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私が聖女の務めに励む間、愛人達と遊び惚けて居た王子は…罰を受け消える事となりました。
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王からの命を受け…私は聖女として、ある人物の力になれと言われ、旅立つ事となった。
「お前なら、きっとやれるさ。道中、体に気を付けてな。」
婚約したばかりの王子と離れるのは寂しかったが…彼の励ましもあり、私は城を旅立った─。
「…また、王子の事を?」
「えぇ…。お元気にしていらっしゃるか…お城でご自分の務めに励んでおられるか…色々と心配になってしまって。」
一日でも早く、王子の元へ帰りたい─。
この旅は、そう思う程に辛く厳しいものだった。
この国の結界の綻びを修正しつつ、魔物を退治しろとは…王様も中々の無茶を仰る。
騎士団でも敵わなかった魔物を、私とこの方の…二人だけでどうにかしろだなんて─。
※※※
「王子…今頃、あの女は死んじゃったかしら?」
「…そうかも知れん。何せ、魔物相手の旅だからな。」
「そうなったら、私をあなたの婚約者にして下さいね!」
「ズルい!私が王子の婚約者になるのよ!?」
「おいおい…そんなふうに怒っては、可愛らしい顔が台無しだぞ?」
あの女が城を発ってから…俺は、城下に居る愛人たちを城に呼び寄せていた。
どうせ、あの女は旅の途中に死ぬだろう─。
そう思ったから、こんな行動に出たのだ。
何せ…一緒に旅立った相手が、あの男一人ではな─。
ある日、異世界から召喚されたそいつは…恐ろしく剣の腕が立ち、桁違いの魔力の様なものも持って居て…それ故、父である王から勇者の称号を与えられた。
その男と、聖女であるあいつは旅をする事になったが…流石に二人では、全ての地を巡る間に命を落とすさ。
そうなったら…俺はこの数居る愛人たちの中から、いずれ妃になる女を選べばいいだけの事。
何なら…俺が次の王になったら、妃は何人でも持てるという事に変えてやろうか?
それを考えるだけで、笑いが止まらない…。
などと、呑気に毎日を過ごしていたのだが─。
「あ、あの女が帰ってきただと!?そんな…旅が終わるのは、まだまだ先の事だと─」
「それは…彼が必死に魔物を倒し、私を早く城へ帰そうとしてくれたからです。なのに、あなたときたら…この現状は、一体何なんですか!?」
※※※
城に戻ってきた私は、見知らぬ女たちが自由に城を闊歩するのを見て、唖然とした。
近くに居た兵に尋ねれば、彼女たちは皆、王子の愛人たちなのだと言う。
そんな存在が、しかも複数居ただなんて…夢にも思わなかった。
王子…あなたは、私をずっと裏切って居たのですね─。
「私は、あなたの事をずっと思って居たのに…あなたは、そうじゃなかったんですね。先程、愛人の一人に嫌味を言われました。何で、生きて帰って来たのと。あなたが死ねば、私が王子の婚約者になれたのに…王子も、それを望んで居たのに、と─。」
「よ、余計な事を…!」
「私…あなたがいずれ王になるこの国を守りたい、その一心で旅をして来たのに─。あなたみたいな不誠実な人が王になったら、この国はもう終わりです。」
すると…それを見ていた勇者様が、王子にこう提案した。
「王子…あなたの腰にある剣で、俺と勝負をしませんか?あなたが勝てば…あなたは予定通り、次期王になれる。だが、俺が勝てば…次の王の座は、俺のものだ。」
「な、何を馬鹿な事を…!」
「それは、いい考えだな。」
「ち、父上!?王であるあなたが、どうしてこいつの肩を持つのです!」
「いいから、戦って見ろ。聖女殿も、それで良いな?」
「はい…!」
そして、二人は剣を構え…王子が先に彼に斬りかかったのだが…彼はそれを簡単にかわすと、彼の剣を叩き折ってしまったのだ。
「そ、そんな…。次期王の証である剣が─」
