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裏切りは許さない…今まで私を騙し利用していた夫を、捨てる事にしました─。

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 夫からの手紙を見て、私は肩を落とした。
 
 そこには、王都での仕事が忙しく、今回も家に帰れないと書かれていた。
 
 彼がこの家を出て三ヶ月…こうして時々手紙はくれるけど、やはり直接顔を見てお話したい。

 手紙を読み終わると、私はそれを持ってきた彼の従者に荷物を渡した。

 私が用意した物…これは、私の所有する山でしか採れない薬草で、とても貴重な物だ。
 彼はこれを薬に変え、貴族やお金持ち相手に商売をしている。

 田舎より王都の方が需要があり高く売れるという事らしいが…本当は、私も彼と一緒に行きたかった。

 でも、私はこの家と山を守る役目があるから…。

 そんなある日の事…私の元に、王都に出ていた幼馴染が訪ねて来た。

「実は…王都で君の夫とある令嬢が、二人仲良く歩いている所を見たんだ。」

「それは…仕事仲間とかお客様ではなく…?」

「最初はそう思ったんだが…聞こえてきた話の内容からして、どうも違うみたいで…。」

「それって、つまり─」

 どうやら私の夫は、王都で仕事に勤しんでいたようだが…同時に、浮気も楽しんでいたらしい─。

※※※

「これが今回の薬草か。これでまた当分は、家に帰らなくて済む。」

「ウフフ…あなたの奥様って、鈍いのね。毎回何の疑いもなく、こんな貴重な薬草を送って下さるんだから。」
 
「本当にな。しかし…君のおかげで、俺の仕事は順調だ。君が仲間の貴族の方々に、俺の作った薬を広めてくれたおかげだ。」

 彼女は、始めはあくまで俺の一顧客に過ぎなかった。
 
 でも…彼女は俺の事をそうは思っていなかったようで、薬を買うからと俺を家に呼び、身の回りの事や仕事の事まで何でも世話を焼いてくれた。

 そうなってくると…あんな田舎の妻の待つ家に帰る事が、俺はだんだん嫌になって来た。
  
 年増の地味女より、若く美人な女と一緒に居た方が楽しい…これは、男なら当然の事だ─。

 俺は、早速受け取った荷物の蓋を開け、薬の調合に取り掛かろうとした。

「…何だ、これは?」

 そこには、何も入っておらず…紙切れ一枚が入って居た。

「こ、これは一体どういう事だ!?」

 見れば、その紙には何か書いてある。

「大事な話があるから、一度家に帰れ…だと?」

 面倒だが、これでは仕事にならない…。
 
 俺は仕方なく、一度家に戻る事にした─。

※※※

「どうしてあんな嫌がらせをするんだ!お前は妻でありながら、俺の仕事の邪魔をするのか!?」

「…あなたこそどういうつもりなんです?もう、この家に帰ってくるつもりはないんですか?私…知ってるんですよ?あなたが、王都である令嬢に手を出した事を!」

「か、彼女は…俺を支援してくれてるだけだ。ちょっと帰らなかったくらいで、そんなふうに怒るなよ?」

「嘘を付かないで下さい。あなたと彼女の関係は、あなたの従者に詳しく教えて貰いました。…今の私は、薬草を用意するだけの価値しかない女だと、あなたはそう嘲笑って言っていたんですってね。」

「そ、それは、その…。」

「浮気者の夫に利用されるだけの妻は、もう嫌…。あなたとは、離縁させて頂きます。そう思ったから、私は今回、あなたに薬草を送らなかったのです。そしてあなたは、もう二度とあの薬草を手にする事は無いでしょう。」

「あれが手に入らなかったら、俺の仕事はどうなる!今まで得た客は─」

「そんな事は知りません。ここは元々私の家で、あなたは入り婿。縁が切れた今、あなたは他人ですから…早く出て行ってくれません?」

 彼は私の機嫌を何とか取ろうとしたが…使用人に取り囲まれ、そのまま屋敷の外へと引き摺られて行った─。

 そして王都に戻った彼を待っていたのは、彼女からの別れの言葉だった。

 どうやら彼女は、仕事の出来る男が好きだったようで…その術を失った元夫が、途端に価値のない者に思えたらしい。
 仕事が出来なくなった以上、もう縁を切ると、あっさり捨てられてしまったのだ。

 更には、妻を裏切り商売をして居た事が皆に知られてしまい…そんな男が作った薬など信用ならないと、全ての客を失ってしまった。

 そうなって、彼は初めて私の有難味に気付いたらしく、私とよりを戻したがってるそうだけど…私には、薬草や薬の知識は勿論、人柄も立派なお婿様が来る事になってるから、そんなの当然お断りよ─。
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