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第1章 新人冒険者編
初めてのステージ
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「ここか・・・」
依頼を出していた酒場はいかにも西部劇に出てきそうな木造の渋い建物だった。果たしてマスターは髭面のおっさんか渋い紳士か巨乳の不二子ちゃんか、どんな出会いがあるのか何だかドキドキしてきた。
「すいません、ギルドの依頼を見て来たのですが・・・」
「お、そいつは助かるぜ。ステージは夜からだがえらく早く来たな」
どうやら酒場の店主は髭面のドワーフのようだ、ちょっとでも期待してた自分が悲しい。
「実はステージに出た事がないのでどういう感じなのかお聞きしたくて早めに来ました、なのでもしかしたらご期待に答えられないかもしれません」
「ん?お前さん吟遊詩人持ちじゃないのか?」
取り合えずこの世界では吟遊詩人=一人前の音楽家という事になっているらしくジョブが発現しているのにステージに立った事がないというのは考えられないらしい。ギルドでは取得条件としてある一定の音楽センスと技術、それに経験が必要と考えられているようでそれを前提とした仕事の依頼だったそうだ。
「なるほどな、取り合えず何か一つ演ってみてくれ。それから判断するからよ」
店主にある程度嘘の経歴を説明しつつ一曲演奏する事になった。取り合えず酒場のギターっぽい楽器を借りて若い頃によく歌っていたフォークデュオのテンポがいいナンバーを演ってみた。
そういえば歌ってる時はよくコブさんというコンビの背が低い方の声に似ていると言われていたがこの世界ではどうなんだろうか?普段喋る声からするとスッと通る中世的な感じで耳に入ってくるんだけど、確かFWOのキャラのボイス担当は若手のイケメン声優だったっけな。
「なんでぇ、何も問題ねぇじゃねぇか。うちはどっちかというとむさ苦しいおっさん共が客だからよ、楽しくて酒が進む歌を頼むぜ」
「分かりました、やれるだけやってみます!」
取り合えず合格点が貰えた様なので物は試しに依頼を受ける事にした。依頼料とは別におひねりが追加報酬になるそうで酒場専門で稼ぐベテランの吟遊詩人や駆け出しの腕試し等、歌い手の実力でその日の酒場の売り上げにも影響があるそうだ。なので気張って歌ってくれよなと背中をバンバンと叩かれてプレッシャーを掛けられてしまった、兎に角頑張らねば。
夜までは情報を集めつつ夜のセットリストを考える。店主の話からするにテンポがいい曲やもしかしたら演歌や歌謡曲なんかでもいいのかもしれない。お店の名前と同じ曲もあったし、その歌手の曲で揃えても面白いかもしれないがガンガン酒が進むかと言われれば分からない。色々考えたが結局考えが纏まらずその場で雰囲気に合わせて臨機応変にやるしかなさそうだ。
「本当におっさんばっかりだな」
「そりゃそうだろうよ、うちみたいな安い酒場にはお似合いの連中さ」
呟いたのを店主に聞かれていたようで笑いながら嬉しそうに仕事をしている。
「じゃあ早速頼むわ、今日はいつもより客の入りが悪いから景気のいい歌でどんどんお客さんを呼んでくれるのを期待してるぜ」
「やれるだけやらせて頂きますね、初めてなのであんまり期待しないで下さいよ」
まずは得意のフォークデュオの曲からスタート。
「お、今日は珍しい曲だな」
「こりゃどこの歌だ?いつもの詩人じゃないのか?」
流石に日本の歌が珍しいのか何人かの客が反応してくれているが、出だしはこんなものだろう。一応日本語で歌っても『全言語理解』の効果でこの世界に最適な言葉として反映されるのは確認しているし、ジョブとしての『吟遊詩人』の謎補正で忘れてしまったキーや歌詞でもなんとなくでいい感じに補正されてしっかりとした曲として成り立つらしい。
しかも俺が持っている曲のイメージや歌詞の内容等でステータスアップや特殊効果が発生するというオマケ付きだ。さすがに酒場のような街中とフィールドのような場所では適応される数値や効果が違うようでココで歌う分には少しだけ気分が良くなったりするくらいの弱い効果しか付与されない。
一応この辺りで人気の曲や定番の曲も調べては来ているので2曲目は定番の曲を演ってみた。
「お、いつものか」
「俺はたまにはさっきみたいな違う曲がいいぜ」
「楽しく飲めりゃあどっちでもいいだろ!ガハハ」
