勇者のおまけで召喚された俺、紙切れ1枚で異世界を生き抜け!

coco

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12 地下牢の、お嬢様。

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「…あなたが、私の娘を救いたいという召喚屋しょうかんやさんですか?有難い話ですが、多くの医者や魔法使いの力を借りても、あの子の病気は治らなかったんです。今では、全身にあんなものが広がってしまって。恐らくもう、手遅れだ…。」

「当主様は、今までお力を尽くされてきたんですね。でも、今度こそ大丈夫です。俺たちなら、娘さんを助けられます。彼女は、強い魔力を持っています。なにより、女神の紙があるのです。女神の加護かごが、娘さんを救います。」

「その紙を使えば、本当に我が娘は助けられると…?」

「ええ。ですから一度、娘さんに合わせて下さい。」

※※※

「初めまして、サーラ嬢。」

「…あなた、誰?さっきの魔法使いさんの仲間?」

「ええ、彼女は私の仕事仲間です。私は召喚屋、あなたを助けに来ました。」

「無理よ…。この全身に広がる黒いヒビ。今までいろんな人が診てくれたけど、どうにもならなかった。このヒビが全身に広がりきったら、私の身は粉々になって…それで、死ぬわ。」

「諦めないで下さい。どうか、俺と彼女を信じて。それと、この子の気持ちを無駄むだにしないで欲しい。」

「ア、アンブラ!…あなたが、この人たちを連れて来てくれたの?」

「ニャン!」

「俺の店に、アンブラが訪ねて来たんだ。足を泥まみれにしてね。この町から隣町の俺の店まで駆けて来たんだよ、君を助けたくて。」

「アンブラ…そんな風にまでなって、私を…。私、この子に頼んだの、魔力の強い人を探して…私を助けてくれる人をここに連れて来てって、リボンにメッセージを託して。…お願いします、私を助けて下さい。私、元気になりたい。ここを出て、またアンブラと一緒に暮らしたい。」

「分かりました。じゃあ、カノン。」

「はい。魔法使い、カノンが命じる。癒しの精霊せいれいよ、我が声を聞き、ここに姿を現せ!」

 カノンは呪文を唱え、召喚呪文を女神の紙にサラサラと書いていく。

 すると女神の紙が光を放ち、その光の中から1体の精霊が姿を現した。
 
「癒しの精霊さん、彼女の体をむしば障気しょうきを、あなたの力で取り除いてあげて?」

 精霊はこくんと頷き、サーラ嬢を優しく抱きしめた。

「あぁ、何て温かい…。体の痛みが、苦しさが消えていく…。」

 すごい、体にあった黒いヒビがうすくなっていく。

「次は聖水です。けがれをはらいし聖なる水、神々に捧げし聖なる水。我はそれを求め、ここに欲する。」

 カノンが再び呪文を唱え、召喚呪文を書くと、紙の中から水が注がれたグラスが浮き出てきた。

「これは、神々の神殿しんでん供物くもつとして捧げる特別な水です。どんな聖水よりも清らかなものです。さぁ、飲んで下さい。」

「ありがとう。あぁ…体が満たされていく。体の底から、力が湧いてくるわ…!」
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