私との愛の日々を忘れ妹に走った婚約者、ならば嘘つき同士破滅すればいいわ─。

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私との愛の日々を忘れ妹に走った婚約者、ならば嘘つき同士破滅すればいいわ─。

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「お前が俺に隠れ、浮気していたとはな。」

「浮気…?一体何の事です?」

「白々しい…俺はその証拠を掴んだ!それには、お前が男と密会している事が事細かに書かれていた。ご丁寧にそんな物を残すとは…馬鹿な奴!」

「証拠って…ならばそれを見せて下さい!」

「今は君の妹が預かってる。彼女も言っていた、お姉様は男好きで男遊びが辞められない女だと。そしてそんな女とは、今すぐ婚約破棄すべきだと。」

 妹が…?
 あの子、またそんな事を─。

「妹の言葉は真に受けるなと、以前お話したじゃない…!」

「今回は証拠の品があるからな。あれは間違いなくお前の字だった…お前の書く字は何度も見た事があるから分かっている。お前のようなふしだらな女とは、もう婚約破棄だ!俺はお前ではなく、妹を新たに婚約者に迎える。」

「妹を!?またどうしてです?」

「あの子は、自分は絶対に浮気しないと言ってくれた。俺がこの世界で一番好きだと、そう告白してくれたんだ。」

 彼はそれだけ言うと、引き留める私を無視し帰ってしまった。

 一体その証拠とは何なの…妹が持って居ると言うなら、見せて貰わねば─。

※※※

 よし、あいつ有責で別れてやったぞ…。
 後はあいつに慰謝料を請求し、それを受け取るだけだ。

 ある事情で金が必要だったからな…妹も、実にいいタイミングであれを見せてくれた。

 その妹だが…姉のあいつよりうんと可愛いし、性格も明るくて話をしていても楽しい…婚約者にするには文句なしだ。
 金もいい女も同時に手に入るとは…俺は運がいいな─。

 その三日後、妹が訪れるのを俺は今か今かと待って居た。
 予定では、姉のあいつから慰謝料を貰って来てくれる事になっている─。

「おぉ、来たか。待って居た…え?」

 部屋のドアが開き入って来たのは、妹ではなかった。

「お前、どうしてここに…妹はどうした!?もしや、お前が直々に慰謝料を届けに…?」

「妹は来ませんよ、今頃お父様にこっぴどく怒られているでしょう。それと、私が慰謝料を払う必要はありません。むしろ、あなたが私に払って下さい。」

「何だって!?」

※※※

「あなたが言ってた、浮気の証拠…あれは、私の日記だったんですね。」

「そうだ…お前が細かく記していた日々の記録…これは立派な証拠じゃないか。どこの店に行き何を食べたとか、プレゼントに何を贈られたか…お前は日記に残していた。」

「そしてそれを見て、あなたは私の浮気を疑ったと。」

「そうとも!」

「あなた…内容ばかり気にして、そこに書かれた日付を見ましたか?」

「…あ。」

「やはりね…でも日付など見なくても、思い出して欲しかったわ。あそこに書かれているのは、全てあなたとの思い出だと─。あれは、あなたと出会った頃に書かれた日記…あなたと私の愛の日々が書いてあったのよ。私の昔の日記を持ち出した妹は、さも今起きて居る事のように見せかけ、あなたに嘘を付いた。」

「そんな…!?」

 私は溜息をつき彼を見た。

「私にとっては特別な日々でも、あなたにとっては違ったのかしら。でもそれも仕方ないか…。同時進行で複数の女と付き合ってたら、誰とどこに行ったとか何を渡したかなど、いちいち覚えて居られないものね。」

 私の言葉に、彼の顔がサアッと青くなった。

「あなたが私に請求した慰謝料がかなりの額でね…もしかしたら、あなたはお金に困ってるのかと思って…それで、あなたの身辺を洗ってみたの。そしたらあなた、愛人の一人と揉めて、多額の慰謝料を請求されてるんですって?私から得た慰謝料を、その愛人への慰謝料にするつもりだったのね。」

「そ、それは…その─」

「そんな時あの日記を見せられ、あなたは思った。これを証拠に私と別れれば、お金も可愛い妹も手に入る、まさに一石二鳥だって。でも残念ね、あなたはそのどちらも得られないまま終わるの。あなたと妹、嘘つき同士破滅すればいいわ─。」

※※※

 その後彼は、愛人と私、両方から慰謝料を請求される事となった。
 おかげで財産のほとんどを失い、苦しい生活を送っているようだ。
 
 今回の件が世間に知られ、事業も傾きかけていると言うし…これでは、もうすぐ破産するでしょうね。

 そして嘘つきな妹は、罰として辺境の地へと送られた。
 そこに住む貧乏な家の息子と結婚も決まっているし、帰りたくても帰って来れないわ。

 こうして嘘つき二人は、共に破滅の道を行く事になった。
 人に濡れ衣を着せ破滅させようとしたんだもの…その報いを受けて当然よね─。
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