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婚約者の元に嫁いだ途端、裏切りに遭い幽閉された私に…ある救いの手が差し伸べられました。
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「よく来てくれた…今日から、ここが君の家だ。」
「どうぞ、よろしくお願い致します!」
私は今日、愛する婚約者の元へと嫁いで来た。
「で…あれは、ちゃんと持って来てくれたか?」
「はい、どうぞ受け取って下さい。」
そう言って、私が差し出したのは…私の家に残されていた、古い書物だった。
彼は、古書を集めるのが好きで…この本にも、随分と興味を示していたものだ。
私が嫁いで来る際には、是非ともこの本を持って来てくれと…そう前々から言われて居たのだ。
「これは、素晴らしい本なんだ…これが手に入るなんて、夢の様だ!」
彼が喜ぶのを見て、私まで嬉しくなった。
しかし…その喜びは、束の間のものだった─。
その日から、彼の周りに女が侍る様になり…私は、見向きもされなくなってしまった。
確かに彼は容姿に恵まれていて、女性からの人気もあったけれど…こんなに何人もの女性から、一度に好かれるという事は…おまけに、私という者が居ながらそれを受け入れるなど、ありはしなかったのに…。
一体、彼やその女たちはどうしてしまったと言うの…?
「彼女たちを家に置くのは辞めて下さい…!あなたは、私を迎えたばかりでしょう!?なのに、こんな状況は…余りに酷すぎます!」
「五月蠅い…!この家の主である俺に、逆らうのか!?お前の様な反抗的な女には、罰を与える─!」
彼は、私の腕を掴むと…嫌がる私を、無理矢理地下室へ閉じ込めてしまったのだった─。
あれから、何日が経ったのかしら…?
彼は、まだあの女たちと暮らして居るのよね?
まさか…また新しい女を迎え、自分の傍に置いてるんじゃ…。
昨日、私に食事を運んできた娘も新顔だったし…そうなのかもしれないわね。
彼の言う通り、私はあの本を持って来て…それで、彼にとても喜んで貰えて私も嬉しくなって…この先、幸せな結婚生活が送れると思ったのに─。
「あの本は…もしや、呪われた本だったのかしら…?だから、私はこんな目に─。」
「それは、違うよ。」
「あ、あなたは─!?」
※※※
「旦那様、今日は私のお相手をしてね?」
「ズルい!私が先よ!?」
「おいおい、喧嘩をするな。皆まとめて、相手してやるから─。」
若く可愛い女、美しい女がはしゃぐのを見て…俺は、ニヤリと笑みを浮かべた。
こんなふうに、一度に女を好きにできるのは…この本のおかげだな─。
あいつは、この本をただの古い本と思って居たが…そうではない。
これは、古代文字で書かれている魔導書だ。
俺は、古代文字を習得して居たから…あいつの家でこの本を初めて見た時、その価値にすぐに気付いた。
だから、あいつに婚約を申し込み…そして、この家に迎える事にしたのだ。
その際には、絶対あの本を持ってくるようにと言って─。
そうすれば、この貴重な魔導書は俺の物になるからな─。
そして、予定通りこれを手に入れた俺は…書かれていた魅了の術を使い、以前から気になって居た女共に、片っ端からその術をかけて行った。
それは見事に成功し…女共は、今や俺に骨抜き状態という訳だ。
しかし…せっかく俺の望みが叶ったと言うのに、あの女が邪魔をして来た。
「全く…この魔導書さえ手に入れば、お前は用済みなんだよ─。だが、もうあそこからは一生出て来られまい。俺が、鍵を管理しているんだから─」
「いいえ…私ならもう、あそこから出して貰えましたよ─?」
※※※
「お、お前…どうやって外に出た!?おいお前達、この女を捕えろ!そして、もう一度地下へ─」
そう、女共に命令したが…女共はその場に蹲り、眠ってしまった。
「何!?」
