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私を好きだと言う婚約者の愛は、全て偽りでした…悪女に溺れたあなたなど、もう要りません。
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私を好きだと言ってくれる、婚約者。
彼の言葉に…私はただ、虚しく笑みを浮かべた。
以前の私なら…頬を染め、嬉しいと彼の胸に飛び込んでいただろう。
でももう、そんな事はしない。
だって…あなたを愛が全て偽りである事を、私は知ってしまったのだから─。
※※※
「…今日も、あの子に?」
「あぁ、頼まれて居た物があってね─。」
家を訪ねて来るなり、彼はある部屋に入って行った。
そこは…私の義妹の部屋だ。
彼女は、今日も首を長くして彼の訪れを待って居る。
義妹は、通っていた学園で虐められ…この家へと戻って来て…それ以降は人に会うのが恐ろしいと言い、部屋に閉じ籠ったままで居る。
しかし…そんな義妹を心配した婚約者が、彼女を見舞い…それを繰り返す内に、義妹は彼になら会ってもいいと言って来たのだ。
この変化を、彼女の母や私の父は喜んだが…私は、何故かとても不安になった。
そしてその不安は…見事に的中したのだ─。
ある日私は、彼が義妹にこう話すのを聞いてしまった。
『君の心の病気が治ったら、約束通り婚約者に迎えるよ。だから、早く元気になってくれ─。』
私は…義妹が元気になるまでの繋ぎという事か。
彼の様な良い男が婚約者も居ないのでは、世間体が悪いものね。
あの子が元気になるまでは、こうして私との婚約を継続しておいて…あの子が全快したら、すぐにでも捨てようというつもりか─。
それを理解した時…私の彼への心は、急速に熱を失ったのだ─。
※※※
彼女に、病を持った義妹が居ると知った時は驚いた。
例え血は繋がらないといっても、気にかけない訳にはいかない。
俺は彼女に会う度に、義妹への見舞いも欠かさないようにしていた。
最初は…ただ、そんな義務感でやっていた。
だが、何度も会う内に…俺は義妹の愛らしい容姿や性格に、すっかり夢中になってしまった。
俺が来てくれるのが嬉しい、別れが名残惜しいと抱き着かれたら…そうなるのも無理はない。
だから、俺は決めたんだ。
義妹が元気になったら、彼女を婚約者に迎えようと。
それまではあの女との婚約関係を維持し…後は適当に、あいつの浮気でもでっち上げ別れればいいと思った。
義妹にそれを話せば、そういう事なら喜んで協力すると言ってくれたしな─。
あいつとは…今、婚約破棄になっては困るんだ。
何せあいつと婚約したおかげで、この家から俺の事業へ資金援助があるのだ。
その金をギリギリまで貰い…後はあいつ有責にし別れ、たんまり慰謝料を手に入れる。
俺の作戦は、完璧…のはずだった─。
※※※
「義妹を家から追放とは、どういう事だ!?」
「それは…あの子が罪を犯したからです。」
「何!?」
「一つ目は…姉の私の婚約者を誘惑した罪です。それともう一つは…学園時代の虐めが原因ですね。」
私の言葉に、彼はビクリと体を揺らした。
「お前…俺たちの関係を知って─?というか、彼女は虐められて居たんだろう?どうして、被害者が罪を負わねば─」
「それが…先日、ある令嬢が尋ねて参りまして、こう話したのです。彼女は学園時代、義妹にそれはもう酷い虐めに遭ったそうで…彼女がそれを訴えようとしたら、あの子は、慰謝料を払うからどうかこれ以上事を大きくしないでくれと、そう誓ったそうです。なのに、それが一向に払われないからどうした事かと─。」
「そ、そんな…!」
「更に…罰としてその身に受けた呪いは、まだ解けていないのかと聞いてきて─。」
「呪い…?」
「義妹が心から反省し…その後真っ当な人間になる事が出来たのなら、元の可愛らしい顔に戻れるという、そういう呪いです。そこで私は、ある事に気付き…義妹を部屋から叩き出しました。さぁ…隠れてないで、出ていらっしゃい!」
すると…ソファーの陰から、義妹が俯き加減で出て来た。
「お前…今の話は嘘だよな?お前が、そんな悪女だなんて─」
