彼女のウソ

中崎仁華

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屋上までの階段

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そのあとも、クラスメイトの視線は怖く、昼休みになる頃には、僕はへとへとで帰りたくなっていた。

それもこれも中村さんが挨拶してきたせいだ。
中村さんを狙っている男子からの視線が特に怖い。
たぶん、月曜日になって急に中村さんが話しかけてきたから、休みの日に何かあったのか勘ぐられているのだと思う。

(はぁ。なんなんだ)
購買で買ったパンをかぶりつきながら、座っているこの場所は屋上に続いている扉の前の階段だ。
屋上は普段開放されていない。
ここの生徒なら誰でも知っている事。
何のための屋上なのかと、思いはするが誰も来ないのでこういうときは、役に立つ。



もぐもぐと2個目のパンを食べていると、階段を登る足音が聞こえてくる。
「あっ、やっぱりここにいたー!」
そのパっと周りが明るくなる声とともに階段を駆け上がってきたのは、サラサラの黒い髪をなびかせてきた中村さんだ。
「どうしたの?こんなところに来て」
「んー、いつも池本くんさ、教室でご飯食べてるのに今日はいないんだもん。気になって?」
「とぼけてるの?誰のせいかわかってる?」
僕は朝からずっと周りの視線を浴びて、不機嫌なのだ。
「もー、そんなに怒んないで!私が悪かったから」
「中村さんは、自分の影響力を考えて行動したほうがいいよ」
「あはは、私可愛いからね」
驚いた。中村さんレベルになると謙遜ではなく自分の可愛さを認めるのか。
僕が目を見開いていると
「あのさ、昨日私のこと助けてくれたじゃん?だから、ありがとうって言いたくて。でも、朝話しかけたら池本くん困らせたみたいでごめん」
中村さんが勢いよく、頭を下げてきた。
「困ったよ。普段話しかけてこないくせに、中村さんの周りの人が今日は僕に話しかけてきて」
「みんな、仲良くなりたいんだよ」
「中村さんと、だろ?」
「違うよ。池本くんとだよ」
「……………」
「なんで、池本くんはそんなに人との交流を拒むの」
「話すのに疲れるからだよ」
「そっか。じゃあさ、連絡先交換しない?」
話が一瞬で飛躍した。
なんで、連絡先を交換することになった?
「えっと………」
「もうすぐ夏休みじゃん!遊ぶのは人数が多いほうがいいでしょ?あと、文面なら話しやすさとか変わらない?」
一応、僕のコミニケーションが苦手なところを考えてくれたようだ。
「わかった」
と携帯をとりだす。

家族以外の連絡先が増えた。
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