反応は人それぞれで当然だが何となく場が盛り上がって来た気がする。次はこの世界の音楽に近い昭和の懐メロで行って見よう。確か親父が好きで小さい頃カラオケで良く歌ってたんだよなぁ、なんて言うグループだったかな?スッパイダーズ?スッパイダーマン?とかそんな感じだっけな。
そこから何曲かスッパイダーズをメドレーで歌うとかなり酒場が賑わってきた。音響設備はないけど木造で音が外まで漏れるから興味を持った人が入って来たようだ。
「しかし珍しいな、どこの歌だろうな」
「あの兄ちゃん若いのにやるもんだな」
「俺もたまにはおひねり投げてみるか、兄ちゃんいい歌だったぜ」
足元のカゴを見ると殆どが銅硬貨だがそれなりの量が入っていた。どうやら閉店時間も近いらしく次がラストになりそうだ。最後はこの酒場と同じ歌で締めるか。
「えっと、次が最後の曲になります、聞いてください『北の酒場』です」
「お、俺の酒場が曲名になってやがんのか。絶対いい曲に決まってるぜ!」
結局その日は2時間くらいのステージだったろうか、店主も北の酒場を喜んでくれてお客さんも沢山入っていたので凄く充実した時間だった。最終的に晩御飯もご馳走になって依頼報酬とおひねりで8000ゴールド程の収入になった。
価値的には一番安いご飯が1食250ゴールドで宿屋が素泊まり2000ゴールドなので街中で夕方から出来る依頼としてはかなりの高給だと思う。昨日オススメされたワイルドラビットの納品が1体300ゴールドなのでそれから比べると安全に稼げて、その上吟遊詩人のレベルも1つ上がったから美味しい仕事だ。
「明日と明後日も依頼を出す予定だったんがだ、お前さんが良かったら指名依頼として出してもいいか?うちの客達もまた聴きたいって言っててな」
「はい、こちらこそ是非お願いします。明日ギルドで確認して今日と同じくらいの時間に来ますね」
「受けてくれるか、良かったぜ。じゃあ明日も宜しくな坊主」
バシバシと陽気に背中を叩く店主を見てなんだかこっちまで嬉しい気持ちになった。俺みたいな人間でも誰かに喜んで貰えてそれが嬉しいって気持ちになるんだな、ちょっと日本に生きてた時は想像出来なかったよ。
拠点に帰るとマキちゃんがご飯を準備してくれててちょっと申し訳ない気持ちになりつつ何とか完食した。ついでに今日合った事を報告して一曲歌って上げてお礼を言った。初めてのステージという事もあって普段よりも疲れたのかお風呂に入って直ぐに倒れるように眠ってしまった、きっと明日も充実した一日になるだろう。
依頼を出していた酒場はいかにも西部劇に出てきそうな木造の渋い建物だった。果たしてマスターは髭面のおっさんか渋い紳士か巨乳の不二子ちゃんか、どんな出会いがあるのか何だかドキドキしてきた。
「すいません、ギルドの依頼を見て来たのですが・・・」
「お、そいつは助かるぜ。ステージは夜からだがえらく早く来たな」
どうやら酒場の店主は髭面のドワーフのようだ、ちょっとでも期待してた自分が悲しい。
「実はステージに出た事がないのでどういう感じなのかお聞きしたくて早めに来ました、なのでもしかしたらご期待に答えられないかもしれません」
「ん?お前さん吟遊詩人持ちじゃないのか?」
取り合えずこの世界では吟遊詩人=一人前の音楽家という事になっているらしくジョブが発現しているのにステージに立った事がないというのは考えられないらしい。ギルドでは取得条件としてある一定の音楽センスと技術、それに経験が必要と考えられているようでそれを前提とした仕事の依頼だったそうだ。
「なるほどな、取り合えず何か一つ演ってみてくれ。それから判断するからよ」
店主にある程度嘘の経歴を説明しつつ一曲演奏する事になった。取り合えず酒場のギターっぽい楽器を借りて若い頃によく歌っていたフォークデュオのテンポがいいナンバーを演ってみた。
そういえば歌ってる時はよくコブさんというコンビの背が低い方の声に似ていると言われていたがこの世界ではどうなんだろうか?普段喋る声からするとスッと通る中世的な感じで耳に入ってくるんだけど、確かFWOのキャラのボイス担当は若手のイケメン声優だったっけな。
「なんでぇ、何も問題ねぇじゃねぇか。うちはどっちかというとむさ苦しいおっさん共が客だからよ、楽しくて酒が進む歌を頼むぜ」
「分かりました、やれるだけやってみます!」
取り合えず合格点が貰えた様なので物は試しに依頼を受ける事にした。依頼料とは別におひねりが追加報酬になるそうで酒場専門で稼ぐベテランの吟遊詩人や駆け出しの腕試し等、歌い手の実力でその日の酒場の売り上げにも影響があるそうだ。なので気張って歌ってくれよなと背中をバンバンと叩かれてプレッシャーを掛けられてしまった、兎に角頑張らねば。
