花火空

こががが

文字の大きさ
上 下
3 / 20
前編

part 2

しおりを挟む
「高校生になっても相変わらずだな。ふたもなさすぎだろ」
 愛に向かって、律村はもう一度、ため息をいてみせる。

「変わらないのはお互い様でしょ? 今も星が好きなんでしょ」
「もちろん」
「じゃあ、天文部に入ったの?」
「当たり前だろ」
 堂々と言い切る彼の姿勢は中学の頃と全く変わってなくて、愛は思わず吹き出しそうになった。


「でも、本当に疲れちゃった。こんなに人来るなんて聞いてなかった」
「いあらしいな、相変わらず」
 あれ、そういえば髪長くなったか? と律村が聞いてきたので、「いや、切ったばっかりなんだけど」とばっさり愛は否定する。

「いあも物好きだよな。なんで、こんな場所まで来たんだよ」
「だって、ここの花火大会は凄いんでしょ? なんかドローンとかも使っちゃってさ」
「とは言ってもなぁ。来週は伊佐木いさき市でも花火大会あっただろ? そっちの方がはるかに近いだろ?」
「最近、雨続いてるしさ。来週の天気もなんか怪しそうじゃん」
「それで、わざわざ一週間も早いこっちの花火観に来たのか」
「まあ、来週も晴れれば伊佐木市の方にも観に行くけどね」
 愛の言葉に、律村は「いあはアクティブだな」と懐かしそうに首の後ろを掻いた。

「でも、本当はさ。いあにも六ヶ原ろくがはらに用事でもあったんじゃないか?」
 律村は振り返って、いあの瞳を見つめる。

 そういえば、わたしのことを「いあ」って呼ぶのは今となっては律村くらいか。

 随分と久しぶりにそのニックネームで呼ばれた気がして、いあは思わず「懐かしい」とこぼしてしまう。
しおりを挟む

処理中です...