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運命の相手と出会ったからと私を捨てた婚約者は、とんでもない悪縁を掴んでいたようです。
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「おい、俺と婚約破棄しろ!」
「…急に、どうしてです?」
「実は少し前、運命の相手に出会ったんだ。それから何度か会っていたが…おかげで俺は、彼女がその相手だと確信出来た。」
それは…浮気してたって事─?
でもそれにしても、余りも急な心変わりね…。
「彼女を初めて見た時の衝撃と言ったら…お前と出会った時の比じゃなかった。今はお前など…その辺に転がっている石ころにしか見えない。彼女こそが、俺の本当の運命の相手だ!」
「…分かりました、あなたがそこまで言うなら。」
「俺は彼女と幸せになる、お前もいい相手を見つけるんだな。」
そう言って、彼は私の前から去って行った。
私は、あなたが言う運命というものは否定しない。
だけど…今のあなたのそれは─。
説明しても、どうせあなたは耳を貸さないから、言う通りにしてあげる。
でも…きっと彼女を選んで、後悔するでしょうね─。
※※※
「君は本当に美しいな…。俺はそんな君を、心から愛してるよ。」
「私もあなたが大好き、愛してるわ!」
あれからあの婚約者を捨てた俺は、運命の相手である彼女の家に転がり込んでいた。
やはり、この彼女を選んで正解だった。
この大きな屋敷。
そして置いてある家具や調度品は、どれも豪華で…使用人だってこんなに大勢居て…これはいわゆる、逆玉というものか?
俺は幸せ者だ…今まさに、幸せの絶頂に居る─。
そして俺は、彼女のベットで熱い一夜を過ごしたのだが…次の日、ある者によって叩き起こされる事となった。
「…い、一体こんな朝早くに何だと言うんだ。」
それは、大勢の憲兵たちで…見れば、隣に眠っていたはずの彼女が居ない。
「か、彼女はどうした!?」
「あの女は、この国で禁じられている魅了の術を使ったとして捕らえられた。ほら…あそこで縄で縛られているだろう?」
憲兵が指差す方を見れば…そこには彼女とは似ても似つかない、豚の様に醜い女が居た。
「嘘だ…彼女はもっと美人で、身体つきだってもっと綺麗で─」
「それは、あなたが魅了の術にかけられていたからそう見えただけです。」
「お、お前…何故ここに!?」
※※※
「だって、憲兵に通報したのは私ですから。」
「何!?」
「私に魔力があるのはご存じでしょう?私は、あなたの身体から違法な術の気配を感じ取り…そして、あなたの身辺を探ったのです。すると水晶玉に、あなたがこの空き家に入って行くのが映り…あぁ、これは魅了の術で騙されているんだなと分かりましてね。」
「空き家…?ここは豪華な屋敷じゃ─」
そう言って彼が振り返った先には、ボロボロの朽ち果てた空き家がポツンと建っているだけだった。
「豪華な屋敷も、使用人たちも…全てがあの女の魔力によるまやかしだったのですよ。」
「クソ…あの不細工め!俺を騙しやがって…何が運命の恋人だ!な、なぁ…そういう事だから、あの婚約破棄は取り消しに…。それで、もう一度俺と…な、いいだろう?」
「そんなのお断りです。あなたの様な愚か者と、誰が復縁しますか。あなたはこの先、皆の笑い者になるでしょうね。あなたの家が代々受け継いできたはずの魔力を開花させる事が出来なかった癖に、魔力持ちの婚約者を捨て…違法な魔法を使った者の虜になるなど─。あなたのお父様は、この件に相当お怒りでしたよ?それであなたが帰り次第、大事な話があると仰ってました。」
私の言葉に、彼の顔から血の気が引いて行くのが分かった─。
その後彼は、激怒した彼の父親に縁を切られ、家から追放されてしまった。
魔力のない彼の為、せっかく魔力持ちの…しかも本当のお金持ちの令嬢である私を婚約者に与えたのに、それを棒にふってしまったんですものね…仕方ないわ。
彼は皆に後ろ指を差され、嘲笑われながら、この地から田舎の親類の家へと旅立って行った。
彼はそこで婿養子となるそうだが、これはあくまで表向きで…死ぬまで馬車馬のように働かされる、奴隷のような厳しい暮らしが待って居るという。
一方私は、この魔力で悪女を罪に問わせた事が評判となり、すぐに婚約相手が決まった。
彼は私の力を尊敬し、また一人の女性としてもとても大事にしてくれ…私はそれこそ、運命の出会いというものを感じたのだった。
そして今は、そんな彼と幸せな日々を過ごしている─。
「…急に、どうしてです?」
「実は少し前、運命の相手に出会ったんだ。それから何度か会っていたが…おかげで俺は、彼女がその相手だと確信出来た。」
それは…浮気してたって事─?
