婚約破棄した上に、私を無能だとこき使った婚約者と愛人は…何もかも失ってしまいました。

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婚約破棄した上に、私を無能だとこき使った婚約者と愛人は…何もかも失ってしまいました。

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 婚約者である彼から、私は一方的に婚約破棄された。
 しかも彼は、私に使用人として働けと命じたのだ。

 これも全て、彼が愛人を作ったせいね…。
 しかも、今は亡き彼のお父様の部屋を改装し、彼女を家に置こうと言うのだ。

 その為に、私にその部屋を掃除させ…それが終われば愛人専用の使用人にとして、一生タダ働きせるとまで彼は言った。

 あまりの屈辱に、私はこの家を逃げ出そうとしたが…愛人が私を監視している為上手く行かず…その上、彼から酷い罰を受ける事になり…私は、それを諦めてしまった─。

※※※

 ある日の事だ。
 私は掃除の続きをしようと、あの部屋に入り…使われなくなった机を動かそうとした。

 すると…机の下に、何やら不思議な模様が描かれた箱がある事に気付いた。
 
 私はその箱が気になり…積もった埃を手で払い、顔を近づけた。

「これは…模様じゃない。この国で昔使われていた、古代文字だわ!」

 私は、昔から古い書物を読む事が大好きで…古代文字も、難なく読む事が出来た。

「この箱には…この家の宝が、眠っている…?宝って、どんなものかしら…?」

 私は…箱の蓋を開け、中を確認する事にした。

 こ、これは─!?

※※※

「あの女、今頃は泣きながら掃除をしてるでしょうね。」

「…あいつは、元は身寄りのない女だ。だが顔がそこそこ可愛かったから恋人にして…そのまま婚約までしたが…君の若く美しい体を知ったら…もうゴミのような存在にしか思えなくなってしまった。大体…あいつは魔力が無い無能だ。」

「嫌ねぇ…やっぱりあの女は使用人…いいえ、奴隷扱いで丁度いいわ!」

 彼女の言う通りだ。

 俺は勿論、この彼女もそこそこの魔力持ち。
 だからあんな無能をどうしようと、俺たちの勝手だな─。

「おい…いい加減、掃除は終わっただろうな?」

 部屋を除くと…振り向いたあいつは、ニコリと笑いこう言った。

「私、もうこの家を出て行きますね。」

「何を言っている!?お前は、一生俺たちの奴隷だ!だって、お前は魔力の無い無能で─」

「それはどうかしら。あなたもその女も…まだ自分が、魔力持ちだと思ってる?」

 そいつの生意気な態度に腹が立った俺は、いつものように魔力で出来た鞭を振るおうと、呪文を唱えた。

 が…何故か上手く行かない。

 俺の身体の中にあった魔力が…急速に減って行くのが感じられる─!

 一方、俺に応戦しようとした彼女の方も、魔力が使えず困惑していた。

「何よこれ…私の魔力、どこへ行っちゃったの!?」

「あなた達の魔力は、ここですよ─。」

※※※
 
 私は、あの箱にしまってあった宝…魔道具の一つである水晶玉を、二人に見せた。

「これは、人から魔力を奪い…そしてそれを自分の魔力に出来るという素晴らしい道具です。あなたの家は、代々この水晶玉を使い人から魔力を奪う事で、その強い魔力を手にしていたと説明書きがありました。あなたのその魔力も、あなたが赤子の時に使用人から奪った魔力だそうです。」

「そ、そんな…。」

「私はこれを使い、あなた達お二人から魔力を奪いました。私は古代文字が読めますので…この魔道具を扱うのは簡単でした。ですから今の私は…あなたたち二人分の魔力を手にした、立派な魔力持ちです。逆に、これに魔力を奪われたあなた達の方が無能なのです。」

「何!?」

 彼が怒りの形相で飛びかかって来ようとしたので…私はある呪文を唱えた。

 すると、魔力で出来た縄が彼と愛人の身体を縛り上げた。 

「捕縛魔法で、あなた達の動きを封じました。では、私はもう行きます。そうそう…この水晶玉は、慰謝料替わりに貰っていきますね。」

「そ、それは俺の家の宝で─」

「浮気した挙句、一方的に婚約破棄。そして私をこき使った上に、暴力まで働いたんです。お金を貰うか、この水晶玉を貰うかだけの違いですよ。」

「待て…この縄を解いて行け─!」

「私の魔力、返してよ─!」

 喚く二人を無視し…私は、その家を後にした─。

※※※

 その後二人は、弱っていた所を客人に発見された。

 彼らは私を訴えようとしたが…魔力の無い無能となった者の言う事に、皆ろくに耳を貸さず…婚約者を粗末に扱った罰だと、二人は逆に非難の嵐に晒された。

 そのせいで彼の事業は傾き…やがて、彼は破産する事に─。

 すると彼は、あんなに可愛がって居た愛人を、娼館へと売り飛ばしてしまった。

 彼としては、少しでもお金が欲しかったんだろう。

 しかし彼自身も、もうその頃には財産を失い社会的制裁を受たショックからか、廃人のようになってしまって居た。
 やがて彼の家は人手に渡り…彼は追い立てられるようにそこを出され、それっきりだ─。

 一方私は…あの水晶玉で得た魔力を使い、事業を始めた。

 古い書物を買い取り、現代の文字に直し…そして、魔力を籠めた魔導書にして売るのだ。

 これが、魔力の無い者やより魔力を得たい者に好評で…私は見事事業を成功させ…やがて、顧客の一人と親しい仲になった。
 そしてその彼と、私は近く婚約する事に─。
 
 婚約破棄された上に使用人までやらされ、辛い毎日を送ったけれど…あんな凄い宝を見つけ出し、こうして人生逆転するとは思わなかったわ─。
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