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婚約者の浮気で、私は囚われの身になりました。<前>

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『俺は他に好きな人ができた。もう、お前のことを愛していない。』

『ハインツ様…何故なぜですか!?』

『俺は、お前のその顔が─。』

※※※
 
 ここは、どこ?

 私、何してたんだっけ。

 確か、ハインツ様からお話があると呼び出され…行ってみれば、もう愛していないと別れ話をされたのよね。

 それでそこから帰る途中に、突然誰とつぜんだれかに羽交はがめにされて…。

「え…!じゃあここ、誘拐犯ゆうかいはんの家!?」

 私はキョロキョロと、辺りを見回した。

 かべけられている絵画かいがは、有名画家の物。
 置かれている調度品ちょうどひんは、どれも一流の物ばかり。

 お金に困って、私を誘拐したワケではなさそうね。

 では、一体何の為に─。

「フィリア。目が覚めたんだね。」

 そう言って、部屋の中に1人の青年が入って来た。

「あ、あなたは、この国の王子ミハエル様!?」

 私はおどろいて、ベットから飛び起きた。

「僕が君を連れてくるよう、従者じゅうしゃに命令したんだ。」

「どうしてそんなこと…?」

「君の婚約者が、浮気うわきしたからだよ?」

 何、それ。
 何でそれで、私が誘拐されるの?

「だから君には、今日からここで暮らしてもらうよ?もう、どこにも行かせない。僕のそばに居てもらうから。」

 そんな…それじゃまるで監禁かんきんじゃない!

 悪いのはハインツ様で、私はただの被害者ひがいしゃなのに…。

 何で、こんな目にあうの?

※※※

「フィリア。今日はこのドレスを持ってきたよ。さぁ、着てごらん?」

「庭に、綺麗きれなバラが咲いていたんだ。君は花が好きだろう?」

「何か、不自由していることは無いかい?欲しい物があったら、何でも言うんだよ。」

 あれから、毎日毎日、王子は私の元をたずねてくる。

「王子、私の望みはただ1つです。いい加減かげん、ここを出して下さい。」

「…駄目だめ。それ以外の望みなら、何でもかなえてあげるから。」

 あぁ、今日も失敗しっぱいか…。
 
 どうしたら、私は自由の身になれるのか。
 いっそ、可愛くおねだりでもしてみる…?

「君は、そんなにここを出たいの?僕のことが、そんなにきらいなのか?」

 …王子を、嫌い?

 好きとか、嫌いとか、考えたことなかった。
 
 でも、そうだな…。

「少なくとも、顔を見たくない程嫌い、というワケじゃないです。そういう男は、他に居ます。」

「それは、君の婚約者?」

「元です。婚約中なのに浮気した、最低男。そして、こうなる元凶げんきょうを作った男です。まぁ、そんな男のことは置いといて…王子、私がここから出たいのは、あなたが嫌いとかそういう問題じゃありません。このまま飼われるだけのかごの鳥は、嫌なんです。せめてお屋敷やしきの中だけじゃなくて、お庭くらいは散歩さんぽさせて下さい!」

「そう…君がここを出たいのは、そういう理由か。僕が嫌いでは、ないんだね。良かった…。」
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