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彼の為に身を引けとお姉様に言われたから守ったのに、どうしてお二人揃って破滅してるの?
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「あなたは彼を不幸にする、彼の為にも身を引きなさい!」
「…どういう事です、お姉様?」
「私は聖女よ…祈りの中で、神の声を聞いたの。私の妹であるあなたが、婚約者を破滅させるって。それにそんな恐ろしい妹が居たんじゃ、聖女の私の恥になるでしょう?それを避ける為にも、今すぐ別れなさい!」
彼の事は愛しているし、別れたくないけど…神に逆らい彼を不幸に、そしてお姉様の恥になるなんて…そんなの駄目よね─。
私は愛する彼と大事な姉の為に、ついに別れを決意をした。
「…ならば俺たちは、婚約破棄という事か。聖女様の言う事を聞かなかったら、後が怖いしな…残念だが、これもまた運命だったのだろう。」
婚約者に別れを告げれば、彼もそれを了承した。
今回は悲しい思いをしたけど…神様のお導きで、私はいつかきっと、良縁に恵まれるわ─。
※※※
「そう、では婚約破棄が成立したのね!」
「あいつは信心深い女だ、神の名を出せばあっさり身を引くと思ったよ。」
「本当はそんな声など聞いてないけど、聖女の私が言えばそれらしく聞こえるでしょう?これで約束通り、私と婚約してくれますね?」
「勿論、俺は君を愛してるからな。」
彼を手に入れる為なら…真実の愛を手に入れる為なら、私は妹をも裏切れるのよ─!
「実はね、改めて聖女である私と婚約すれば彼は幸せになれる、そう神の声を聞いたのよ。何だかあなたを裏切るような形になって、ごめんなさいね。」
「いえ…神様のお考えに私は従ったまでですから。どうぞ、お幸せに。」
暗い顔の妹を見て、私はほくそ笑んだ。
本当は悲しい癖に、強がっちゃって…あなたもせいぜい、早く良い男を見つけなさい─!
ところがそれから暫くして…私は急に加護を授けられなくなった。
癒しの力も消えつつあるし、何より神の声がさっぱり聞こえない。
こんな事は初めて…生まれながらに聖女の資格がある娘だと皆に崇められ、いずれは大聖女として城に迎えられる予定なのに─!
そんな時、神殿に婚約者である彼が助けを求めやって来た。
「この傷を治してくれ!」
見ればその身体には、複数の切り付けられた跡が─。
「な、何があったの!?」
「そ、そんな細かい事は良いだろ、早く治せ!」
私は言われた通り、彼の傷を治そうとした。
でもどれだけ祈っても、治す事は出来なかった。
「何してる、お前は聖女だろう!」
「そうだけど…でも…!」
集まって来た神官が、訝し気に私を見る。
そこには神官長も居て、険しい目で私を見ていた。
「…あなたはもはや聖女としての力を失いました。これでは、とても大聖女として城に送り出せない。」
「神官長!これは何かの間違いで─」
「ま、待て…俺はこいつが大聖女になると言うから、婚約したんだぞ?そうじゃないなら、何の為にこんな傷を…!」
彼の言葉に、私はサッと血の気が引いた。
「あなた、妹より私が好きなんじゃないの?私を愛してくれてたんじゃないの!?そうだと思ったから、私は神の名を語り妹に嘘を──ッ!?」
私の言葉に、より一層神官たちがざわついた。
「わ、私は…その…。」
「誰でもいい、俺の傷を治せ…!」
焦る私と苦しむ彼を、皆の冷たい目が一斉に取り囲んだ─。
※※※
お姉様は聖女の資格を剥奪され、この国から追放となった。
神の名を語り嘘の神託をする事は、大罪だもの…仕方ないわ。
怪我をした元婚約者は何とか一命を取り留めたものの、今回の騒動が元で家から縁を切られ、姉同様この国から追い出されてしまった。
あの傷は、彼が姉と二股をかけていた愛人により付けられたものだった。
大聖女になり国からたっぷり報酬を貰える姉を選び、その女と別れる事にしたけど、その時に揉めた事が原因らしい。
姉の言葉は嘘だったけど、こんな女にだらしない人と一緒にならなくて良かった。
私は縁あって、素敵な殿方と出会い婚約…今は、幸せに暮らして居るから─。
