妻も愛人も両方欲しいという強欲な夫は…ついに、何もかも失う事になってしまいました。

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妻も愛人も両方欲しいという強欲な夫は…ついに、何もかも失う事になってしまいました。

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「あいつに虐められたら、すぐに俺に言えよ?あの女は、怖いからな。」

「あなたの奥様の事ね…。あの女…不細工の癖に、早速私に文句を言ってきたわ!」

 この家には、数人の愛人が囲われている。
 いずれも夫が街で見かけ気に入り、拾ってきた娘たちだ。
 
 その中で最も新しく拾われてきたのが、今私の目の前で怒りをあらわにしているこの女だった。

 しかしこの子は…随分と偉そうね。
 他の愛人だけでなく、妻である私にも牙を剥こうなど─。

「あなた…もう少し綺麗に食事をしなさい。この前、テーブルマナーを教えたでしょう?」
 
「やだぁ、怖い女!」

「全く…お前は愛人たちに一々文句を付けて…。そんなんだから、ここに居る女の中で一番愛されないんだぞ!?」

「愛人に負けてたんじゃ、どうしようもないわね。ねぇ…こんな女とは、さっさと離婚しないの?」

「家同士の約束で婚約した女だから…簡単にはな。まぁいいじゃないか、お前を一番好きな事に変わりはないんだから。」

 名家の出身の私を捨てたら、周りからどう思われるか…それが気になるんでしょうね。
 まぁ、他にもいくつか理由はあるだろうけど…。
 
 私という妻も欲しい…でも、他の女とも遊びたい。
 
 これまでは、あなたの野望が叶ってきたけど…でも、もうそれも終わりよ。

 こんな女に夢中になって、あなたは全く周りが見えていなかった。
 
 あなたの幸せな世界は、間もなく終わりを迎えるわ─。

※※※

 ある日愛人たちが、揃ってこの家を出て行くと言ってきた。
 俺に何の断りも無く、何を馬鹿な事を…。

「お前たちのような卑しい身分の女が、どうやって生きて行くと言うんだ。どうせ行く当てなどない癖に…嫉妬でそんな事言ってるんだろう、な?」

「彼女たちはいずれも、素敵な方とのご縁談が決まってます。」

「何!?」

「それもこれも…私が、彼女たちが立派なレディになるように仕込んだから。彼女たちが、一刻も早くあなたみたいな男の元を離れ、幸せに生きていけるようにね。」

「ど、どういう事だ!?」

「あなたたちが拾ってきた娘たちは、決して望んであなたの愛人になったのではない。あなたに騙され連れて来られた、身寄りのない憐れな娘ばかりです。私はそんな彼女たちの身の上を知ると、彼女たちを何とか救い出そうと決めたのです。」

「私達、奥様には大変感謝しております。旦那様…あなたの事など、私達は全く愛しておりませんから。」
 
 そして愛人共は妻だけに一礼し、部屋を出て行った─。

「私は以前から、こうしようと決めてたんです。そして…あの子たちが出て行く時が、私の出て行く時だと─。」

「まさかお前!?」

「貴方とは離縁します。あなたのお父様も亡くなっている上に、この前私の父も亡くなった。家同士の約束など、もう無効です。あなたは私の父の財産を当てにし離縁を考えなかったようだけど…私は、あなたのような男を養っていくつもりはありません。」

「今この家には借金があるんだ、お前に捨てられたら俺は…!」

「その借金は、あの女が作った物でしょう?あの愛人だけはこの家に残します。あんなマナーも常識も無い女、あなたしか貰い手が無いの。何とかまともなレディにしたかったけれど…あれはどうにもならないわ。」

「そんな…!」

「今回の事は、いつか必ず世間にも知られます。そうなったら…あなたの周りには、まともな女が寄り付かくなるでしょう。どうぞ、あの愚かな女とお幸せに─。」

※※※

 こうしてあの家から、妻と数人の愛人が消えた。

 そして彼の元に唯一残った女は、彼を独り占めできると喜んだが…結局、その望みは叶わなかった。
 
 世間の冷たい目にさらされ、漸く目が覚めた元夫は、彼女への愛を失ってしまったらしい。

 そして彼女は借金返済のカタに、娼館へと売り飛ばされた。

 家に一人取り残された彼は、何とか残りの借金も返そうとしたみたいだけど…ついには破産してしまった。

 そして、あの家から身一つで出て行く事になった彼は…今は他の領地の金持ちの屋敷に雇われ、奴隷のようにこき使われているらしい
 愛人を何人も囲い虐げていた男が、逆に飼われこき使われる事になるとは…まさに自業自得ね。

 あの家を出た娘たちは、皆それぞれに幸せに暮らしていると聞いた。
 
 そして私もつい最近、他の殿方との再婚が決まったばかりだ。

 これまでの結婚生活で辛い思いをした分、今度は幸せになって見せるわ─。
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