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1564 旅路
売り子の男
しおりを挟む興奮して、シャマシュはテントへとトパを迎えに行く。その途中で、あの売り子の男に会った。
「ああ、お前、座長に会ったか?」
男はシャマシュを見ると、人懐っこく手を振ってくる。シャマシュは鼻息も荒く、ダイモンとのやりとりを男に話して聞かせた。すると男は得意げになる。
「お前を見つけてやったのは俺だからな。感謝しろよ」
「ああ、ありがとう!」
普段なら家族以外にはぶっきらぼうな態度のシャマシュだが、嬉しさのあまり素直に礼を言う。ふふん、と男が鼻を鳴らした。
「なあお前、いくつだよ」
ずい、と、売り子の男が顔を寄せてくる。彼の猫目にまじまじと見られ、シャマシュは思わずドキッとした。はたち、と答えると男はさらに得意げになる。
「俺は二十一だ。じゃあ、お前は俺の弟分にしてやるよ」
「はあ? 何だそれ」
「まあ聞けって。いきなり入団しても、わからないことだらけだろ? だから俺が兄貴分として面倒を見て、上手い立ち回りも教えてやる。俺はその代わりにお前のおこぼれをもらう。お互い、いい話じゃねえか」
シャマシュが何か言い返そうとすると、他の売り子が男を呼んだ。「悪いな、行かないと」と、男は赤毛を揺らして駆けていく。と、あることを思い出して立ち止まった。シャマシュに振り返り、人懐っこくニカっと笑う。
「俺はマッツィオ。ツィオって呼んでくれ。ダイモンの親父に、付人はマッツィオがいいって言ってくれよな!」
そう言って、走って行った。
家族以外に親しげにされることは初めてで、シャマシュはドギマギとしてしまう。だが、確かに嬉しかった。旅団はツィオのような人間ばかりだろうかと考えると、ワクワクする。早く、馬車に乗って連れて行ってほしい。シャマシュはこの上なく興奮していた。
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