上 下
1 / 1

愛される資格って顔の事?それしか見てないから、あなたはハズレ嫁を迎える事になるのよ。

しおりを挟む
「不細工なお前に、愛される資格はない!」

「…え?」

「やはり妻に迎える女は美しくないとな。そうじゃなきゃ、愛する資格も意味もない。俺は彼女に出会い、それを教えられた。」

「彼女って…まさか!」

「そう、お前の幼馴染だ。俺はもう彼女の虜…だから、お前とは婚約破棄する。」

 私がいくら彼を引き留めても、彼の心は私に戻る事はなかった。

 彼は手切れ金だと言って私に金を渡し、去って行った─。

※※※

 それから何日かして…私は街で幼馴染に会った。

「彼と婚約破棄しちゃったんだって?ごめんね、私の美しさがまたあなたの恋を邪魔しちゃったみたい。」

「…仕方ないわ、人の心は縛れないから。」

「彼ね、私を妻に迎えたいんですって。私もそろそろ一人の男に落ち着きたいと思ってたし、丁度いいわ。あなたの分まで彼と幸せになるから、あなたも早く新しい男を見つけなさいよ!」

 そう言って、彼女は人ごみの中に消えて行った。

 そろそろ、落ち着く…。
 あなたが大人しく家庭に収まり、良妻になれるとは思えないけど─。

※※※

 それから三ヶ月程経った頃、私はまた街で彼女を見た。

「あなた…その身体。」

「あ、あぁ…コレ?ちょっとふっくらして来たから分かっちゃった?私ね、お腹の中に子が居るの。でも彼には内緒にして…お楽しみは、もう少し後に取っておきたいから。」

 彼には内緒、楽しみは先に…。

 あの見栄っ張りの女が、子が出来た事を内緒にし報告しないでいるのはおかしい。
 すぐさま彼に報告し、でかしたとお褒めの言葉の一つでも欲しがるはずなのに。

 去って行った幼馴染の背中を、私は訝し気に見つめた─。
 
※※※

 それから暫くして…私はまた街で幼馴染に出くわした。

 彼女のお腹は…一切の膨らみもなく、元のスレンダーな体に戻っていた。

「もしかして…。」

「…見た通りよ。彼が悲しむから、今後は子の話はしないで…蒸し返すような事しないでよ。」

 そうか、駄目だったのか。
 これにはさぞや、彼も心を痛めているだろう。

 そう思っていたのだが…事態は意外な事に。

 彼が私の家に駆け込んで来て、私に復縁を迫ったのだ─。

「あんな女、妻にするんじゃなかった…!家の事は何もせず遊び歩いてばかり…少しでも注意すれば、離縁してやると喚き…あのヒステリーにはもううんざりだ!それに比べ、お前は控えめで穏やかで…お前が妻なら、どれだけ心が休まったか。」

「子を失ったばかりで、そんな事を言うのは…。」

「…子?一体何の話だ?」

「彼女から聞いてないんですか!?」

 私は、町での彼女とのやり取りを、彼に説明した。

「そんな事は知らん!そもそも、子など出来るはずが…結婚してすぐ、彼女は体調がすぐれないと言って、抱かせてくれなくて…。否…その体調が悪いと言うのは、もしや子が原因で…?」

「これは憶測ですが…町で彼女を見かけた時、近くに同じ男が居たんです。私を見て急に他人の振りをしてましたが、あれは男女の仲です。子は、その男の子かも知れませんね。」

「彼女は俺の妻だ、俺と結婚してるんだぞ!?そんな不貞を働く訳が─」

「彼女はその美しさを武器に、昔から私や友人の恋を何度も邪魔しました。そして次から次に男を手玉に取り、飽きたら捨てるを繰り返した悪女。結婚したからと言って、急に真っ当な人間になる訳ないじゃないですか。」

 私の言葉に、彼はショックで固まっている。

「あなたは、美しくないと愛される資格がないと仰いましたが…顔の美しさばかり気にし、心の美しさ…内面は全く見ていなかったんですね。顔しか見てないから、あなたはあんなハズレ嫁を迎える事になるのよ。」

「ハ、ハズレ嫁…。」

 彼はガクリと肩を落とし、涙を流した─。

※※※

 その後家に戻った彼は、幼馴染を問い詰めた。
 するとやはり私の睨んだ通り、お腹の子は彼の子ではなく、街で見かけた男…愛人の子だった。

 子は流れてしまったから、これで私の罪も綺麗さっぱり流れた事にして─!