「そ、そうよ!お姉様は嘘を言って…ッ!?顔が、痛い─!」
そう叫び、顔を上げた義妹は…あの可愛らしい容姿を失っていた─。
「そ、その痣だらけの醜い顔は…!?」
「嫌、見ないで─!」
「この子の部屋には…ある香が焚かれて居て…それが、呪いの力を半減させていたようです。だからこの子は、自分の部屋から外に出られなかったのよ。でも…学園での悪事や、あなたとの関係がお父様に知られ…その罰として、家を出される事になったから…もう誤魔化す事は出来ないわ。追放が憐れだと思うなら…顔はこんな有り様だけれど、身体は元気なのだから…約束通り、あなたが婚約者に貰ってあげたら?」
「じょ、冗談じゃない…!誰がこんな不細工を─」
「…ですって。彼に受け入れて貰えないなら…あなたは約束通り、あの田舎の貧乏領主の元で働きなさい。」
「い、嫌─!」
義妹は、使用人によって部屋から連れ出されてしまった─。
「お、俺はあの女に騙されて居ただけだ!今度こそ君一筋になるから、だから─」
「だから、やり直そうとでも?そんなのお断りです。もうあなたとは、このまま婚約破棄します。ですから…あなたへの資金援助は、今日を持ってお終いです。」
「頼む、それだけは勘弁してくれ─!」
彼は泣いて頭を下げたが…私は、決して許しはしなかった─。
※※※
彼はその後、私への慰謝料を払うと…持っていた財産のほとんどを失った。
その上、資金援助受けられなくなった事業は上手く行かなくなり、彼はすぐに破産してしまった。
婚約者に対する企みが世間に知られる事となり、社会的信用を失った事がより拍車をかけたのだろう。
こうして悪評が立った彼は、一族皆から縁を切られ…この地を追放された。
追放された義妹は、その領主の元で毎日のようにこき使われ虐められているらしい。
そして、自分が虐められる身になり、漸く反省したから助けてくれといった手紙が届いたが…私はそれを破り捨て、何も見なかった事にした。
全てが片付いた後…私は、私だけを好きだと言い、この家のお金を当てにする事もない、まっとうな殿方と出会い、更に婚約する事も決まった。
私は…もう二度と、偽りの愛など手にしない。
今度こそ、真実の愛を手に入れ…幸せになってみせるわ─。
彼の言葉に…私はただ、虚しく笑みを浮かべた。
以前の私なら…頬を染め、嬉しいと彼の胸に飛び込んでいただろう。
でももう、そんな事はしない。
だって…あなたを愛が全て偽りである事を、私は知ってしまったのだから─。
※※※
「…今日も、あの子に?」
「あぁ、頼まれて居た物があってね─。」
家を訪ねて来るなり、彼はある部屋に入って行った。
そこは…私の義妹の部屋だ。
彼女は、今日も首を長くして彼の訪れを待って居る。
義妹は、通っていた学園で虐められ…この家へと戻って来て…それ以降は人に会うのが恐ろしいと言い、部屋に閉じ籠ったままで居る。
しかし…そんな義妹を心配した婚約者が、彼女を見舞い…それを繰り返す内に、義妹は彼になら会ってもいいと言って来たのだ。
この変化を、彼女の母や私の父は喜んだが…私は、何故かとても不安になった。
そしてその不安は…見事に的中したのだ─。
ある日私は、彼が義妹にこう話すのを聞いてしまった。
『君の心の病気が治ったら、約束通り婚約者に迎えるよ。だから、早く元気になってくれ─。』
私は…義妹が元気になるまでの繋ぎという事か。
彼の様な良い男が婚約者も居ないのでは、世間体が悪いものね。
あの子が元気になるまでは、こうして私との婚約を継続しておいて…あの子が全快したら、すぐにでも捨てようというつもりか─。
それを理解した時…私の彼への心は、急速に熱を失ったのだ─。
※※※
彼女に、病を持った義妹が居ると知った時は驚いた。
例え血は繋がらないといっても、気にかけない訳にはいかない。
俺は彼女に会う度に、義妹への見舞いも欠かさないようにしていた。
最初は…ただ、そんな義務感でやっていた。
だが、何度も会う内に…俺は義妹の愛らしい容姿や性格に、すっかり夢中になってしまった。
俺が来てくれるのが嬉しい、別れが名残惜しいと抱き着かれたら…そうなるのも無理はない。
だから、俺は決めたんだ。
