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第11話 お金の工面について。

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 このころから奥さんや先生が、やたらお金がない、と言うようになった。

 着ている服や髪の毛が汚れ臭い、みすぼらしくなっていった。

 それを見た私たち職員は、あの2人、ちゃんと生活できているのかな?
 お風呂に入ったり着替えたり、ちゃんとできているのか、そんな心配をしていた。
 2人は眼の下のクマが酷く、毎日眠そうにしていた。

 そんな時、パートのBさんが私たちにこう言った。

「私の家族がお店をやってるんだけど、奥さんと先生があの人に連れられて、夜よく来るのよ。話を聞くと、他のお店にも行ってるみたい。毎日飲み歩いてたら、そうなるよね。飲み代は、あの人がいつも奢ってあげてるみたい。でもさ、どこにそんなお金があるんのかな。」

 そうなのだ、私はそれが不思議だった。

 この病院の経営は悪化している。
 コンサルタントとして携わっているあの人が、毎晩2人を引き連れて豪遊ごうゆうできるお金はどこから入って来るのだろう。
 高級外車も購入していたし、食べている物はいつも外食とコンビニの物だ。
 
 そのころあの人は、お金に困った様子は全くなかった。
 その一方で奥さんと先生は、言い方は悪いが、どんどん貧乏地味ていく…。

※※※

 この騒動の後、聞いたことだ。

 奥さんが、泣きながらこぼした話から推察すいさつすると、当時裏でこんなことが起きていたようだ。
 こんな事、当時の私は全く知らなかった、知っていたらどれ程良かったか…。
 
 話を戻そう、奥さんはあの人と知り合い仲良くなると、病院経営について相談するようになった、
 するとあの人は、自分がコンサルタントをしてあげると言い、それにあたりある物を作って欲しいと、奥さんに頼んだ。

 それは、キャッシュカードだ。

 病院にかかる経費や支払いの為に、いくつかの銀行でカードを作るように言った。
 銀行だけでない、街角にあるプロ〇スや、ア〇ムなどでも作るように言った。
 結局奥さんは、5枚程カードを作ったらしい。

 そのカードの暗証番号は、あの人の言う通りにした。
 あの人はそのカードを、コンサルタントである自分に預けるように言った。

 奥さんは言う通りカードを作り、そしてあの人に全て預けた。

 そしてあの人はそのカードでお金を借り、そのお金でみんなに食事をおごり、車の購入や自分の生活にあてていたらしい。
 あの人は、お金持ちなんかじゃない。
 人の名義でカードを作り、お金を借り、毎日自由に使っていただけだ。
 
 するとどうなるか、お金を借りて使ったのはあの人なのにカード名義は奥さんだから、奥さんが返さなければならなくなる。

 こうして奥さんは借金に追われ、毎日眠れない日々を過ごすことになったのだ。

※※※

 Bさんのお店で、当時奥さんはあの人に、こう話していたそうだ。

「こんなにお金を返さなくてはいけない、本当に大丈夫なの?これは本当に、新事業の高専賃こうせんちんの費用にあてられているの?」

 このころから、奥さんはあの人に対し、疑問を感じるようになっていた様だ。

 でもあまりに借金がかさみ、もう後戻りができないところまで来ていたらしい。
 経営の向上が見られないあの病院より、あの人が進める新事業、高専賃にお金を投資した方がいい。
 この人の言う通りして、この人に着いていくしかない…そういう心情だったと思う。

 この高専賃については、また改めてお話する。

※※※

 人は、こうも簡単に操られてしまうのか?
 言われた通りの暗証番号でカードを作り、それを言った本人に渡すなど、そんなこと…。

 そう思った方は、たくさん見えると思う。
 むしろ、そう思うのが当たり前だ。

 でも、それがあり得るのだ。
 相手が洗脳状態にあり自己判断ができない時は、それは簡単にできてしまう。
 
 事実あの人は、それをやってのけた、
 奥さんだけでない、先生や、そして、私にもだ…。
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