花火空

こががが

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後編

part 18

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 愛は急に、肩の力が抜けたような感覚を覚えた。

 そっか。
 日枯ひがらし は私が思っていたよりも芯が強くて、真っ直ぐなままなんだ、と昔のような安心感が満ちてくる。


「まあ、日枯ひがらし 君の好きなようにやれば、いいんじゃない? 誰かの死の真相を追うのも、理不尽な炎に立ち向かうのさえも辞めてさ」

 日枯ひがらし の視線が、花火から自分に向いているのを、愛はなんとなく感じた。

 赤色の花火が美しく枯れると、間を空けずに、次の花火が咲き誇った。
 空が黄金色に染まった。

「それにさ。あの太陽たいようさえも倒してしまった日枯ひがらし 君なら、もう自由に生きても、誰からも石を投げられないよ。今度こそ、中学の時にやり残したこと、片っ端から潰してきなよ」

 日枯ひがらし 君は大丈夫。きっと、大丈夫。
 愛は顔を上げて、今度こそ日枯ひがらし の目を見つめる。


 ありがとう。

 日枯ひがらし の目は、本当に、優しく笑っていた。
 やっと普通の高校生みたいに、ぱっと明るく、きらめいて。
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