勇者のおまけで召喚された俺、紙切れ1枚で異世界を生き抜け!

coco

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7 開業前夜と、開店初日。

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「今日は色々と助かったよ。お疲れ様、カノン。」

「いいえ。お役に立てて良かったです。私、こんな素敵なお家に住めて嬉しいです。」

「うん、俺もだ。明日から…いよいよお店が開店だ。それでカノン、店の料金設定について考えてみたんだけど、聞いてくれる?」

 俺は店の料金を、5段階にランク分けすることにした。
 召喚するものの質やレベルによって、料金を5つのランクに分類しようというのだ。

 ランク1~2は、平民が払える価格帯。
   ランク3~4は商人や公民向けの価格帯。
   ランク5は貴族や、王族向けの価格帯。
 
 職業や身分で判断するつもりはないが、この世界のお金事情からすれば、実際の利用者はこんな感じに分類されると思う。

「そうですね。身分が高い人ほど、質のいい物や高度な精霊せいれい聖獣せいじゅうを必要とします。分かりました、これでいきましょう。」

「店が起動きどうに乗ってきたり世情せじょうを見て、価格の変更はあるかもしれないけどね。もうけも大事だけど、その辺は上手く見てやっていかないと…。」

「ウフフ。」

「どうした、カノン。突然笑って。」

「こうは、考えなかったんですか?この紙と魔法使いの力があれば、何でも呼び出せます。呼び出したものを即お金に変えれば、わざわざそんなに頭を悩ませ商売せずとも、楽に暮らしていけるんです。おまけにこの紙は、無限使用可です…死ぬまで生活に困ることは無いんです。」

「あぁ…そっか。確かにそれが一番楽なやり方だよな。でも…俺、そんなことは考えなかった。この紙の力を活かして商売を始めて、なんとか成功させてこの世界を生き抜くことで、頭がいっぱいだった。でも、カノンの言ったことは、この先もしないよ。だって、そんなのはカノンに失礼かなって。自分は何もしないのに、カノンの魔力をあてにして遊んで暮らすのは、ちょっとね…。」

「ウフフ。私、明日から頑張りますね、社長!」

「社長は、中々恥ずかしいな。でも、頼りにしてるよ、カノン。俺もこの世界のこともっと勉強して、商売が上手くいくように努力する。」
 
 俺とカノンは、固い握手を交わした。

※※※

 10時か…。
 開店して1時間、もうそろそろ1人目のお客様が来てくれると嬉しいんだが。

「とりあえず、この近辺きんぺんにチラシをいてもらえるように手続きは取ったから、それを見た人が来てくれるとは思うけど…。」

「初日ですからね。あせらず気長にいきましょう。」

 カランカラン…。

 入り口のベルが鳴り、来客を知らせた。

「いらっしゃいませ。我が召喚屋しょうかんやへようこそ…って、入ってこない…?」

 そこには、ドアの隙間すきまから顔を覗かせこちらを見つめる、小さな女の子が居た。
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