上 下
1 / 1

王子の婚約者の聖女ですが婚約破棄に…でもこれで苦しみから解放されるので、妹には感謝です。

しおりを挟む
 聖女の私は、この国の王子の妃に選ばれた。

 周りの人々はとても喜び祝ってくれたが…そうでない人物が一人。

 それは、私の妹だった。

「どうしてお姉様なのよ…私だって、聖女としてはそこそこの力があるのに!っていうか、妃ならその容姿も重要視されないとおかしいわよね!?」

「王は…それについては、特に仰っていません。私が適任だと…ただそう選ばれただけですから。」

 そして私は城の使者によって、神殿から城へと連れて行かれた─。

※※※

「お前の様な地味な女が、俺の妃…?」

「…申し訳ありません。」

「まぁ、お前も王に言われては断れないだろうからな。分かった、妃はお前でいい。だが…愛してやる事はないぞ?俺には、何人か愛人が居るからな。」

 そう言ってニヤリと笑う王子に、私は妃の証であるティアラに触れると、一つ溜息を吐いた─。

 それから数日後の事だ。
 妹が神殿を辞め、私の元を訪ねて来た。

「王子…私はもう、姉の元にしか行き場がないんです。今更神殿には戻れないの…。姉の世話を何でもするので、どうぞここに置いて下さい!」

「あぁ、構わんぞ。美しい女は大歓迎だ!」

 妹を気に入った王子は、すぐに彼女を受け入れた。

 そして…妹が私の世話係ではなく、王子の愛人になるまでにそう時間はかからなかった。

「王子はね、愛人の中でも一番私が好きだって!それにね…妃にするなら、姉よりお前が良いとまで言ってくれたわ!」

「…そう。」

「だから…お姉様に代わり、私が妃になってあげる!王様は最近体調が悪く表舞台から遠ざかってらっしゃるし、今なら文句は言えないわ。王子も、是非そうしろと言ってるのよ?」

「…分かったわ。ならばこちらに来て?妃の証である、このティアラを授けたいの。」

 妹は、期待に満ちた表情でに跪いた。

「…これで、あなたが妃よ。」
 
 私はティアラを外し、妹の頭に乗せた。

 あぁ…これで私は、ここを去る事が出来る─。

※※※

「やった…ついに、邪魔者のお姉様を追い出してやったわ!それにしても…このティアラは見事な物ね。私なら、そう簡単に手放さな…痛い!」

 私は頭に走った激痛に、その場にしゃがみこんだ。

 ティアラが、頭を締め付けて─!?

 目を閉じ痛みに耐えれば、頭の中にある情景が浮かんできた。

 それは、王子が愛人の一人と抱き合う姿だった。

「その愛人とは、別れたって言ってたじゃない…王子、私を騙してたのね!あ、頭が痛い…頭が割れる!」
 
 すると…王子が女の元を去った途端、頭の痛みは消えた。

 私はホッと一息つき、そのティアラを外そうとしたが…何故か外れない。

 どうして?
 お姉様は、簡単に外してたのに!?

 その後も私は、ティアラが与える痛みに何度も襲われた。
 そしてその痛みは、いつも王子の不貞行為によって引き起こされるのだ。

「だから、浮気は辞めてって言ってるでしょう!王子のせいで、頭が痛くて仕方ないの!」

「…そんなの知るか!女の癖に…この俺を責めるな!」

※※※

「それで、私にそのティアラを外して貰おうとやって来たのね?でもそれを外したら、あなたは妃でなくなるけど…。」

「もう妃なんて、どうでもいいわよ!この痛みとあの節操なし王子には、もう懲り懲りなのよ~!」

 妹は号泣し、私に縋った。

「私はあの時…自身の力を全て使い切り、そのティアラを外したの。そのティアラはね、妃の証とは名ばかり…ある目的で作られた物よ。それは…王子の罪を、妃が代わりに受ける為の転送装置の役割を果たしているの。」

「王子の、罪?」

「知っての通り、あの人は多くの女を弄び捨ててるでしょう?そのせいで、恨みを買ったり呪われたり…。いずれ、この国の王になる者なのにね。それに困った王は、聖女である私を妃に迎えそのティアラを付けさせる事で、王子の罪を浄化しようと考えたの。」

