Bro.

十日伊予

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1566 蜜月

告白

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「行かなきゃ!」
 占い師に軽く断りを入れ、ラスはテントを飛び出そうとする。すぐにでもアルバに伝えたいことがある。
 彼が占い師のテントの入り口に手をかけたちょうどその時、アルバが飛び込んできた。
「ダイモンが、お金を」
 珍しく息を切らし、アルバは途切れ途切れに言葉を絞り出す。彼が全て話してしまわなくても、ダイモンが自分たちを引き裂こうとしていると伝えようとしているとラスにはわかった。上下するアルバの方を掴み「大丈夫だよ」と言う。ラスのその目は、らんらんと輝いている。
「アルバ! 君が私の運命の人だ!」
 そんなせりふが彼の口から飛び出した。アルバも、予想外のことにあたふたとしていた占い師も、驚いて目をひん剥く。
「は?」
 突拍子もないラスの言葉に、アルバの口から素っ頓狂な声が出る。構わず、ラスはアルバのたくましい体を抱きしめた。強く、心からの愛情を込めて抱擁する。占い師の顔が青くなるのとは裏腹に、アルバの顔がうち赤く染まった。
「私にはわかる、君こそが運命の人だ。君に違いないよ」
 彼を離し、その青い目をまっすぐ見つめてラスは言う。「今度は何なんだよ……」と、アルバが困惑を漏らした。確かに、ラスが関係をはっきりさせてくれることを強く望んでいたが、こうも急に言い出されると混乱する。
「その、御子息さま、私は」
 テントの入り口に立つ二人の後ろから、占い師がオドオドと声をかけた。自分の言葉でラスがこの行動に出たとしたら、どれだけ恐ろしいことだろうか。いくら自由に出歩き、フランクな態度をとっているとはいえ、ラスは特権階級の御曹司だ。彼がこんなとち狂った色恋に走った原因は自分だと知られたら、極刑に処されてもおかしくはない。
「心配しないで。これは私の選択だ」
 占い師の心中を察し、ラスは彼女に微笑みかける。
「父さんはこんなことで君を責めないし、貴族にも役人にもアルバとのことで誰かを傷つけさせたりしない。だから安心して」
 そう言い、またアルバに向き直る。
「まずは付き合おっ!」
 ラスはあっけらかんに言う。そして彼に満面の笑みを見せた。

「……何言ってんの、お前」
 嬉しさよりも混乱が先に出て、アルバは身を少し後ろに引く。と、ラスは彼の腰に手をやって自分に引き寄せた。体がぴったりとくっついて、顔は鼻先が触れそうなほど近い。ラスの金色の瞳が、アルバの目の前で無邪気にきらめく。アルバはその色に吸い寄せられて、触れる彼の全身に欲を感じている暇はない。
「周りの目なんかどうでもいいよ 私にどうこうできる人なんていないんだから」
 ラスはささやく。不意に、アルバの胸に現実めいたもやが湧いた。
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