「彼女達は、もうお前の操り人形ではなくなった。お前のかけた魅了の術は解け…今は、俺がかけた術により眠っている。」
「お前は…!そうか…お前が魔力を使い、その女を地下室から出したのか!」
そいつは、かつて俺の親友だった男だ。
共に、考古学や古代文字を学び…そして、魔力を用い、古代魔法を習得しようとした仲だった。
だが、こいつは俺の邪な想いに気付くと…親友としての縁を切ると言って来て、そこから絶縁状態にあったのだ。
「お前が怪しい術を使い、女を次々と家に連れ込んで居るという噂を聞きつけた俺は…お前の身辺を密かに探って居たんだ。すると、お前の花嫁に迎えられたはずの彼女が消え…そして、彼女の家から一冊の本が無くなっている事が分かった。そこで、俺はこの家に忍び込み…幽閉された彼女を見つけ、助け出したんだ。」
「あなたは、私でなくその本が欲しかっただけなのね…。そんなあなたを信じ、愛した私が愚かでした。」
「その本は、お前の様な心根の腐った者が持つべきではない。今すぐ彼女に返すんだ!」
「い、嫌だ─!」
机に置いてあった魔導書に、俺は咄嗟に手を伸ばしたが…魔導書は光に包まれ、俺の身体を弾き飛ばした。
「無駄だ…その魔導書は、俺の魔力の檻に守られている。お前の魔力では、俺に勝てない…もう、諦めるんだな。」
「クソ…上手く行ってたのに─!」
※※※
その後、彼は女を魔術で操り監禁した事、そして私を監禁した二つの罰で捕らえられ、牢へと入れられた。
そして、あの魔導書は私の元へと無事に戻って来たのだった。
だが…私はあの魔導書を、私を助けてくれた彼に譲る事にした。
私が持って居ても宝の持ち腐れだし…それに、彼はお城付きの魔術師という事だったから、是非役に立てて欲しいと思ったのだ。
「あなたとは、学園を卒業して以来だったけれど…まさか、助けに来てくれるだなんて…本当にありがとう。」
すると彼は…頬を赤くし、こう言った。
「実は…君の事は、当時からずっと気にかけていて…君の事が心配で、こうして駆けつけて来たんだ。」
彼の思わぬ告白に、私は驚きつつも…決して、嫌な気持ちにはならなかった。
その後も彼との交流は続き…次第に、私も彼を意識するようになって行った。
そして、私達は近く婚約する事に─。
前回は、とんでもない悪縁を掴んでしまったけれど…きっと、今度は大丈夫…。
私は、私を救いに来てくれた彼を信じるわ。
彼が大事にする魔導書を見て…私は、この先の二人の幸せを願った─。
「どうぞ、よろしくお願い致します!」
私は今日、愛する婚約者の元へと嫁いで来た。
「で…あれは、ちゃんと持って来てくれたか?」
「はい、どうぞ受け取って下さい。」
そう言って、私が差し出したのは…私の家に残されていた、古い書物だった。
彼は、古書を集めるのが好きで…この本にも、随分と興味を示していたものだ。
私が嫁いで来る際には、是非ともこの本を持って来てくれと…そう前々から言われて居たのだ。
「これは、素晴らしい本なんだ…これが手に入るなんて、夢の様だ!」
彼が喜ぶのを見て、私まで嬉しくなった。
しかし…その喜びは、束の間のものだった─。
その日から、彼の周りに女が侍る様になり…私は、見向きもされなくなってしまった。
確かに彼は容姿に恵まれていて、女性からの人気もあったけれど…こんなに何人もの女性から、一度に好かれるという事は…おまけに、私という者が居ながらそれを受け入れるなど、ありはしなかったのに…。
一体、彼やその女たちはどうしてしまったと言うの…?
「彼女たちを家に置くのは辞めて下さい…!あなたは、私を迎えたばかりでしょう!?なのに、こんな状況は…余りに酷すぎます!」
「五月蠅い…!この家の主である俺に、逆らうのか!?お前の様な反抗的な女には、罰を与える─!」
彼は、私の腕を掴むと…嫌がる私を、無理矢理地下室へ閉じ込めてしまったのだった─。
あれから、何日が経ったのかしら…?
彼は、まだあの女たちと暮らして居るのよね?