立派な聖女であるお姉様の言う事を守り、彼から身を引き婚約破棄したのに…どうしてお二人揃い、こんな事になってしまったのか不思議だった。
でも全ての真相が分かり、納得したわ─。
「…どういう事です、お姉様?」
「私は聖女よ…祈りの中で、神の声を聞いたの。私の妹であるあなたが、婚約者を破滅させるって。それにそんな恐ろしい妹が居たんじゃ、聖女の私の恥になるでしょう?それを避ける為にも、今すぐ別れなさい!」
彼の事は愛しているし、別れたくないけど…神に逆らい彼を不幸に、そしてお姉様の恥になるなんて…そんなの駄目よね─。
私は愛する彼と大事な姉の為に、ついに別れを決意をした。
「…ならば俺たちは、婚約破棄という事か。聖女様の言う事を聞かなかったら、後が怖いしな…残念だが、これもまた運命だったのだろう。」
婚約者に別れを告げれば、彼もそれを了承した。
今回は悲しい思いをしたけど…神様のお導きで、私はいつかきっと、良縁に恵まれるわ─。
※※※
「そう、では婚約破棄が成立したのね!」
「あいつは信心深い女だ、神の名を出せばあっさり身を引くと思ったよ。」
「本当はそんな声など聞いてないけど、聖女の私が言えばそれらしく聞こえるでしょう?これで約束通り、私と婚約してくれますね?」
「勿論、俺は君を愛してるからな。」
彼を手に入れる為なら…真実の愛を手に入れる為なら、私は妹をも裏切れるのよ─!
「実はね、改めて聖女である私と婚約すれば彼は幸せになれる、そう神の声を聞いたのよ。何だかあなたを裏切るような形になって、ごめんなさいね。」
「いえ…神様のお考えに私は従ったまでですから。どうぞ、お幸せに。」
暗い顔の妹を見て、私はほくそ笑んだ。
本当は悲しい癖に、強がっちゃって…あなたもせいぜい、早く良い男を見つけなさい─!
ところがそれから暫くして…私は急に加護を授けられなくなった。
癒しの力も消えつつあるし、何より神の声がさっぱり聞こえない。
こんな事は初めて…生まれながらに聖女の資格がある娘だと皆に崇められ、いずれは大聖女として城に迎えられる予定なのに─!
そんな時、神殿に婚約者である彼が助けを求めやって来た。
「この傷を治してくれ!」
見ればその身体には、複数の切り付けられた跡が─。
「な、何があったの!?」
「そ、そんな細かい事は良いだろ、早く治せ!」
私は言われた通り、彼の傷を治そうとした。
でもどれだけ祈っても、治す事は出来なかった。
「何してる、お前は聖女だろう!」
「そうだけど…でも…!」
集まって来た神官が、訝し気に私を見る。
そこには神官長も居て、険しい目で私を見ていた。
「…あなたはもはや聖女としての力を失いました。これでは、とても大聖女として城に送り出せない。」
「神官長!これは何かの間違いで─」
「ま、待て…俺はこいつが大聖女になると言うから、婚約したんだぞ?そうじゃないなら、何の為にこんな傷を…!」
彼の言葉に、私はサッと血の気が引いた。
「あなた、妹より私が好きなんじゃないの?私を愛してくれてたんじゃないの!?そうだと思ったから、私は神の名を語り妹に嘘を──ッ!?」
私の言葉に、より一層神官たちがざわついた。
「わ、私は…その…。」
「誰でもいい、俺の傷を治せ…!」
焦る私と苦しむ彼を、皆の冷たい目が一斉に取り囲んだ─。
※※※
お姉様は聖女の資格を剥奪され、この国から追放となった。
神の名を語り嘘の神託をする事は、大罪だもの…仕方ないわ。
怪我をした元婚約者は何とか一命を取り留めたものの、今回の騒動が元で家から縁を切られ、姉同様この国から追い出されてしまった。
あの傷は、彼が姉と二股をかけていた愛人により付けられたものだった。
大聖女になり国からたっぷり報酬を貰える姉を選び、その女と別れる事にしたけど、その時に揉めた事が原因らしい。
姉の言葉は嘘だったけど、こんな女にだらしない人と一緒にならなくて良かった。
私は縁あって、素敵な殿方と出会い婚約…今は、幸せに暮らして居るから─。
立派な聖女であるお姉様の言う事を守り、彼から身を引き婚約破棄したのに…どうしてお二人揃い、こんな事になってしまったのか不思議だった。
でも全ての真相が分かり、納得したわ─。
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