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11 マドレード家と、黒い噂。
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「お久しぶりです。」
「おや、女神の紙のお客様じゃないですか。お元気でしたか?」
俺はララのお父さんに、以前連れて来られた換金屋を訪ねていた。
「はい。あの時は服までいただいて、色々お世話になりました。一度ちゃんと挨拶に来ようと思っていて。これ、良かったらどうぞ。」
「そんな、わざわざありがとうね。おや、これは隣町ナイカの人気菓子店の…。」
「はい。俺、今そこでお店をやっているんです。あの女神の紙を使って、お客様のニーズに合わせたものを召喚し提供するお店です。それでこの後、営業を兼ねてこの町の豪商であるマドレード家にお尋ねしようかと…。」
「なるほど、いい商売を始めたね。ならこの店にも、チラシを置いていくといいよ。でもマドレード家は、辞めた方がいい。ここだけの話だが…あの家は、最近あまりいい噂を聞かなくてね。」
「それって、どんな…?」
※※※
うん、これでどこから見てもメイドのルルさんね。
ごめんなさいルルさん、少しここで眠っていてね。
「ルル、あんたどこ行ってたんだい!早く、これを持って行きな。」
「これを、ですか?」
「下っ端のあんたの仕事じゃないか。いつもみたいに、あそこから地下の部屋に持って行きな。何度も言うけど、あんまり…近寄るんじゃないよ。」
…すりつぶして、柔らかくしてある食事。
これを、一体誰が食べるのかしら。
地下って言ってたわね…こういう家の地下にあるのは、罪人や病人を閉じ込める地下牢だわ。
そしてあの、私を助けてというメッセージ。
…これは、急がないと大変だわ。
もし病人なら、取り返しがつかないことになる。
この扉から、地下に行けるのね。
じめじめとかび臭い所だわ。
牢はどこなの?
…ラ、アン…ラ。
誰かの、すすり泣く声がする。
私は、耳を澄ました。
…ラ、アンブラ。
助けを呼んで来て。
「アンブラ、もう一度会いたかった。こんな所で、1人死ぬのは嫌…。」
「大丈夫、あなたは死にません。私が助けます。」
「…あなた、誰?私を迎えに来た、天使様?」
「いいえ、私は魔法使いです。アンブラに呼ばれ、やってきました。もう少しの辛抱です。」
※※※
「お待たせしました、社長。」
「いいや。無事でよかった、カノン。」
「私は大丈夫です。でも、アンブラの飼い主の方が…!」
「マドレード家のお嬢様、サーラ嬢だね?俺の調べでは、奇病にかかったと聞いたよ。」
「はい。そのせいで、地下牢に閉じ込められていました。あのままでは、命が危ういです。」
「どうすれば、彼女を助けられるんだろう。一旦牢から出すのが出来ても、肝心の病気を治さないと、また隔離されてしまう。」
「彼女のあれは、魔の障気にあてられたものです。上質な聖水と癒しの精霊の力を借りれば、すぐ治りますよ。」
そうか…だったらここは、俺たち召喚屋の出番だな。
「おや、女神の紙のお客様じゃないですか。お元気でしたか?」
俺はララのお父さんに、以前連れて来られた換金屋を訪ねていた。
「はい。あの時は服までいただいて、色々お世話になりました。一度ちゃんと挨拶に来ようと思っていて。これ、良かったらどうぞ。」
「そんな、わざわざありがとうね。おや、これは隣町ナイカの人気菓子店の…。」
「はい。俺、今そこでお店をやっているんです。あの女神の紙を使って、お客様のニーズに合わせたものを召喚し提供するお店です。それでこの後、営業を兼ねてこの町の豪商であるマドレード家にお尋ねしようかと…。」
「なるほど、いい商売を始めたね。ならこの店にも、チラシを置いていくといいよ。でもマドレード家は、辞めた方がいい。ここだけの話だが…あの家は、最近あまりいい噂を聞かなくてね。」
「それって、どんな…?」
※※※
うん、これでどこから見てもメイドのルルさんね。
ごめんなさいルルさん、少しここで眠っていてね。
「ルル、あんたどこ行ってたんだい!早く、これを持って行きな。」
「これを、ですか?」
「下っ端のあんたの仕事じゃないか。いつもみたいに、あそこから地下の部屋に持って行きな。何度も言うけど、あんまり…近寄るんじゃないよ。」
…すりつぶして、柔らかくしてある食事。
これを、一体誰が食べるのかしら。
地下って言ってたわね…こういう家の地下にあるのは、罪人や病人を閉じ込める地下牢だわ。
そしてあの、私を助けてというメッセージ。
…これは、急がないと大変だわ。
もし病人なら、取り返しがつかないことになる。
この扉から、地下に行けるのね。
じめじめとかび臭い所だわ。
牢はどこなの?
…ラ、アン…ラ。
誰かの、すすり泣く声がする。
私は、耳を澄ました。
…ラ、アンブラ。
助けを呼んで来て。
「アンブラ、もう一度会いたかった。こんな所で、1人死ぬのは嫌…。」
「大丈夫、あなたは死にません。私が助けます。」
「…あなた、誰?私を迎えに来た、天使様?」
「いいえ、私は魔法使いです。アンブラに呼ばれ、やってきました。もう少しの辛抱です。」
※※※
「お待たせしました、社長。」
「いいや。無事でよかった、カノン。」
「私は大丈夫です。でも、アンブラの飼い主の方が…!」
「マドレード家のお嬢様、サーラ嬢だね?俺の調べでは、奇病にかかったと聞いたよ。」
「はい。そのせいで、地下牢に閉じ込められていました。あのままでは、命が危ういです。」
「どうすれば、彼女を助けられるんだろう。一旦牢から出すのが出来ても、肝心の病気を治さないと、また隔離されてしまう。」
「彼女のあれは、魔の障気にあてられたものです。上質な聖水と癒しの精霊の力を借りれば、すぐ治りますよ。」
そうか…だったらここは、俺たち召喚屋の出番だな。
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