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十日伊予

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1566 蜜月

ゴシップ

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「ラスさまは、アルバさんのことをどう思われているんですか!」
 ラスが馬を降りる暇もなく、下働きの若い女が聞いてくる。一座の拠点の入り口でゴシップ好きの女たちに囲まれ、ラスも彼のまたがる愛馬も困った顔をしていた。
 アルバと好きだの何だのと大声でやり取りをして以来、ラスはより一層噂のタネになっていた。今まではツィオと一悶着あったアルバを気に入っていることから男色のケがあるのではとささやかれていたが、その噂は今ではほとんど確信だ。女たちにとっての問題は、ラスのそれがただの性癖なのか、本気の恋愛なのかだ。男妾を囲う貴族などはいて捨てるほどいるが、男の「恋人」を持つ貴族となると大スキャンダルだ。下世話な噂に夢中な彼女たちが飛びつかないわけがない。
 ラスは自分たちについての噂を、もちろん喜びはしないものの、はっきりと答えもしない。あれから、アルバとの関係は良好だ。まだ彼は多少の距離を取ってくるものの、以前のように突っぱねたり逃げ出したりはしなくなった。友人としてそれなりにうまくやれていると思える。ラスは現状に満足できていて、無理に恋愛関係を求める気持ちもない。しかし噂をきっぱり否定すると考えるとそれは嫌だ。この先もしかしたら……と思ってしまい、ここで可能性を絶ってしまうのはもったいないと感じる。噂も人の目もラスにはどうでもいいが、それへの返事が自分たちの関係に影響することを気にして慎重になっていた。
「もう、皆、相変わらずお好きねえ」
 ラスを囲む女たちの輪の外側から、艶っぽい声がする。スースだ。女たちは少し色めきたって、ラスを彼女の方に通す。
 スースも前々からラスの噂に巻き込まれていた。噂というのは、ラスが愛人にするのはお気に入りのアルバか、美人のスースか、なんてところだ。アルバとの噂が発展した今は、玉の輿に乗りかけたスースはラスの寵愛を奪ったアルバに怒っている、などとささやかれている。
「アルバさん、お待ちですよ」
 スースはたおやかに微笑み、馬を降りたラスを案内する。ラスは馬を下働きの一人に任せ、スースについて行った。女たちは二人の動向を気にするも、ダイモンがこちらに来るのが見えると、働けと怒られたらかなわないと散っていく。
「本日もようこそおいでくださいました」
 噂ばかりの女たちを叱りつけたいものの、ラスの手前、ダイモンは彼にへりくだることを優先する。ダイモンが手を擦り合わせると、指輪たちがてらてらと怪しく光った。ラスは手土産を差し出すと「今日も遊んでいくね」と言い、スースとアルバの元へと急ぐ。
「まったく、嫌な組み合わせをしてしまったものだ。どうにかしないといかん」
 ラスがいなくなってから、ダイモンがつぶやく。頭をちょっと掻くとため息をついた。
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