 そう言って開き直る幼馴染に、彼は離縁を突き付けた。

 そかしその晩、幼馴染は彼の家からお金を持てるだけ持ち、愛人と姿を消した。
 その後漸く二人は捕らえられ、罰を受ける事になったが…持ち逃げされたお金は、全て使われてしまった後だった。
 
 多くの財産を失った彼は、それが元で事業が傾き…このまま行ったら破産してしまうそうだ。

 俺の結婚生活は何だったんだと嘆く彼だが…自分の見る目の無さと、歪んだ思考がこんな結果を招いたのよ…自業自得ね─。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

男子から聖女と言われている同級生に彼氏を奪われた。その後、彼氏が・・・

ほったげな
恋愛
私には婚約もしている彼氏がいる。しかし、男子からは聖女と言われ、女子からは嫌われている同級生に彼氏と奪われてしまった。婚約破棄して、彼のことは忘れたのだが、彼氏の友人とばったり会ってしまう。その友人が話す彼氏の近況が衝撃的で……!?

友達にいいように使われていた私ですが、王太子に愛され幸せを掴みました

麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
トリシャはこだわらない性格のおっとりした貴族令嬢。 友人マリエールは「友達だよね」とトリシャをいいように使い、トリシャが自分以外の友人を作らないよう孤立すらさせるワガママな令嬢だった。 マリエールは自分の恋を実らせるためにトリシャに無茶なお願いをするのだが――…。

可愛がられて育った姉が結婚した。だけど、数年後不倫で離婚して帰ってきた…。

ほったげな
恋愛
両親に可愛がられて育った姉は子爵と結婚した。しかし、その数年後、追い出されたと帰ってきた。その理由が姉の不倫で……?!

王子と王女の不倫を密告してやったら、二人に処分が下った。

ほったげな
恋愛
王子と従姉の王女は凄く仲が良く、私はよく仲間外れにされていた。そんな二人が惹かれ合っていることを知ってしまい、王に密告すると……?!

王子に婚約破棄され生贄になった私ですが、人外愛されスキルで神様の花嫁になれました。

coco
恋愛
王子により婚約破棄され、生贄になった私。 愛人の聖女の代わりに、この国の神に捧げられるのだ。 「お前など、神に喰われてしまえ!」 そうあなたたちは言うけど…それは大丈夫だと思います。 だって私には、人外愛されスキルがあるんだから。 昔から何故か人には嫌われるけど、不思議なものには愛されてた。 だから生贄になっても、きっと幸せになれるはず─。

お金持ちの伯爵の家に嫁いだ妹が贅沢三昧しまくった結果…。

ほったげな
恋愛
妹は自己中でわがままだが、伯爵令息と結婚することになった。しかし、贅沢三昧を尽くし…?!

性悪な友人に嘘を吹き込まれ、イケメン婚約者と婚約破棄することになりました。

ほったげな
恋愛
私は伯爵令息のマクシムと婚約した。しかし、性悪な友人のユリアが婚約者に私にいじめられたという嘘を言い、婚約破棄に……。

婚約者と妹に毒を盛られて殺されましたが、お忘れですか?精霊の申し子である私の身に何か起これば無事に生き残れるわけないので、ざまぁないですね。

無名 -ムメイ-
恋愛
リハビリがてら書きます。 1話で完結します。 注意:低クオリティです。

処理中です...