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完璧すぎる幼馴染に惚れた婚約者が、私を捨て去って行きましたが…何も知らず愚かですね─。
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私は突然、婚約者に別れを告げられた。
「私に、何かご不満が…?」
「俺はお前と別れ、その幼馴染を新たな婚約者に迎えたいんだ。彼女は気立てが良く、とても美人で…今俺の心は、彼女にあるんだ。」
私は開いた口が塞がらず、ポカンとした顔で彼を見た。
最近、やたらとこの二人の距離が近くなったのは、そういう事だったのか。
よりにもよって、あの子を好きになるだなんて…。
っていうか…私があの子の傍に居るのは、別にあの子が好きな訳じゃなく…。
その理由は、以前ご相談した事があるというのに…でも、もういいわ。
これ以上、この男や幼馴染とは、関わりたくない─。
※※※
よし、これであいつと婚約破棄できた。
もう何の心置きなく、彼女と付き合う事が出来る。
あいつの幼馴染みは、あいつと違い美人で明るく…そして頭が良く、料理も裁縫も何でもこなす完璧な女だ。
俺とデートする時など、良くお弁当や手作りのお菓子を作って来てくれ…袖口のボタンが取れ駆けていたら、その日の内に直して届けに来てくれた事もある。
そんな女といい仲になれば…あんな地味で取り柄のない平凡な女など、捨てたくなるのも当然だ─。
さぁ…今日は彼女の家で手作りの料理をご馳走になる予定だ。
きっと今日も、美味しい物を食べさせて貰えるだろう─。
俺は、ウキウキした足取りで彼女の家へと向かった。
ところが…俺を待っていたのは、黒焦げで何が何だか分からない物、ドロドロに溶けた得体の知れない物の数々だった。
そしてそれらをテーブルに並べ、微笑む幼馴染─。
「お前…これは、一体…?」
「頑張ったんだけど…ちょっと失敗しちゃったの。でも愛は沢山籠ってるし…あなた、勿論食べてくれるわよね?」
「いや、流石にこれは…。」
するとその言葉に、彼女は激高…俺に、そのドロドロを投げつけて来た。
「何よ、やっぱりあなたも他の男と一緒なの!?私を愛してるって言ったくせに─!」
「や、辞めろ─!」
俺は彼女の豹変ぶりに恐れをなし、一目散にその場から逃げ出した─。
※※※
道行く人たちが、ドロドロに汚れ悪臭を放つ俺を見て、ひそひそと囁き嗤っている。
こ、こんな屈辱的な事はない!
しかし、彼女はどうしてしまったと言うんだ…?
「あらあら…やはりあなたも、あの料理を口には出来ませんでしたか。」
「お前…!おい、彼女が急に料理下手になったが…どういう事なんだ!?」
「そんなの簡単です。今までの料理は、全て私が作ってあげてたんですから。お弁当もお菓子も…服のボタン付けも、ついでに宿題もね─。」
「はぁ!?」
「あの子はね、昔からそれはもう料理の才能が皆無。そして不器用で…勉強嫌いで成績はイマイチ。だから、私が彼女に代わり、それらを全部やってあげてたんです。彼女ったら…出来ない癖に、出来る女アピールをすぐ殿方にしたがるから…付き合わされる方も大変でした。まぁ、あなたと婚約破棄してからは、もう何もしてあげてませんが。」
「お前…好きで彼女にくっ付いてたんじゃ…?」
「まさか!彼女の父は、私の父の事業の取引相手でしてね…。自分に逆らえば、もうその取引を出来なくしてやると脅され仕方なく…。この件は、以前あなたにもご相談したのに…あなた、私の話をまともに聞いていなかったんですね。」
「そ、それは…。でもお前、どうしてもう彼女の手助けをしなくなったんだ!?」
「彼女がもうすぐ罰を受け、表舞台から姿を消すからです。私は今回あなたに婚約破棄された事、そしてあなたが彼女を選ぶ事を、そしてその彼女の悪事…全てお父様に報告しました。するとお父様は激怒…そんな娘の居る家など、こちらから縁を切ると仰り…それが仲間内に広まり、彼女の家の事業はもうすぐ傾きます。そして…私を助けるどころか、一方的に捨てる様な男には、慰謝料をたっぷり請求すると仰ってましたよ。だからあなた…そうぞ御覚悟を。」
「そ、そんなぁ…!」
※※※
お父様の仰った通り、その後幼馴染の家は事業が傾き破産し…そして、一人では何も出来ない無能女である事が世間に知られる事となった幼馴染は、それに耐えきれずこの地から姿を消した。
そしてそんな女と隠れて浮気して私を捨てた元婚約者は、私に多額の慰謝料を支払う事になり、そのせいで財産の多くを失い夜逃げ同然にこの地を去り、今は田舎で一人寂しく暮らして居る。
一方私は、幼馴染に代わり何でもこなしていたせいか…とても家庭的で賢く、良い妻になると噂される様になり…その後、すぐに素敵な殿方との婚約が決まったわ。
