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第1章 新人冒険者編
あっと言う間の一週間
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祭りの期間は3日間、最終日も師匠と一緒に広場で芸を披露し実践で学ぶ。合間には色々な事を実物や本を見ながら教えて貰いそのまま一週間付きっ切りで指導して頂いた。
「これで私が知っている事を簡単になのですが伝える事は出来ました。後はカイト君が自分で学び成長し身に付けて行って下さい」
「ありがとうございます!」
師匠は次の街に向うという事で別れの時が来てしまった訳だが自然と涙が溢れてきた。時間としては凄く短かったがとても充実した時間だった。この期間に師匠から学んだ事は沢山ある。
まず一つが人形使いとしての技、これはスキルに頼らない技術で日常生活から戦闘に使える物まで今までこの世界で師匠が受け継ぎ進化させた技の基本を教えて貰えた。例えばパペットに芸を仕込む時は言葉と身体で実際にやって見せて学ばせる事や四六時中一緒に行動してお互いの癖を知る事、それを利用した連携の技術。
今までスキルに任せて動いていた身体の動かし方、特に歌や演奏の技術を学べた事は大きかった。全てをスキルに任せずに自分で考えて動かす事で若干ではあるがスキル自体の効果もアップしたし、演奏の短縮や重奏等のテクニックも身に付いた。
「やはりカイト君は才能がありました、日々の努力を怠らなければ私なぞ簡単に抜いてしまうでしょう」
師匠が言う様に教えて貰った技術は直ぐにある程度の形まで実践出来た。恐らく18年間のゲームでの積み重ねと一度全てのジョブをカンストした事による見えない補正が掛かっているのかもしれいし、もしかしたら本当にチート能力が備わっているという可能性も捨てきれない。それくらいのレベルで知識と技術を吸収して身に付けてしまった。
「いえ、師匠の指導が良かったんです。僕なんてまだまです」
「いいのです、私もそれなりに人生経験があります。カイト君が普通ではない事くらいこの短い期間でも分かりますよ。但し驕ってはなりませんよ、人生には謙虚さが必要です。まぁ、年寄りの小言として聞き流してください」
「はい、肝に銘じます」
元々うだつの上がらない落ちこぼれの人間だ、35年の人生のどこか捨てた物や諦めた物も多い。同じようにこれからの新しい人生でもどこかで間違う事があるかもしれない、だけど今度こそ出来る限り真っ当に楽しく正しく生きたいと改めて思う。
「本当にありがとうございました」
「またどこかで会いましょう、次に会う時には私を驚かせくれる事を楽しみにしていますよ」
師匠はそういい残して旅に出た。漠然と思い浮かべてはいたが俺も師匠の様に世界を旅してみたい、いやもっと大きなスケールで世界中の全てを見てみたいと思った。そして今まで見た事もないような風景を見てそれを音楽に乗せて自分の見たモノを多くの人に伝えたい、そう決意した。
「と、いう事があったんだ。だから俺も近い内に旅に出ようと思う」
「お辞め下さいとは申しませんがもう少しレベルを上げるべきかと」
拠点に帰って自分の考えをマキちゃんに伝えると痛い所を突かれてしまった。確かにレベル5で世界を旅するなんて笑い話にもならない。FWOの時には最初にこのファース大陸が実装されレベル上限は50だった、つまり手始めにこの大陸全ての場所に行きたいのであれば最低でもレベル45が必要になる。ゲーム時代でも最初のジョブをレベル50にするのに3ヶ月は掛かった、攻略情報を元に最適な効率を求めてだ。
現実になったこの世界では師匠ですら68歳でやっとレベル45だという事からゲームのように効率だけを求めてレベルを上げる事は難しいだろう。いくつかのアドバンテージはあるが最短でというの現実的ではない。
「一応いくつか考えてはいるんだけどね・・・」
その手段の一つが『初心者の修練場』と呼ばれるダンジョン。これはFWOがサービス開始から8年くらい経った時に後続のご新規さんに向けてレベルを早く上げれるようにと用意された。フィールドよりも多くの経験値が貰えてリスクも少ない所謂『養殖場』と呼ばれる場所だった。初期にくらべるとレベル30まで利用出来てレベル上げの期間が短くなる反面スキルレベルの上昇やプレイヤースキルの習得には不向きで逆に初心者殺しの運営と罠と言われていた。