まさか…また新しい女を迎え、自分の傍に置いてるんじゃ…。
昨日、私に食事を運んできた娘も新顔だったし…そうなのかもしれないわね。
彼の言う通り、私はあの本を持って来て…それで、彼にとても喜んで貰えて私も嬉しくなって…この先、幸せな結婚生活が送れると思ったのに─。
「あの本は…もしや、呪われた本だったのかしら…?だから、私はこんな目に─。」
「それは、違うよ。」
「あ、あなたは─!?」
※※※
「旦那様、今日は私のお相手をしてね?」
「ズルい!私が先よ!?」
「おいおい、喧嘩をするな。皆まとめて、相手してやるから─。」
若く可愛い女、美しい女がはしゃぐのを見て…俺は、ニヤリと笑みを浮かべた。
こんなふうに、一度に女を好きにできるのは…この本のおかげだな─。
あいつは、この本をただの古い本と思って居たが…そうではない。
これは、古代文字で書かれている魔導書だ。
俺は、古代文字を習得して居たから…あいつの家でこの本を初めて見た時、その価値にすぐに気付いた。
だから、あいつに婚約を申し込み…そして、この家に迎える事にしたのだ。
その際には、絶対あの本を持ってくるようにと言って─。
そうすれば、この貴重な魔導書は俺の物になるからな─。
そして、予定通りこれを手に入れた俺は…書かれていた魅了の術を使い、以前から気になって居た女共に、片っ端からその術をかけて行った。
それは見事に成功し…女共は、今や俺に骨抜き状態という訳だ。
しかし…せっかく俺の望みが叶ったと言うのに、あの女が邪魔をして来た。
「全く…この魔導書さえ手に入れば、お前は用済みなんだよ─。だが、もうあそこからは一生出て来られまい。俺が、鍵を管理しているんだから─」
「いいえ…私ならもう、あそこから出して貰えましたよ─?」
※※※
「お、お前…どうやって外に出た!?おいお前達、この女を捕えろ!そして、もう一度地下へ─」
そう、女共に命令したが…女共はその場に蹲り、眠ってしまった。
「何!?」
「彼女達は、もうお前の操り人形ではなくなった。お前のかけた魅了の術は解け…今は、俺がかけた術により眠っている。」
「お前は…!そうか…お前が魔力を使い、その女を地下室から出したのか!」
そいつは、かつて俺の親友だった男だ。
共に、考古学や古代文字を学び…そして、魔力を用い、古代魔法を習得しようとした仲だった。
だが、こいつは俺の邪な想いに気付くと…親友としての縁を切ると言って来て、そこから絶縁状態にあったのだ。
「お前が怪しい術を使い、女を次々と家に連れ込んで居るという噂を聞きつけた俺は…お前の身辺を密かに探って居たんだ。すると、お前の花嫁に迎えられたはずの彼女が消え…そして、彼女の家から一冊の本が無くなっている事が分かった。そこで、俺はこの家に忍び込み…幽閉された彼女を見つけ、助け出したんだ。」
「あなたは、私でなくその本が欲しかっただけなのね…。そんなあなたを信じ、愛した私が愚かでした。」
「その本は、お前の様な心根の腐った者が持つべきではない。今すぐ彼女に返すんだ!」
「い、嫌だ─!」
机に置いてあった魔導書に、俺は咄嗟に手を伸ばしたが…魔導書は光に包まれ、俺の身体を弾き飛ばした。
「無駄だ…その魔導書は、俺の魔力の檻に守られている。お前の魔力では、俺に勝てない…もう、諦めるんだな。」
「クソ…上手く行ってたのに─!」
※※※
その後、彼は女を魔術で操り監禁した事、そして私を監禁した二つの罰で捕らえられ、牢へと入れられた。
そして、あの魔導書は私の元へと無事に戻って来たのだった。
だが…私はあの魔導書を、私を助けてくれた彼に譲る事にした。
私が持って居ても宝の持ち腐れだし…それに、彼はお城付きの魔術師という事だったから、是非役に立てて欲しいと思ったのだ。
「あなたとは、学園を卒業して以来だったけれど…まさか、助けに来てくれるだなんて…本当にありがとう。」
すると彼は…頬を赤くし、こう言った。
「実は…君の事は、当時からずっと気にかけていて…君の事が心配で、こうして駆けつけて来たんだ。」
彼の思わぬ告白に、私は驚きつつも…決して、嫌な気持ちにはならなかった。
その後も彼との交流は続き…次第に、私も彼を意識するようになって行った。
そして、私達は近く婚約する事に─。
前回は、とんでもない悪縁を掴んでしまったけれど…きっと、今度は大丈夫…。
私は、私を救いに来てくれた彼を信じるわ。
彼が大事にする魔導書を見て…私は、この先の二人の幸せを願った─。
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