない」



そう言うと、摘んでいた花びらをふわりと風に乗せるように優しく離すと、
花びらは風に乗り、舞い上がりながら遠くの彼方へと飛んで行った。
天照はそれを見届け、見えなくなったところで月読に顔を向け、微笑んだ。



「だが、だからといって信じることを辞める理由にはならん。森を見て木を見ず、じゃな。流石に一人一人見守ることは出来んが、信じることは出来るであろう?例え、人の子らが妾たちの事を信じなくてもな?」ニコッ

「…人の子が我ら神を全く信じなくなれば、我ら神は消えてしまうかもしれないというのに…」

「しかし妾たちはそれしか出来ん…いや、妾信じたいのだ。例え忘れられようとも、妾は人の子を信じたい。だからあの者に小太刀をやったのも、妾なりの行動だ」



月読はなぜか嬉しくなった。高天原を統べる神としてではなく、自分自身の考えをしっかり持ち、堂々と考えを言う、気高く、逞しいこの人は、自分の姉なんだと改めて知る事ができたからだ。
月読はふっと笑うと、こう思った。

やはりこの人には敵わない、そして止められないな

と…


「分かりました。私も少し、信じてみようかと思います」

「うむ、分かってくれて何よりじゃ」(^_-)



二人の間に風がひゅうひゅうと音を立てて流れていく…
どうなるか分からない事を考えながら、空を見上げるのだった。




























「…聞きたい事というのははそれだけだな?」


天照はそう言うと、ポン!という音と共に、元気そうな少女の姿になり、月読に向かってニッと笑う…


「だから其方にはこれからもと苦労を掛けるが、よろしく頼むぞ!」





…訂正、何としてでもどう暴走を止めるか考えねば…


草原に、そう頭を抱える男神と、ハッハッハ!と、大きく笑いながら転がり回る見た目が少女の女神がいたそうな…
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