そんなダンジョンの入り口がこの街の中にあるのは確認している。冒険者ギルドに申請すれば誰でも利用出来て料金も掛からない、更に中では他のプレイヤーと出会わない仕組みで獲物の取り合いやいざこざが起こる可能性もない。つまり俺のパペットと従魔の1人+2体で高速周回が可能になるという訳だ。
一応その辺りが現実になってどう変わったか分からなかったので職員さんに確認したのだが内容は殆ど変わらず誰でもレベル30までなら利用出来る新人さんの訓練場所となっているらしい、ただアイテムやゴールドが得られないので利用者は少ないそうだ。まぁ、それはそうだろうゲームならゴールドなんて取得出来なくてもリアルで生活に困らないし、早くレベルが上がるのなら使わない手はないが現実ならゴールドが得られないという事はご飯も食べれないし宿屋にも泊まれないしでデメリットの方が遥かに大きい。
「当面の目標はプレイヤーレベル30かな。ジョブチェンジが出来ないから吟遊詩人が上げにくいけどその分は人形使いとの合計レベルで計算されるみたいだから取り合えず30になって基礎ステータスさえ上がれば何とかなるでしょう」
「そうですね、それでしたら私も安心して送りだせます」
ゲーム時代の名残で温泉のリジェネ効果とマキちゃんの食事効果、更に薬品でブースとしてアイテムまで使えば早々困る事態には陥らないと見ている。万が一の場合にはポンを囮にしてテレポートリングで逃げるまである。
一応設定上は大破すると再よびだしまで丸24時間が必要だったがここではどうなるか分からないので囮にするのは本当に最後の手段になる。
「ポンは騎士スタイルで確定だとして従魔はサイズ的な問題からクロだろうな、あそこ狭いから他の子は無理だもんな」
ダンジョンタイプなので通路が狭く天井も高くはないのでレオンやライトでは動きづらいだろうしゲンさんなんてサイズ的に天井突き破りそうだもんな。クロもまぁ、小型ではないけど5匹の中では一番小さいから大丈夫だろう。
「じゃあ、買って来た薬草でポーションとかのお薬作るからマキさんも手伝って貰える?」
「畏まりました」
取り合えず予定は決まったので下準備を進めるとしましょうか。
「これで私が知っている事を簡単になのですが伝える事は出来ました。後はカイト君が自分で学び成長し身に付けて行って下さい」
「ありがとうございます!」
師匠は次の街に向うという事で別れの時が来てしまった訳だが自然と涙が溢れてきた。時間としては凄く短かったがとても充実した時間だった。この期間に師匠から学んだ事は沢山ある。
まず一つが人形使いとしての技、これはスキルに頼らない技術で日常生活から戦闘に使える物まで今までこの世界で師匠が受け継ぎ進化させた技の基本を教えて貰えた。例えばパペットに芸を仕込む時は言葉と身体で実際にやって見せて学ばせる事や四六時中一緒に行動してお互いの癖を知る事、それを利用した連携の技術。
今までスキルに任せて動いていた身体の動かし方、特に歌や演奏の技術を学べた事は大きかった。全てをスキルに任せずに自分で考えて動かす事で若干ではあるがスキル自体の効果もアップしたし、演奏の短縮や重奏等のテクニックも身に付いた。
「やはりカイト君は才能がありました、日々の努力を怠らなければ私なぞ簡単に抜いてしまうでしょう」
師匠が言う様に教えて貰った技術は直ぐにある程度の形まで実践出来た。恐らく18年間のゲームでの積み重ねと一度全てのジョブをカンストした事による見えない補正が掛かっているのかもしれいし、もしかしたら本当にチート能力が備わっているという可能性も捨てきれない。それくらいのレベルで知識と技術を吸収して身に付けてしまった。
「いえ、師匠の指導が良かったんです。僕なんてまだまです」
「いいのです、私もそれなりに人生経験があります。カイト君が普通ではない事くらいこの短い期間でも分かりますよ。但し驕ってはなりませんよ、人生には謙虚さが必要です。まぁ、年寄りの小言として聞き流してください」
「はい、肝に銘じます」
