勇者のおまけで召喚された俺、紙切れ1枚で異世界を生き抜け!

coco

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6 仕事のパートナーと、開業準備。

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「まともに使えない、というのは抽象的ちゅうしょうてきすぎてよく分からん。辛いこと思い出させて悪いけど、具体的にどういうことがあったか説明してくれない?」

「…この世界に勇者様がお見えになられ、それに伴い勇者付きの魔法使いになるよう私は命を受けました。魔力の高さ故に選ばれたのですが、いざ戦いに赴くとそれを生かすことができなかったのです。モンスターを前に足がすくみ、仲間より前に出て戦うこともできず勇者様の指示を待つのみ。そんな魔法使い捨てられても文句は言えません。ですから、他の魔法使いをお探になった方がいいです。」

「…そういうことか。じゃあやっぱり君が必要だ、カノン!」

 目を丸くし驚くカノンに、俺はその理由を説明した。

「指示も待たず我先にと突っ走る子なら、いくら魔力があってもダメだ。俺が求めてるのは戦う仲間でなく、仕事をする仲間だから。今の話でカノンがそういう子じゃないってよく分かった。慎重しんちょう協調性きょうちょうせいがあり指示を待てる君が、今の俺には必要だ。もう一度頼む、俺に協力して欲しい。」

 俺はカノンに頭を下げた。

 …あれ、反応がない?
 カノンは涙を流していた…ヤバい泣かせた。

「す、すみませ…嬉しくて…こちらこそよろしくお願いします。」

 ああー、良かった、嬉し涙だったか!

※※※

 カノンというパートナーを得た俺は、その日の内に商売に向けすぐに準備を始めた。
 商売を始める者は、出店先の地主に開業届かいぎょうとどけを出し規定のお金を納めれば、その場で申請しんせいが通る。
 納める金額は店の土地面積、従業員の人数により定められていた。
 ようは店が広く雇う従業員が多い、規模きぼのでかい店ほど高い金を払うことになる。

 俺の店に必要なのは客と商談ができる机と椅子、事務的な作業をするスペース位だ、よって大きい店構えは必要ない。
 扱う商品はこちらが決めるのではなく、客の要望を受けその都度召喚することにした。
 まだこの世界の住人が何を必要としてるか分からないし…需要じゅよう供給きょうきゅうは大事。
 俺はそれらを考慮し、住居の一画が事務所になっている建物を選んだ。
 納める金は建物内の事務所面積分が該当するのみ、そして従業員もカノン1人だけだったので、ごく僅かな金を払うだけで済んだ。

 ちなみに収めた金と家の賃料は、俺がおまけで召喚された時に着ていた制服を売って捻出ねんしゅつした。
 制服って元々いい布使ってるけど、こっちの世界じゃ極上の絹扱い。
 おまけに「女神に謁見えっけんした時に着ていた服」という謎の付加価値がついてすごい買取額になり、必要経費を払ってもおつりが戻ってきた。

 こうして俺は異世界生活2日目にして、仕事のパートナー、住居、会社を手にしたのである-。
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