夜までは情報を集めつつ夜のセットリストを考える。店主の話からするにテンポがいい曲やもしかしたら演歌や歌謡曲なんかでもいいのかもしれない。お店の名前と同じ曲もあったし、その歌手の曲で揃えても面白いかもしれないがガンガン酒が進むかと言われれば分からない。色々考えたが結局考えが纏まらずその場で雰囲気に合わせて臨機応変にやるしかなさそうだ。
「本当におっさんばっかりだな」
「そりゃそうだろうよ、うちみたいな安い酒場にはお似合いの連中さ」
呟いたのを店主に聞かれていたようで笑いながら嬉しそうに仕事をしている。
「じゃあ早速頼むわ、今日はいつもより客の入りが悪いから景気のいい歌でどんどんお客さんを呼んでくれるのを期待してるぜ」
「やれるだけやらせて頂きますね、初めてなのであんまり期待しないで下さいよ」
まずは得意のフォークデュオの曲からスタート。
「お、今日は珍しい曲だな」
「こりゃどこの歌だ?いつもの詩人じゃないのか?」
流石に日本の歌が珍しいのか何人かの客が反応してくれているが、出だしはこんなものだろう。一応日本語で歌っても『全言語理解』の効果でこの世界に最適な言葉として反映されるのは確認しているし、ジョブとしての『吟遊詩人』の謎補正で忘れてしまったキーや歌詞でもなんとなくでいい感じに補正されてしっかりとした曲として成り立つらしい。
しかも俺が持っている曲のイメージや歌詞の内容等でステータスアップや特殊効果が発生するというオマケ付きだ。さすがに酒場のような街中とフィールドのような場所では適応される数値や効果が違うようでココで歌う分には少しだけ気分が良くなったりするくらいの弱い効果しか付与されない。
一応この辺りで人気の曲や定番の曲も調べては来ているので2曲目は定番の曲を演ってみた。
「お、いつものか」
「俺はたまにはさっきみたいな違う曲がいいぜ」
「楽しく飲めりゃあどっちでもいいだろ!ガハハ」
反応は人それぞれで当然だが何となく場が盛り上がって来た気がする。次はこの世界の音楽に近い昭和の懐メロで行って見よう。確か親父が好きで小さい頃カラオケで良く歌ってたんだよなぁ、なんて言うグループだったかな?スッパイダーズ?スッパイダーマン?とかそんな感じだっけな。
そこから何曲かスッパイダーズをメドレーで歌うとかなり酒場が賑わってきた。音響設備はないけど木造で音が外まで漏れるから興味を持った人が入って来たようだ。
「しかし珍しいな、どこの歌だろうな」
「あの兄ちゃん若いのにやるもんだな」
「俺もたまにはおひねり投げてみるか、兄ちゃんいい歌だったぜ」
足元のカゴを見ると殆どが銅硬貨だがそれなりの量が入っていた。どうやら閉店時間も近いらしく次がラストになりそうだ。最後はこの酒場と同じ歌で締めるか。
「えっと、次が最後の曲になります、聞いてください『北の酒場』です」
「お、俺の酒場が曲名になってやがんのか。絶対いい曲に決まってるぜ!」
結局その日は2時間くらいのステージだったろうか、店主も北の酒場を喜んでくれてお客さんも沢山入っていたので凄く充実した時間だった。最終的に晩御飯もご馳走になって依頼報酬とおひねりで8000ゴールド程の収入になった。
価値的には一番安いご飯が1食250ゴールドで宿屋が素泊まり2000ゴールドなので街中で夕方から出来る依頼としてはかなりの高給だと思う。昨日オススメされたワイルドラビットの納品が1体300ゴールドなのでそれから比べると安全に稼げて、その上吟遊詩人のレベルも1つ上がったから美味しい仕事だ。
「明日と明後日も依頼を出す予定だったんがだ、お前さんが良かったら指名依頼として出してもいいか?うちの客達もまた聴きたいって言っててな」
「はい、こちらこそ是非お願いします。明日ギルドで確認して今日と同じくらいの時間に来ますね」
「受けてくれるか、良かったぜ。じゃあ明日も宜しくな坊主」
バシバシと陽気に背中を叩く店主を見てなんだかこっちまで嬉しい気持ちになった。俺みたいな人間でも誰かに喜んで貰えてそれが嬉しいって気持ちになるんだな、ちょっと日本に生きてた時は想像出来なかったよ。
拠点に帰るとマキちゃんがご飯を準備してくれててちょっと申し訳ない気持ちになりつつ何とか完食した。ついでに今日合った事を報告して一曲歌って上げてお礼を言った。初めてのステージという事もあって普段よりも疲れたのかお風呂に入って直ぐに倒れるように眠ってしまった、きっと明日も充実した一日になるだろう。
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