元々うだつの上がらない落ちこぼれの人間だ、35年の人生のどこか捨てた物や諦めた物も多い。同じようにこれからの新しい人生でもどこかで間違う事があるかもしれない、だけど今度こそ出来る限り真っ当に楽しく正しく生きたいと改めて思う。
「本当にありがとうございました」
「またどこかで会いましょう、次に会う時には私を驚かせくれる事を楽しみにしていますよ」
師匠はそういい残して旅に出た。漠然と思い浮かべてはいたが俺も師匠の様に世界を旅してみたい、いやもっと大きなスケールで世界中の全てを見てみたいと思った。そして今まで見た事もないような風景を見てそれを音楽に乗せて自分の見たモノを多くの人に伝えたい、そう決意した。
「と、いう事があったんだ。だから俺も近い内に旅に出ようと思う」
「お辞め下さいとは申しませんがもう少しレベルを上げるべきかと」
拠点に帰って自分の考えをマキちゃんに伝えると痛い所を突かれてしまった。確かにレベル5で世界を旅するなんて笑い話にもならない。FWOの時には最初にこのファース大陸が実装されレベル上限は50だった、つまり手始めにこの大陸全ての場所に行きたいのであれば最低でもレベル45が必要になる。ゲーム時代でも最初のジョブをレベル50にするのに3ヶ月は掛かった、攻略情報を元に最適な効率を求めてだ。
現実になったこの世界では師匠ですら68歳でやっとレベル45だという事からゲームのように効率だけを求めてレベルを上げる事は難しいだろう。いくつかのアドバンテージはあるが最短でというの現実的ではない。
「一応いくつか考えてはいるんだけどね・・・」
その手段の一つが『初心者の修練場』と呼ばれるダンジョン。これはFWOがサービス開始から8年くらい経った時に後続のご新規さんに向けてレベルを早く上げれるようにと用意された。フィールドよりも多くの経験値が貰えてリスクも少ない所謂『養殖場』と呼ばれる場所だった。初期にくらべるとレベル30まで利用出来てレベル上げの期間が短くなる反面スキルレベルの上昇やプレイヤースキルの習得には不向きで逆に初心者殺しの運営と罠と言われていた。
そんなダンジョンの入り口がこの街の中にあるのは確認している。冒険者ギルドに申請すれば誰でも利用出来て料金も掛からない、更に中では他のプレイヤーと出会わない仕組みで獲物の取り合いやいざこざが起こる可能性もない。つまり俺のパペットと従魔の1人+2体で高速周回が可能になるという訳だ。
一応その辺りが現実になってどう変わったか分からなかったので職員さんに確認したのだが内容は殆ど変わらず誰でもレベル30までなら利用出来る新人さんの訓練場所となっているらしい、ただアイテムやゴールドが得られないので利用者は少ないそうだ。まぁ、それはそうだろうゲームならゴールドなんて取得出来なくてもリアルで生活に困らないし、早くレベルが上がるのなら使わない手はないが現実ならゴールドが得られないという事はご飯も食べれないし宿屋にも泊まれないしでデメリットの方が遥かに大きい。
「当面の目標はプレイヤーレベル30かな。ジョブチェンジが出来ないから吟遊詩人が上げにくいけどその分は人形使いとの合計レベルで計算されるみたいだから取り合えず30になって基礎ステータスさえ上がれば何とかなるでしょう」
「そうですね、それでしたら私も安心して送りだせます」
ゲーム時代の名残で温泉のリジェネ効果とマキちゃんの食事効果、更に薬品でブースとしてアイテムまで使えば早々困る事態には陥らないと見ている。万が一の場合にはポンを囮にしてテレポートリングで逃げるまである。
一応設定上は大破すると再よびだしまで丸24時間が必要だったがここではどうなるか分からないので囮にするのは本当に最後の手段になる。
「ポンは騎士スタイルで確定だとして従魔はサイズ的な問題からクロだろうな、あそこ狭いから他の子は無理だもんな」
ダンジョンタイプなので通路が狭く天井も高くはないのでレオンやライトでは動きづらいだろうしゲンさんなんてサイズ的に天井突き破りそうだもんな。クロもまぁ、小型ではないけど5匹の中では一番小さいから大丈夫だろう。
「じゃあ、買って来た薬草でポーションとかのお薬作るからマキさんも手伝って貰える?」
「畏まりました」
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