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私を悪者に仕立て上げ、婚約者の座を奪おうとした愛人は…自らの行いにより破滅しました。

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「…不美人のお前は、着飾らなくていい!」

「本当よ、お金の無駄だわ。それは私が着てあげるから、貸しなさい!」

 彼の愛人は、私が持って居たドレスに手を伸ばした。

「駄目です!これは大事な物で─」

「何よ、ケチ!」

 そう言うと女は私を突き飛ばし…私から奪ったドレスを、窓から放り投げた─。

「フン、いい気味だわ!」

「まぁまぁ、お前にはもっといいドレスを買ってやるから。」

「本当?嬉しい~。」

 彼女は、婚約者である彼が使用人として雇った娘だったんだけど…次第にその関係は、特別なものとなっていった。
 
 今にして思えば…美しい容姿の彼女を、彼は始めからそういう目的で雇ったのだろう。
 
 私は急いで庭に降りると、拾い上げたドレスを見て青ざめた。

 これは…大変な事になってしまったわ─。

※※※

「あの女、あなたに隠れて贅沢してるのよ!」

「全く…仕方のない女だ。不美人が着飾っても意味が無いのに…金食い虫の、最低の婚約者を貰ってしまった。」

「だったら、私を婚約者にして?それで代わりに、あの女を使用人にすればいいじゃない?」

「だが…あいつはそれなりに良い家の娘だし、そう簡単に婚約破棄出来ないよ。」

 そんな…私は、彼もこの家の財産も全部自分の物にしたいのに─。

 それに…彼は男だから分からなかったようだけど…あのドレス、本当に高価な物だったわ。
 
 彼にお金を管理されてるあの女が手にしてるのが、不思議なくらい…。

 もしかして…どこかの誰かから、盗んできたとか!?

 だとしたら…あれを持って、憲兵に訴え出れば…きっとあの女は捕らえられ、この家から居なくなる。

 そうなったら…私の望みは全てかなうわ─!

 私は、早速あの女が居ない隙を狙い部屋に忍び込むと…あのドレスを手に、憲兵の元に走った。
 
 しかもこのドレス…近くで見たらすごい事実が隠されていたわ─。
 
 あの女、捕まるどころじゃ済まないわね─!

※※※

「…憲兵の方々、このドレス、ここをよく見て下さい。神殿のマークがあるでしょう?」

「ほう…これはまさに、神殿で祀られる守護神を現したものだな。」

「最近、神殿で盗みがあったと聞いてますし…もしかしたら、あの女が犯人ではないかと…。早く捕まえて下さい!」

 私の言葉に、憲兵たちは顔を合わせ頷いた。
 
 ウフフ…作戦成功ね─!

 すると憲兵は、突然私を地面に引き倒した。

「な、何するの!?捕まえるのは私じゃなく、あの女よ!」

「いや、合っているぞ?」

「王子様!?ど、どうしてここに…!」

「あなたが持ち出したそのドレスは、王子の婚約者である聖女様の物だからです。」

「あなたまで!?」

「あのドレスは、私がお二人からお預かりした大切な物。それが汚された上、部屋から盗み出されたと知り、すぐにあなたの仕業だと思いお城にお知らせしたの。」

「お前があのドレスを利用し、良くない事をしでかすと思い、事前に憲兵に知らせておいたんだ。」

「でも…どうしてそれを、あなたに渡すのよ!?」

「実は…私は以前から、聖女様の纏う聖衣の作製にあたって居ましてね。その縁で、王子との結婚式のドレスも作って欲しいと生地を渡されたのです。そして…あなたが窓から放り投げ、更に私を陥れる為に利用したドレスが、その作成中の物だったのです。」

「そ、そんな…。」

「よくも、俺と彼女の愛の結晶であるドレスを穢してくれたな!王家と聖女に対する、お前の無礼な振る舞い…お前のした事は、我らに対する反逆とみなす!」

「ど、どうかお許しを─!」

※※※

 彼女は、すぐに牢へと送られた。
 そして厳しい拷問を受けた末、国外追放される事となった。

 あのドレスは、それほど大切で高価な物だったんだもの…それにあんな振る舞いをしてしまったんだから、当然よ。

 そして、そんな女を使用人として雇っていた婚約者にも、罰が与えられた。
 
 財産を全て没収され屋敷も失った彼は、身一つでこの地を出て行く事に─。

 罰を言い渡された瞬間、彼は私にすがり助けを求めてきたが…私はその場で婚約破棄を告げた。
 今まで私に見向きもしなかった癖に、こうなってから私を求めても遅いわ。

 私はその後、聖女様のドレスを無事作り終え…お礼として、お城からたっぷりと褒美を頂いた。

 その上、聖女様から加護まで授けて頂き…そのおかげか、すぐに新しい婚約が決まった。

 お相手の彼は、私だけを見てくれる優しい方で…このまま行ったら、私達は結近く婚する事になるだろう。
 
 私はどうやら、今度は自分の結婚式に着るドレスの作製に勤しむ事になりそうね─。
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