今まで辛い思いをしてきたけど…まさか、そのおかげでこんな幸せを手に出来るなんて、夢にも思ってなかったわ──。
「私に、何かご不満が…?」
「俺はお前と別れ、その幼馴染を新たな婚約者に迎えたいんだ。彼女は気立てが良く、とても美人で…今俺の心は、彼女にあるんだ。」
私は開いた口が塞がらず、ポカンとした顔で彼を見た。
最近、やたらとこの二人の距離が近くなったのは、そういう事だったのか。
よりにもよって、あの子を好きになるだなんて…。
っていうか…私があの子の傍に居るのは、別にあの子が好きな訳じゃなく…。
その理由は、以前ご相談した事があるというのに…でも、もういいわ。
これ以上、この男や幼馴染とは、関わりたくない─。
※※※
よし、これであいつと婚約破棄できた。
もう何の心置きなく、彼女と付き合う事が出来る。
あいつの幼馴染みは、あいつと違い美人で明るく…そして頭が良く、料理も裁縫も何でもこなす完璧な女だ。
俺とデートする時など、良くお弁当や手作りのお菓子を作って来てくれ…袖口のボタンが取れ駆けていたら、その日の内に直して届けに来てくれた事もある。
そんな女といい仲になれば…あんな地味で取り柄のない平凡な女など、捨てたくなるのも当然だ─。
さぁ…今日は彼女の家で手作りの料理をご馳走になる予定だ。
きっと今日も、美味しい物を食べさせて貰えるだろう─。
俺は、ウキウキした足取りで彼女の家へと向かった。
ところが…俺を待っていたのは、黒焦げで何が何だか分からない物、ドロドロに溶けた得体の知れない物の数々だった。
そしてそれらをテーブルに並べ、微笑む幼馴染─。
「お前…これは、一体…?」
「頑張ったんだけど…ちょっと失敗しちゃったの。でも愛は沢山籠ってるし…あなた、勿論食べてくれるわよね?」
「いや、流石にこれは…。」
するとその言葉に、彼女は激高…俺に、そのドロドロを投げつけて来た。
「何よ、やっぱりあなたも他の男と一緒なの!?私を愛してるって言ったくせに─!」
「や、辞めろ─!」
俺は彼女の豹変ぶりに恐れをなし、一目散にその場から逃げ出した─。
※※※
道行く人たちが、ドロドロに汚れ悪臭を放つ俺を見て、ひそひそと囁き嗤っている。
こ、こんな屈辱的な事はない!
しかし、彼女はどうしてしまったと言うんだ…?
「あらあら…やはりあなたも、あの料理を口には出来ませんでしたか。」
「お前…!おい、彼女が急に料理下手になったが…どういう事なんだ!?」
「そんなの簡単です。今までの料理は、全て私が作ってあげてたんですから。お弁当もお菓子も…服のボタン付けも、ついでに宿題もね─。」
「はぁ!?」
「あの子はね、昔からそれはもう料理の才能が皆無。そして不器用で…勉強嫌いで成績はイマイチ。だから、私が彼女に代わり、それらを全部やってあげてたんです。彼女ったら…出来ない癖に、出来る女アピールをすぐ殿方にしたがるから…付き合わされる方も大変でした。まぁ、あなたと婚約破棄してからは、もう何もしてあげてませんが。」
「お前…好きで彼女にくっ付いてたんじゃ…?」
「まさか!彼女の父は、私の父の事業の取引相手でしてね…。自分に逆らえば、もうその取引を出来なくしてやると脅され仕方なく…。この件は、以前あなたにもご相談したのに…あなた、私の話をまともに聞いていなかったんですね。」
「そ、それは…。でもお前、どうしてもう彼女の手助けをしなくなったんだ!?」
「彼女がもうすぐ罰を受け、表舞台から姿を消すからです。私は今回あなたに婚約破棄された事、そしてあなたが彼女を選ぶ事を、そしてその彼女の悪事…全てお父様に報告しました。するとお父様は激怒…そんな娘の居る家など、こちらから縁を切ると仰り…それが仲間内に広まり、彼女の家の事業はもうすぐ傾きます。そして…私を助けるどころか、一方的に捨てる様な男には、慰謝料をたっぷり請求すると仰ってましたよ。だからあなた…そうぞ御覚悟を。」
「そ、そんなぁ…!」
※※※
お父様の仰った通り、その後幼馴染の家は事業が傾き破産し…そして、一人では何も出来ない無能女である事が世間に知られる事となった幼馴染は、それに耐えきれずこの地から姿を消した。
そしてそんな女と隠れて浮気して私を捨てた元婚約者は、私に多額の慰謝料を支払う事になり、そのせいで財産の多くを失い夜逃げ同然にこの地を去り、今は田舎で一人寂しく暮らして居る。
一方私は、幼馴染に代わり何でもこなしていたせいか…とても家庭的で賢く、良い妻になると噂される様になり…その後、すぐに素敵な殿方との婚約が決まったわ。
今まで辛い思いをしてきたけど…まさか、そのおかげでこんな幸せを手に出来るなんて、夢にも思ってなかったわ──。
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