花火空

こががが

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後編

part 12

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「もう、そろそろ始まりそうだね」

 行こっか。
 日枯ひがらし の言葉に、愛はただ「うん」とだけ頷いて、歩き始める。

 歩幅は日枯ひがらし が合わせてくれる。
 いつの間にか、さっきまでの足の疲労を忘れてしまっていた。

 足の疲れとか、律村とかの絡みとか。

 そういう愚痴に混ぜて、本当は日枯ひがらし に聞きたいことがあった。

 それも一つや二つではない。

 今年の春から、ずっと疑問に思っていたこと、絶対問い詰めたい、そう思っていたことがあったのに、日枯ひがらし を前にすると、言葉がうまく出てこなくてなる。

 狼煙がうち終わったあと火薬の匂いと、川辺に生い茂った草花の匂いが混ざり合って、夏の夜の空気が、余計に涼やかに感じられた。
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