「なんて身勝手な…。」

「でしょう。私もその痛みには苦しめられたわ。まぁ…聖女の修業よりはマシだったけど。あれだけの厳しい修行に耐えたから、痛みも我慢できたし…何より外す事ができたたのよ。でも…修行をサボってたあなたには、それは無理ね。もう諦めて、一生それを頭に乗せてるしかないわ。」

「そ、そんなの嫌─!」

 結局妹はティアラを外す手立てが見つからず…迎えに来た城の使者に連れられ、泣く泣く城へと戻った。

 そして今も王子の元で、その痛みに苦しんでいるらしい。

 妹はその痛みのせいで体が弱り、ご自慢の美貌もすっかり失われ…今はもう王子に見向きもされずにいる。
 そんな王子に恨みを持った妹は、自身の聖女の力を使い密かに王子を呪い殺そうとしていると聞くが─。
 
 妹の身体が壊れるのが先か、王子がこの世を去るのが先か…。

 まぁ…あの国を出て好きな方の元へ嫁いだ私には、どちらが先に身を滅ぼそうが構わないけどね─。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

王子に婚約破棄され生贄になった私ですが、人外愛されスキルで神様の花嫁になれました。

coco
恋愛
王子により婚約破棄され、生贄になった私。 愛人の聖女の代わりに、この国の神に捧げられるのだ。 「お前など、神に喰われてしまえ!」 そうあなたたちは言うけど…それは大丈夫だと思います。 だって私には、人外愛されスキルがあるんだから。 昔から何故か人には嫌われるけど、不思議なものには愛されてた。 だから生贄になっても、きっと幸せになれるはず─。

婚約者に浮気され、婚約破棄するしかなかった僕の話

もふっとしたクリームパン
恋愛
【本編完結】今夜のこの若い貴族達を中心に開かれた夜会にて、独身の男性陣に囲まれた一人の女子を見る。彼女の名は、ルル・キャメル。輝くような金の髪と翡翠のような綺麗な目を持つキャメル伯爵家の次女で、この僕、ルーベン・バーナーの婚約者だ。同じ伯爵であるバーナー家の嫡男である僕に、二つ年下の彼女が嫁いでくる予定……だったんだけどな。 貴族の婚約は家同士の契約でもあって、解消と破棄ではその重みや責任が全く異なる。僕としては、せめて解消にしたかったけど…もう出来そうにない。僕は決意するしかなかった。 派閥とか出て来ますがふわっとした世界観です。*カクヨム様でも投稿しております。*2021/07/12タイトルを変更しました。*本編29話+オマケ話4話と登場人物紹介で完結です。 随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。 拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

私の留学中に、婚約者と妹が恋仲になったようです──。

Nao*
恋愛
現在、隣国に留学中の私。 すると私が不在の間に、婚約者ガルディア様と妹のリリララが恋仲になったと言う話が届く。 何と二人は、私が居るにも関わらず新たな婚約関係を結ぶ事を約束して居るらしい。 そんな裏切りに傷付く私だったが…使用人を務めるロベルトが、優しく慰めてくれる。 更には、追い求めて居たある物が漸く見つかり…私にも希望の光が見えて来て─? (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

呪われた私が愛されないのは、仕方がないと諦めてた…でもあなたのその裏切りは駄目です。

coco
恋愛
呪われた娘だと言われるようになった私。 だから、婚約者であるあなたに愛されないのは仕方がないと諦めてた。 でも…その裏切りは駄目よ、とても許せないわ─。

妹よ。そんなにも、おろかとは思いませんでした

絹乃
恋愛
意地の悪い妹モニカは、おとなしく優しい姉のクリスタからすべてを奪った。婚約者も、その家すらも。屋敷を追いだされて路頭に迷うクリスタを救ってくれたのは、幼いころにクリスタが憧れていた騎士のジークだった。傲慢なモニカは、姉から奪った婚約者のデニスに裏切られるとも知らずに落ちぶれていく。※11話あたりから、主人公が救われます。

自分の欲望を満たす為に妃となるはずの私を生贄にした王子は、その身を滅ぼしました。

coco
恋愛
自分の欲望を満たす為、いずれ妃となる私を生贄にした王子。 そのせいで、自身が破滅する事になるとも知らず…。

処理中です...