どうして俺が推しのお世話をしてるんだ? え、スキル【もふもふ】と【飯テロ】のせい? ~推しと名無しのダンジョン配信~

星屑ぽんぽん

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96話 戦国の夜明け

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 焼きおにぎりを堪能した俺たちは、入念な作戦会議を終えて【鈴木さんちのダンジョン】へと突入した。

「どうもーどうもー……ありえない、ですな……」

【鈴木さんちのダンジョン】に入り、開口一番に驚愕の声を漏らしたのは、意外にもこのダンジョンを知り尽くしたはずの鈴木さんだった。

「ナナシさんがご馳走してくださった、焼きおにぎりの効果もありえなかったですが……第一層は従来の洞窟型ダンジョンだったはずです……どうもどうも、これはいよいよおかしいですな」

 事前情報では一層が洞窟型ケイヴダンジョン、二層が迷宮型メイズダンジョン、そして第三層から地下世界型アレスガルドダンジョンだったはず。
 しかし鈴木さんちの庭の穴を下って行けば、辺りは異様な屋内の中にいるような光景が広がっていた。

 どこかの武家屋敷の中であり、和風な畳やふすまなどがそこかしこに見受けられる。はっきり言ってちょっとホラーだ。
 能面とか般若像とか置いてあるし……日本刀が飾られているかと思えば、ロウソクがゆらゆら揺れてるのに人っ子一人いない和室が連続していたり。

「こりゃかなわんわ……いきなり迷宮型メイズダンジョンやな。しかも未知のダンジョンとか、こちとら聞いとらんよ」

「どうも、昨日までは洞窟型ケイヴダンジョンだったのにこれはおかしいですな」

「慎重にせなあかん。わいらだけじゃ危険ちゃうん?」

【影の友】は攻略前の態度と打って変わり、かなり慎重に辺りを警戒してくれている。きゅーやフェンさんよりも、人工物に対しての見識も深いため非常に心強い。

「んー、トラップや鍵の類は見られないし……まだ大したことないんじゃないかなあ」

【影の友】が攻略続行に難色を示すのに対し、【果てなき財宝】のメンバーたちはもっと奥に行くべきだと主張している。
 さすがにまだダンジョンに入ったばかりということで、一層だけでもちょこっと偵察しようという話で収まった。

「ほんまに……誰もおらへんな……」
「不気味やでほんま」

「きゅー」
『グルゥゥゥゥゥゥ……この大扉の先に、強者たちの匂いがするぞ』

 きゅーとフェンさんの鼻を信じるならば、屋敷の外に通じそうな扉の先に、何かが待ち構えているらしい。俺はそのことを全員に共有する。

「戦闘態勢、用意!」
「ふぉっふぉっふぉっ……胸が高鳴るわい」
「早く戦いてーぜ」

【果てなき財宝】のメンバーたちが扉にトラップがないか確認した後に、【十字架の白騎士】こと皇城すめらぎさんや【夕闇鉄鎖てっさ団】、【豪傑】の面々が臨戦態勢に入る。
 そして彼ら彼女らの後ろに鈴木さんや俺とウタ、【影の友】のフォーメーションを取る。


「いざ、押し開ける!」

【豪傑】のリーダーが扉を開けるとそこには————


「え……そら?」
「まさか第二層まで変化してるの!?」
「どうもどうも……地下世界型アレスガルドダンジョンになってますな」
「武家屋敷がたくさん……?」
「ほんで少し中華風やな」

「……清々しい、ですわ」

 ウタも少しだけ感動しているようだ。
 広々とした青空の下、多くの屋敷が居を構えており、ウタの和装が際立つロケーションだ。

 そして屋敷と屋敷の間では大量に何かが蠢いていた。

 あれは、なんだ?
 俺たちはじっと目をこらす。

「……あれらは人だった者やな」
しかばねが動いている……?」
「ふぉっふぉっふぉっ、鈴木さんちはアンデットの巣窟になったようじゃの」
「どうもどうも……しかし、見た事のないアンデット種ですなあ」
「しかもあれほど群れていながら……組織的に動き回っている……?」
「まるで小さな合戦のようですね」

 言いえて妙ではあるが、屍たちは武者鎧に身を包み、刀や薙刀なぎなた、弓などを用いて互いに殺し合っていた。いや、すでに死んでいるから攻撃し合っている?

「ほーうほうほう、我らが【戦国屋敷】にようこそ、お客人がた!」

 そして俺たちは盛大にやらかしてしまった。
 その声は遠くの丘から響いてきた。俺たちが急いで目をやれば、腐った馬にまたがった屍武者が、大音声で俺たちに名乗りをぶつけてくる。

「我こそは北陸の猛虎! 上杉謙信うえすぎけんしんなり! さああこの乱世をッ、戦国屋敷をッ、存分に楽しもうぞ!」
 
 上杉謙信と名乗る騎馬は一気に丘を駆け降りる。
 さらに丘の反対側に隠れていたのか、彼に付き従う騎馬隊が怒涛の勢いでこちらに突進をしかけてきていた。

 あの数は……非常にまずい。
 少なく見積もっても五百騎はくだらない。
 対するこちらは総勢20人。
 あの物量と質量をまともに受けたら、おそらくこちらは無事では済まされない。
 万が一にも正面衝突なんてしてしまったら骨まで砕かれそうな勢いだ。

 だがそれも————
 こちらにきゅーやフェンさんがいなければの話だ。


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