私の婚約者を奪おうとした幼馴染は…好きでもない男と、一生を共にする羽目になりました。

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私の婚約者を奪おうとした幼馴染は…好きでもない男と、一生を共にする羽目になりました。

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 今夜、私の願いがついに叶う─。

 私は、今から愛する男に抱かれるのだ。

 そんな彼には、婚約者が居て…それは、私の幼馴染なんだけれど…彼女から、見事に彼を奪う事が出来たのだ。

『今度のあなたのお誕生日…是非、私に祝わせて欲しいの!あの女じゃなく…私と、一晩一緒に過ごして!』

『それは…君を俺に差し出す、という事か?』

『えぇ!私の方が、あの女より顔も体も美しいもの…きっと、あなたを満足させられるわ!』

 私の言葉に、彼は満面の笑みを浮かべ…そして、私と過ごす事を約束してくれた。

 そして今、私と彼は同じベッドに腰掛け…互いに見つめ合っている─。

「私を、抱いて─」

 私の言葉が言い終わらぬ内に…彼の腕が私の背中に回り、激しく口づけられた。

 そして彼は、そのまま私をベッドに押し倒したのだ。

 その行為の途中…彼は何度も、私の事を好きだと囁いてくれた。

 普段、私にそっけない態度を取って居たのは…あの女に遠慮があったからなのね。
 でも、本当はこんなにも私の事を─!

 二人の婚約が決まる前から、私は彼が好きだった。

 だからこれまで、彼に近づく女はどんな手を使ってでも排除して来たの。
 例え幼馴染でも、容赦はしないわ。

 あなたみたいな地味女に、彼は不釣り合いよ…。

 彼はすっかり私に夢中だから…あなたはもう、諦めるしかないわね─。

※※※

 ところが、夜が明け始めた頃…私は、妙な違和感を感じた。

 彼の身体は、筋肉が付きがっしりとして…うっとりするような、美しい体をしていた。
 でも…今私を抱くこの身体は、何だかダルダルしている…。
 
 それに、口づけを交わすと…ザラザラしたものが頬に当たるのだ。
 
 これ…髭よね?
 でも彼は、髭など生やして居ないのに─。

 そして、部屋の中に朝日が差し込んだ時…私は、衝撃の光景を目にした─。

「おい、何してる。もっと相手をしないか!」

 私は腕を掴まれ、再度ベッドに引き倒された。

「ちょ、ちょっと待って…!あなた、あの子の兄じゃない!?どうして、私とこんな事─」

「何を言っている…お前の方から、俺を誘って来た癖に!俺の誕生日を一緒に過ごそうと…そう強請ったじゃないか!?」

「そんなの何かの間違いよ…!私が誘ったのは、あなたの妹の婚約者で…私が抱かれたかったのは、あの人なのに─!」

 すると彼は、私の頬を激しく引っ叩いた。

「嘘を付くな!確かにお前は、俺を誘ったんだ!俺に声をかけて来て…物欲しそうな目で、愛を告げて来たんだ。こんな関係になったからには、もうお前を離さないぞ…。この田舎の別荘は、俺の追放先だ。お前はここで、俺と一生を共にするんだ!」

「そ、そんな…!」

「これからずっと一緒に過ごすんだから、俺を怒らすなよ?そんな事したら、さっきみたいに引っ叩かれるか…もっと恐ろしい目に遭わせてやるからな!」
 
 嘘でしょう…。
 あの子の婚約者を寝取ったつもりが、どうしてこんな事に─!?

 この男は、女好きの乱暴者で…余りの素行の悪さに、近く家から追放されるという噂で…でも何故、私まで一緒なのよ─!?

※※※

「…お誕生日、おめでとうございます!」

「ありがとう。この日を、君とこうして二人でゆっくりと過ごす事が出来て嬉しいよ。」

「私もです。兄も、もうこの家に居ませんし…両親は、気を使って外に出ていますしね─。」

 兄と言っても…実はあの男は、この家の本当の息子ではない。
  
 長らく子が出来なかった両親が、知り合いから譲り受けた子だったが…それがとんでもなく素行が悪く…ついに、両親も彼を見放してしまった。

 そして彼を、田舎の別荘へ押し込めてしまう事にしたのだが…。

 これは私にとって、兄だけでなく…あの厄介な幼馴染とも、お別れ出来る良い機会だと思った。

 というのも…兄は以前から、あの幼馴染の事を気にかけていた。

 そして、何とかして彼女を自分のものにしようとしていたのだが…肝心の彼女は、私の婚約者に夢中だった。

 しかも、ただ彼に密かに想いを寄せているだけならまだ良かったが…彼女は私から彼を寝取ろうと、虎視眈々とその機会を狙っていた。

 そして、彼の誕生日が兄の誕生日と同じ事に気付き…更に、その日兄が追放になると知った私は、ある行動に出た。
 きっと彼女は、誕生日を共に過ごそうと、彼に持ち掛けると思ったから─。

 私は自身の魔力を使い、彼女の目に映る兄が私の婚約者に見えるよう、幻惑の術をかけたのだ。

 そして彼女は、まんまとそれに引っ掛かり…兄を彼と思い込み、誘惑したのだ。

 でも、一晩明け…もうその術も解けた頃ね…。

 あなたに愛を告げられ、兄はそれはもう喜んでいたから…今頃あなたは、兄に散々可愛がられて居るでしょう。

 でもあの人は、気まぐれで手癖が悪いから…せいぜい機嫌を損ねないよう、必死に尽くす事ね─。
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