義妹が元気になったら、彼女を婚約者に迎えようと。
それまではあの女との婚約関係を維持し…後は適当に、あいつの浮気でもでっち上げ別れればいいと思った。
義妹にそれを話せば、そういう事なら喜んで協力すると言ってくれたしな─。
あいつとは…今、婚約破棄になっては困るんだ。
何せあいつと婚約したおかげで、この家から俺の事業へ資金援助があるのだ。
その金をギリギリまで貰い…後はあいつ有責にし別れ、たんまり慰謝料を手に入れる。
俺の作戦は、完璧…のはずだった─。
※※※
「義妹を家から追放とは、どういう事だ!?」
「それは…あの子が罪を犯したからです。」
「何!?」
「一つ目は…姉の私の婚約者を誘惑した罪です。それともう一つは…学園時代の虐めが原因ですね。」
私の言葉に、彼はビクリと体を揺らした。
「お前…俺たちの関係を知って─?というか、彼女は虐められて居たんだろう?どうして、被害者が罪を負わねば─」
「それが…先日、ある令嬢が尋ねて参りまして、こう話したのです。彼女は学園時代、義妹にそれはもう酷い虐めに遭ったそうで…彼女がそれを訴えようとしたら、あの子は、慰謝料を払うからどうかこれ以上事を大きくしないでくれと、そう誓ったそうです。なのに、それが一向に払われないからどうした事かと─。」
「そ、そんな…!」
「更に…罰としてその身に受けた呪いは、まだ解けていないのかと聞いてきて─。」
「呪い…?」
「義妹が心から反省し…その後真っ当な人間になる事が出来たのなら、元の可愛らしい顔に戻れるという、そういう呪いです。そこで私は、ある事に気付き…義妹を部屋から叩き出しました。さぁ…隠れてないで、出ていらっしゃい!」
すると…ソファーの陰から、義妹が俯き加減で出て来た。
「お前…今の話は嘘だよな?お前が、そんな悪女だなんて─」
「そ、そうよ!お姉様は嘘を言って…ッ!?顔が、痛い─!」
そう叫び、顔を上げた義妹は…あの可愛らしい容姿を失っていた─。
「そ、その痣だらけの醜い顔は…!?」
「嫌、見ないで─!」
「この子の部屋には…ある香が焚かれて居て…それが、呪いの力を半減させていたようです。だからこの子は、自分の部屋から外に出られなかったのよ。でも…学園での悪事や、あなたとの関係がお父様に知られ…その罰として、家を出される事になったから…もう誤魔化す事は出来ないわ。追放が憐れだと思うなら…顔はこんな有り様だけれど、身体は元気なのだから…約束通り、あなたが婚約者に貰ってあげたら?」
「じょ、冗談じゃない…!誰がこんな不細工を─」
「…ですって。彼に受け入れて貰えないなら…あなたは約束通り、あの田舎の貧乏領主の元で働きなさい。」
「い、嫌─!」
義妹は、使用人によって部屋から連れ出されてしまった─。
「お、俺はあの女に騙されて居ただけだ!今度こそ君一筋になるから、だから─」
「だから、やり直そうとでも?そんなのお断りです。もうあなたとは、このまま婚約破棄します。ですから…あなたへの資金援助は、今日を持ってお終いです。」
「頼む、それだけは勘弁してくれ─!」
彼は泣いて頭を下げたが…私は、決して許しはしなかった─。
※※※
彼はその後、私への慰謝料を払うと…持っていた財産のほとんどを失った。
その上、資金援助受けられなくなった事業は上手く行かなくなり、彼はすぐに破産してしまった。
婚約者に対する企みが世間に知られる事となり、社会的信用を失った事がより拍車をかけたのだろう。
こうして悪評が立った彼は、一族皆から縁を切られ…この地を追放された。
追放された義妹は、その領主の元で毎日のようにこき使われ虐められているらしい。
そして、自分が虐められる身になり、漸く反省したから助けてくれといった手紙が届いたが…私はそれを破り捨て、何も見なかった事にした。
全てが片付いた後…私は、私だけを好きだと言い、この家のお金を当てにする事もない、まっとうな殿方と出会い、更に婚約する事も決まった。
私は…もう二度と、偽りの愛など手にしない。
今度こそ、真実の愛を手に入れ…幸せになってみせるわ─。
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