「…これで、次の王は彼に決まりだ。」
「そうですね。」
「そんなの、俺が絶対認めない!別の世界から来たどこの馬の骨とも分からぬ男が、次期王だなんて─」
「それが…旅をしている間に分かったのですが、彼の魔力の様な強大な力は、この国の王族の一部の者が持って居た力に似ている事が分かりました。彼の力は…先祖返りの様なものです。そしてその力で、あれだけの魔物を一瞬で倒してしまう事が出来たのです。私は、それを王にお知らせしました。すると─。」
「実は…お前には、行方知れずとなった兄が居たのだ。生まれてすぐにある魔術師に誘拐され、それっきりに…。だが彼女から話を聞き、彼の素性を改めて調査したら…彼がその居なくなってしまった赤子で間違いないと判明したのだ。」
「じゃ、じゃあ…こいつが、俺の兄で…正統なる、王位継承者─?」
「そういう事だ。婚約者の死を願うような非道な男に、この国は任せられない。この国は、俺がこの先も守って行くから…お前は、お前にふさわしい場所に行け。」
彼がそう言い終わると…王子と愛人たちの身体が、光に包まれた。
「こ、これは…!?」
「俺は、魔物たちの一部をある異空間に封じ込めた。お前たちも、今からそこに送る。そこで自分の行いを、大いに反省するといい。」
「そ、そんな…!おい…お前は俺の婚約者だろう!?見ていないで助けろ!」
王子は私に手を伸ばし、そう訴えたが…私は、それを拒否した。
「魔物が消え去り、浄化されたこの国に…この先、あなたのような王は要らないわ。そんなにその女たちと結ばれたいなら…その異空間で、ずっと一緒に居ればいいのよ。」
「た、頼む、許してくれ─!」
悲痛な叫びを残し…王子と愛人たちは消えてしまった─。
※※※
その後、勇者様はこの国の王子としてこの城を任され…私は、彼の婚約者となった。
旅の間、ずっと私を励まし…そして守ってくれた彼。
そして、旅が終わってからも私を必要としてくれた彼に、私はいつしか惹かれていたのだ。
「この先も…旅をして居た時と変わらず、私たち二人でこの国を守って行きましょうね?」
「あぁ。この国の永遠の平和と…そして君への変わらぬ愛を、ここに誓うよ。」
そう言って、私の手を取り口づける彼に…私は頬を染め、ニコリと笑みを返した─。
「お前なら、きっとやれるさ。道中、体に気を付けてな。」
婚約したばかりの王子と離れるのは寂しかったが…彼の励ましもあり、私は城を旅立った─。
「…また、王子の事を?」
「えぇ…。お元気にしていらっしゃるか…お城でご自分の務めに励んでおられるか…色々と心配になってしまって。」
一日でも早く、王子の元へ帰りたい─。
この旅は、そう思う程に辛く厳しいものだった。
この国の結界の綻びを修正しつつ、魔物を退治しろとは…王様も中々の無茶を仰る。
騎士団でも敵わなかった魔物を、私とこの方の…二人だけでどうにかしろだなんて─。
※※※
「王子…今頃、あの女は死んじゃったかしら?」
「…そうかも知れん。何せ、魔物相手の旅だからな。」
「そうなったら、私をあなたの婚約者にして下さいね!」
「ズルい!私が王子の婚約者になるのよ!?」
「おいおい…そんなふうに怒っては、可愛らしい顔が台無しだぞ?」
あの女が城を発ってから…俺は、城下に居る愛人たちを城に呼び寄せていた。
どうせ、あの女は旅の途中に死ぬだろう─。
そう思ったから、こんな行動に出たのだ。
何せ…一緒に旅立った相手が、あの男一人ではな─。
ある日、異世界から召喚されたそいつは…恐ろしく剣の腕が立ち、桁違いの魔力の様なものも持って居て…それ故、父である王から勇者の称号を与えられた。
その男と、聖女であるあいつは旅をする事になったが…流石に二人では、全ての地を巡る間に命を落とすさ。
そうなったら…俺はこの数居る愛人たちの中から、いずれ妃になる女を選べばいいだけの事。
何なら…俺が次の王になったら、妃は何人でも持てるという事に変えてやろうか?