でもそれにしても、余りも急な心変わりね…。
「彼女を初めて見た時の衝撃と言ったら…お前と出会った時の比じゃなかった。今はお前など…その辺に転がっている石ころにしか見えない。彼女こそが、俺の本当の運命の相手だ!」
「…分かりました、あなたがそこまで言うなら。」
「俺は彼女と幸せになる、お前もいい相手を見つけるんだな。」
そう言って、彼は私の前から去って行った。
私は、あなたが言う運命というものは否定しない。
だけど…今のあなたのそれは─。
説明しても、どうせあなたは耳を貸さないから、言う通りにしてあげる。
でも…きっと彼女を選んで、後悔するでしょうね─。
※※※
「君は本当に美しいな…。俺はそんな君を、心から愛してるよ。」
「私もあなたが大好き、愛してるわ!」
あれからあの婚約者を捨てた俺は、運命の相手である彼女の家に転がり込んでいた。
やはり、この彼女を選んで正解だった。
この大きな屋敷。
そして置いてある家具や調度品は、どれも豪華で…使用人だってこんなに大勢居て…これはいわゆる、逆玉というものか?
俺は幸せ者だ…今まさに、幸せの絶頂に居る─。
そして俺は、彼女のベットで熱い一夜を過ごしたのだが…次の日、ある者によって叩き起こされる事となった。
「…い、一体こんな朝早くに何だと言うんだ。」
それは、大勢の憲兵たちで…見れば、隣に眠っていたはずの彼女が居ない。
「か、彼女はどうした!?」
「あの女は、この国で禁じられている魅了の術を使ったとして捕らえられた。ほら…あそこで縄で縛られているだろう?」
憲兵が指差す方を見れば…そこには彼女とは似ても似つかない、豚の様に醜い女が居た。
「嘘だ…彼女はもっと美人で、身体つきだってもっと綺麗で─」
「それは、あなたが魅了の術にかけられていたからそう見えただけです。」
「お、お前…何故ここに!?」
※※※
「だって、憲兵に通報したのは私ですから。」
「何!?」
「私に魔力があるのはご存じでしょう?私は、あなたの身体から違法な術の気配を感じ取り…そして、あなたの身辺を探ったのです。すると水晶玉に、あなたがこの空き家に入って行くのが映り…あぁ、これは魅了の術で騙されているんだなと分かりましてね。」
「空き家…?ここは豪華な屋敷じゃ─」
そう言って彼が振り返った先には、ボロボロの朽ち果てた空き家がポツンと建っているだけだった。
「豪華な屋敷も、使用人たちも…全てがあの女の魔力によるまやかしだったのですよ。」
「クソ…あの不細工め!俺を騙しやがって…何が運命の恋人だ!な、なぁ…そういう事だから、あの婚約破棄は取り消しに…。それで、もう一度俺と…な、いいだろう?」
「そんなのお断りです。あなたの様な愚か者と、誰が復縁しますか。あなたはこの先、皆の笑い者になるでしょうね。あなたの家が代々受け継いできたはずの魔力を開花させる事が出来なかった癖に、魔力持ちの婚約者を捨て…違法な魔法を使った者の虜になるなど─。あなたのお父様は、この件に相当お怒りでしたよ?それであなたが帰り次第、大事な話があると仰ってました。」
私の言葉に、彼の顔から血の気が引いて行くのが分かった─。
その後彼は、激怒した彼の父親に縁を切られ、家から追放されてしまった。
魔力のない彼の為、せっかく魔力持ちの…しかも本当のお金持ちの令嬢である私を婚約者に与えたのに、それを棒にふってしまったんですものね…仕方ないわ。
彼は皆に後ろ指を差され、嘲笑われながら、この地から田舎の親類の家へと旅立って行った。
彼はそこで婿養子となるそうだが、これはあくまで表向きで…死ぬまで馬車馬のように働かされる、奴隷のような厳しい暮らしが待って居るという。
一方私は、この魔力で悪女を罪に問わせた事が評判となり、すぐに婚約相手が決まった。
彼は私の力を尊敬し、また一人の女性としてもとても大事にしてくれ…私はそれこそ、運命の出会いというものを感じたのだった。
そして今は、そんな彼と幸せな日々を過ごしている─。
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