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後編
part 17
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「ごめんって、なにがさ」
愛がスンと返事をする。
本当は突然の謝罪に、心を大きく乱されてしまっていた。
でも、今は何とか表情に出ないように、ひたすらに彼から目を逸らした。
「ずっと、いあさんをやきもきさせてたと思う。ずっと、あいまいな返事しかしてなかったから」
「だから、なにがさ」
「ひかりさんのこと」
愛は黙って唇を噛む。
日枯 は、その反応を見越していたのだろう。
淡々と言葉を重ねていく。
「先週、ひかりさんと会った」
「ひかり先輩と?」
思わず声が裏返ってしまった。そんな愛をを見ても日枯 は決して笑わない
。
「ひかりさんに音楽部のこと話した」
「フルート、辞めちゃうことも?」
「そのことなんだけど」
日枯 が一拍分、呼吸を置いた。
「ひかりさんの申し出、引き受けることに決めた。ひかりさんの使っていたあのフルート、僕が引き継ぐ」
「え?」
思わず、愛は顔を上げてしまう。
その瞬間、日枯 と目が合ってしまう。
彼の黄色の目は花火に照らされて、どこか優しげに揺らいで見えた。
「あの黒い木のフルートを? 日枯 君が?」
「うん」
日枯 は少し恥ずかしそうに、夏空の中の光に目を泳がせる。
「ひかり先輩のフルート。大切に使わせていただくことになって、ひかりさんの代わりに、色々挑戦してみることにした」
そうなんだ。
シンプルな言葉と裏腹に、思わず頬が綻んでしまっただろうか。
彼の言葉に本当は、とても、すごく、心が救われた気がした。
今の今まで、ぼんやりとした言葉しか並べなかったくせに、いきなり明確な言葉を使う。
だから、日枯 はいつもずるい。
「なんだかさ、日枯 君って、合わせ鏡みたいだよね」
「合わせ鏡?」
「うん、鏡。ひかりさんと正反対の存在で、鏡で映したかのように、正反対の道を歩いている」
「不思議なことを言うんだね」
「そんなに不思議じゃないよ。ずっと思ってたこと。音色も音楽へのアプローチも、ひかりさんとは正反対。まるで、合わせ鏡で移したかのような、そんなフルート奏者」
「それって、褒め言葉? 合わせ鏡のフルート奏者」
「少なくとも、私の中では褒めたつもりだけど」
「そっか。いあさんが言うなら、言葉どおりに受け取るよ」
日枯 は「これからも頑張るよ」と真っ直ぐにに誓った。
愛がスンと返事をする。
本当は突然の謝罪に、心を大きく乱されてしまっていた。
でも、今は何とか表情に出ないように、ひたすらに彼から目を逸らした。
「ずっと、いあさんをやきもきさせてたと思う。ずっと、あいまいな返事しかしてなかったから」
「だから、なにがさ」
「ひかりさんのこと」
愛は黙って唇を噛む。
日枯 は、その反応を見越していたのだろう。
淡々と言葉を重ねていく。
「先週、ひかりさんと会った」
「ひかり先輩と?」
思わず声が裏返ってしまった。そんな愛をを見ても日枯 は決して笑わない
。
「ひかりさんに音楽部のこと話した」
「フルート、辞めちゃうことも?」
「そのことなんだけど」
日枯 が一拍分、呼吸を置いた。
「ひかりさんの申し出、引き受けることに決めた。ひかりさんの使っていたあのフルート、僕が引き継ぐ」
「え?」
思わず、愛は顔を上げてしまう。
その瞬間、日枯 と目が合ってしまう。
彼の黄色の目は花火に照らされて、どこか優しげに揺らいで見えた。
「あの黒い木のフルートを? 日枯 君が?」
「うん」
日枯 は少し恥ずかしそうに、夏空の中の光に目を泳がせる。
「ひかり先輩のフルート。大切に使わせていただくことになって、ひかりさんの代わりに、色々挑戦してみることにした」
そうなんだ。
シンプルな言葉と裏腹に、思わず頬が綻んでしまっただろうか。
彼の言葉に本当は、とても、すごく、心が救われた気がした。
今の今まで、ぼんやりとした言葉しか並べなかったくせに、いきなり明確な言葉を使う。
だから、日枯 はいつもずるい。
「なんだかさ、日枯 君って、合わせ鏡みたいだよね」
「合わせ鏡?」
「うん、鏡。ひかりさんと正反対の存在で、鏡で映したかのように、正反対の道を歩いている」
「不思議なことを言うんだね」
「そんなに不思議じゃないよ。ずっと思ってたこと。音色も音楽へのアプローチも、ひかりさんとは正反対。まるで、合わせ鏡で移したかのような、そんなフルート奏者」
「それって、褒め言葉? 合わせ鏡のフルート奏者」
「少なくとも、私の中では褒めたつもりだけど」
「そっか。いあさんが言うなら、言葉どおりに受け取るよ」
日枯 は「これからも頑張るよ」と真っ直ぐにに誓った。
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