それを考えるだけで、笑いが止まらない…。
などと、呑気に毎日を過ごしていたのだが─。
「あ、あの女が帰ってきただと!?そんな…旅が終わるのは、まだまだ先の事だと─」
「それは…彼が必死に魔物を倒し、私を早く城へ帰そうとしてくれたからです。なのに、あなたときたら…この現状は、一体何なんですか!?」
※※※
城に戻ってきた私は、見知らぬ女たちが自由に城を闊歩するのを見て、唖然とした。
近くに居た兵に尋ねれば、彼女たちは皆、王子の愛人たちなのだと言う。
そんな存在が、しかも複数居ただなんて…夢にも思わなかった。
王子…あなたは、私をずっと裏切って居たのですね─。
「私は、あなたの事をずっと思って居たのに…あなたは、そうじゃなかったんですね。先程、愛人の一人に嫌味を言われました。何で、生きて帰って来たのと。あなたが死ねば、私が王子の婚約者になれたのに…王子も、それを望んで居たのに、と─。」
「よ、余計な事を…!」
「私…あなたがいずれ王になるこの国を守りたい、その一心で旅をして来たのに─。あなたみたいな不誠実な人が王になったら、この国はもう終わりです。」
すると…それを見ていた勇者様が、王子にこう提案した。
「王子…あなたの腰にある剣で、俺と勝負をしませんか?あなたが勝てば…あなたは予定通り、次期王になれる。だが、俺が勝てば…次の王の座は、俺のものだ。」
「な、何を馬鹿な事を…!」
「それは、いい考えだな。」
「ち、父上!?王であるあなたが、どうしてこいつの肩を持つのです!」
「いいから、戦って見ろ。聖女殿も、それで良いな?」
「はい…!」
そして、二人は剣を構え…王子が先に彼に斬りかかったのだが…彼はそれを簡単にかわすと、彼の剣を叩き折ってしまったのだ。
「そ、そんな…。次期王の証である剣が─」
「…これで、次の王は彼に決まりだ。」
「そうですね。」
「そんなの、俺が絶対認めない!別の世界から来たどこの馬の骨とも分からぬ男が、次期王だなんて─」
「それが…旅をしている間に分かったのですが、彼の魔力の様な強大な力は、この国の王族の一部の者が持って居た力に似ている事が分かりました。彼の力は…先祖返りの様なものです。そしてその力で、あれだけの魔物を一瞬で倒してしまう事が出来たのです。私は、それを王にお知らせしました。すると─。」
「実は…お前には、行方知れずとなった兄が居たのだ。生まれてすぐにある魔術師に誘拐され、それっきりに…。だが彼女から話を聞き、彼の素性を改めて調査したら…彼がその居なくなってしまった赤子で間違いないと判明したのだ。」
「じゃ、じゃあ…こいつが、俺の兄で…正統なる、王位継承者─?」
「そういう事だ。婚約者の死を願うような非道な男に、この国は任せられない。この国は、俺がこの先も守って行くから…お前は、お前にふさわしい場所に行け。」
彼がそう言い終わると…王子と愛人たちの身体が、光に包まれた。
「こ、これは…!?」
「俺は、魔物たちの一部をある異空間に封じ込めた。お前たちも、今からそこに送る。そこで自分の行いを、大いに反省するといい。」
「そ、そんな…!おい…お前は俺の婚約者だろう!?見ていないで助けろ!」
王子は私に手を伸ばし、そう訴えたが…私は、それを拒否した。
「魔物が消え去り、浄化されたこの国に…この先、あなたのような王は要らないわ。そんなにその女たちと結ばれたいなら…その異空間で、ずっと一緒に居ればいいのよ。」
「た、頼む、許してくれ─!」
悲痛な叫びを残し…王子と愛人たちは消えてしまった─。
※※※
その後、勇者様はこの国の王子としてこの城を任され…私は、彼の婚約者となった。
旅の間、ずっと私を励まし…そして守ってくれた彼。
そして、旅が終わってからも私を必要としてくれた彼に、私はいつしか惹かれていたのだ。
「この先も…旅をして居た時と変わらず、私たち二人でこの国を守って行きましょうね?」
「あぁ。この国の永遠の平和と…そして君への変わらぬ愛を、ここに誓うよ。」
そう言って、私の手を取り口づける彼に…私は頬を染め、ニコリと笑みを返した─。
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