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アンコン前日

悟くんとのやり取り

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「昨日、あの後ね。悟くんからメッセージ来たの」
 思い出したようにたっちゃんが言った。悟くん。たっちゃんの口からその名前が出ると、必ず、あたしは悪寒に襲われる。
「何て?」
「普通に、これからよろしくって。面白いんだよ、悟くん。宇野君はほとんど顔文字とか絵文字は使わないんだけど、悟くんはけっこう使うの。不思議だよね。兄弟なのに」
 そう話すたっちゃんは、すごく嬉しそうだった。悟くんの武勇伝を知っているはずなのに。自分は安全圏だと思ってる。
「それに悟くんね、推薦で第一受けるんだって。すごいよね。第一って、このあたりじゃすごく頭いい学校でしょ。推薦で受かる人なんて、なかなかいないよ」
「たっちゃんも、来年は第一受けるんじゃないの?」
「そうだよ、一般だけど。そしたらね、高校も同じで嬉しいって。可笑しいよね。だってほんとに知り合ったばっかなのに」
 たっちゃんが、何にも分かっていない様子で言った。
 悟くんが思ってたより大胆で、あたしは不安を感じる。まさか、もう行動しちゃった?いや、それはない。多分、たっちゃんへのメッセージだけだ。常識と配慮を持ち合わせている人なら、そこまではしないはず。中崎の性格と、時期と、たっちゃんの立ち位地を分かっていたら絶対にしない。宇野の兄弟って所に不安はあるけど、でも、きっとマトモな人。昨日話してただけでも、そう分かる。たらしだけど。いや、たらしだからこそ安全なんだ。いざとなればあたしがたっちゃんの目を覚まさせるだけだし、それは悟くんにとって遊びに過ぎないだろうし、きっとしない。きっとしないし、もしするとしてもまだ動いていない。
 と、思ったあたしが甘かった。

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