Bro.

十日伊予

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1566 蜜月

友達

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 アルバは深呼吸をした。すぐ向こうでは、ジャグリング芸人たちが早朝稽古をしている。その中にはフランマもいる。彼はアルバに気がついているが、向こうから声をかけられることはない。アルバはもう一度深呼吸をする。それから、彼らの方に歩き出した。
 ラスに謝れたことで、アルバにはほのかな自信が生まれていた。絶対に許してもらえるとは思っていないが、そうすることに価値がある気がする。できることならフランマとまた話したいし、それに、ラスに褒められる自分でいたい。
 彼が近づいてきたので、ジャグリング芸人たちは手を止めてそちらを見た。それは一瞬のことで、彼らはすぐに稽古を再開するが、アルバはその視線に怯んでしまう。すぐ近くまで来たはいいものの、声をかけたり、それ以上近づいたりできなくなる。そうして困っていると、フランマがフーと大きく息を吐いた。アルバがビクッとするのも構わず、黙って歩み寄ってくる。
「何?」
 アルバの前に立つと、フランマはできるだけきつい口調にならないようにそう聞いた。アルバは口ごもる。
「あ、あの」
 フランマはしばらく待っていたが、彼がうまく話せないようなので自分から口を開く。
「お前さ、俺のことなんだと思ってるの?」
 その言葉は、アルバを責める気持ちを隠していない。ラスがいないことをいいことに仲間が茶々を入れてくるので、フランマは振り返って彼らに威嚇した。
「わかんない」
 アルバはうつむいてしまう。彼の返事に、フランマは顔をしかめた。この後に及んでそんな返事をするのか、と。
「で、でも」
 パッと、アルバが顔を上げた。その声は震えている。ありったけの勇気を振り絞り、どうか、どうかとすがるようにフランマを見つめる。
「ごめんなさい」
 ぽつりと、彼の口から謝罪が出た。
「またフランマと話したい」
 そう言い、アルバの顔はまた下を向く。フランマはうんと頷き、アルバに頭を上げるように言う。
「俺も悪かった。あいつのこと、軽く扱いすぎた。ごめん」
 気恥ずかしそうに頭をかき、自分も謝る。
 アルバの心は、ツィオが話に出てきたことに揺れ動いた。それに気づいたフランマは呆れて目をぐるりとまわす。
「俺、御子息さまのこと、いい人だと思うよ」
 アルバの肩をぽんぽんと叩く。
「ちゃんとやれよ。甘えすぎんな」
 ツィオを引きずってラスをないがしろにするな、そう遠回しに伝える。アルバは目を泳がせた。
「わかんないよ」
 もごもごと言う。
「大事にされると怖い」
 ラスに愛されると嬉しいのに、何度も、何度も彼の想いを確認したくなってしまう。周りに彼との関係を見せびらかさないと不安になってしまう。優しくされて気持ちが落ち着いても、満足は続いてくれない。
 彼のせりふにまた呆れてフランマはあれこれ言いたくなったが、仲間の手前、我慢した。
「まあ、頑張れ。うまくいくといいな」
 そう声をかけ、仲間の元に戻る。
 彼の後ろ姿を見つめ、アルバは彼に許された嬉しさをかみしめた。また、仲直りができた自分が誇らしい。ラスに早く伝えたい。


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