Bro.

十日伊予

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1566 蜜月

理由

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 ラスはアルバにすっかり懐いてしまったようで、彼の気を引こうと様々なことを試みる。野営地の外に出られないアルバのために都の街並みを描いた絵や都の食べ物を買ってきたり、一座の芸人に教わった手品を披露してみたり、普段足にしている馬を野営地まで連れてきてアルバを乗せようとしたりと、あの手この手でアルバを喜ばせようとする。まともに口も聞かずあしらっていたアルバだが、ひと月も経つ頃にはラスのしつこさに参って自分から口を開いた。
「お前、いい加減にしてくれよ。よく続けられるね」
 高級なシャツを自分に着せようとしてくるラスに、アルバは呆れた調子で言う。ラスはきょとんとして小首を傾げた。
「この服は嫌? じゃあ、明日は他の何かを持ってくるね」
「そう言う問題じゃない。お前、ぼくに冷たくされるのによく続けられるね」
 アルバがため息をつく。ラスは微笑んだ。
「アルバが私の昨日考えてきたものを楽しめなくても、今日考えてきたものは気に入るかもしれないもの」
 そう言い、ふと目を伏せる。その表情は少し悲しげだ。
「君が本当に嫌なら、もうやめる」
 彼の言葉に、アルバはウッとひるんだ。ラスはうざったいし心を開くことはまだないが、一緒に過ごすうちに完全に拒絶することはできなくなっていた。最初こそ強い言葉で突き放していたが、いつからか自分の言葉にラスが悲しそうな顔を見せるのが耐え難く感じるようになった。
 アルバが押し黙るので、ラスはそれを「嫌じゃない」と受け取る。穏やかに微笑んで、アルバの手を取った。
「私はアルバといたいよ。それに君の顔を見てると、笑って欲しくなる」
「な、なんで」
 どぎまぎとして、しかしなぜか振りほどけないアルバに、ラスは愛おしげに目を細める。
「好きだから」
 その言葉に、アルバはドキッとした。あけすけに好意を見せるラスだが、面と向かってそんな言葉を口にしたのは初めてだ。彼とキスをする自分を思い浮かべ、アルバは耳まで赤くなる。しかしそれも束の間、そんな想像はすぐに「どうせ捨てられる」といった考えでかき消された。ラスは恋愛として言っているのではなく、ただの気まぐれや戯れとして言っただけだ。期待してはいけない。みるみる、アルバは攻撃的な気持ちになっていく。ラスから目をそらし、唇を強く噛んだ。
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