Bro.

十日伊予

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1566 蜜月

報復

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 屋敷に戻ったツィオを、他の赤毛たちが待ち構えていた。ツィオは赤毛たちに捕まり、応接室へと連行される。
「何する! 俺は旦那さまのお気に入りだぞ!」
 訳もわからずに暴れるツィオを、ウェイドが押さえつける。彼は同情をありありと顔に浮かべていた。
「お前、やったな」
 ウェイドのその一言に、ツィオは状況を理解した。失禁しそうなほどの恐怖に襲われ、がくがくと足を震わせてまともに歩けなくなる。赤毛たちは、そんな彼を何人かで抱えて運んだ。
 応接室には、ラスがいた。彼は客用の豪華なソファに座り、無表情でツィオを見つめる。ラスからの一報に仕事を切り上げてきたエンリットもそこにいた。
「マッツィオ、謝罪なさい」
 ラスの向かいに座るエンリットが、確かな口調で命じる。ツィオはエンリットの足元に飛びついた。
「お願いです、旦那さま、許して!」
 涙目で必死ですがり、許しを請うツィオをエンリットは見下ろす。その口元は微笑んでいるが、目は全く笑っていない。
「私ではない。御子息さまに謝罪なさい」
 エンリットがそう言い、静かに床を指差す。ツィオは脂汗を垂らし、ラスの前に両膝をつくと体を丸めた。床に額をつけ、か細い声で謝罪を口にする。その体は、恐怖でこれ以上なく震えている。
「私が欲しいのは、屈服じゃなくて誠意だよ」
 自分が一言で彼の首をはねられる立場なのをわかっていて、ラスはそう言う。
「君がどういう人なのかはわかった。もう謝罪はいらない」
 その声は淡々としていて、ツィオの土下座を見下ろす目はエンリットのそれより冷徹だ。ツィオは唇を強く噛み、今にも漏らしてしまいそうな恐怖を抑えた。
 ラスはエンリットに目配せをする。
「君から彼にひどいことをする必要はない、いいね? これは私たちの問題だ」
 そう言い、席を立った。ラスの足音が遠ざかっていくのを、ツィオは床に額をつけたまま聞いている。完全に聞こえなくなってから、彼は頭を上げた。どうにか殺されずに済んだ。九死に一生を得た、助かった。そう思って息を吐いた時、ラスを見送りに行っていたエンリットが帰ってきた。
「部屋に連れていきなさい。それから手足を繋ぐように」
 彼は、他の赤毛たちにそう言いつける。ツィオが目に涙を溜めた。
「旦那さま、あいつは怒ってないって……」
「私は怒っているよ、マッツィオ」
 穏やかに、しかし確かな非情さを孕んだ声音でエンリットが答える。マッツィオは喉が千切れるほど叫び、逃げ出そうとした。赤毛たちがそれを取り押さえる。ツィオは泣き喚き、暴れ、それでも連れて行かれた。 
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