1 / 1
可愛いメイドに夢中になった婚約者は、私を捨てましたが…後に不幸に見舞われました。
しおりを挟む
「お前とは、もう婚約破棄だ!」
そう言い放ったこの男は、私の婚約者だ。
「…それは、本気ですか?」
「ああ。だってお前は、彼女を虐めているだろう?そんな悪女は、この家に必要ない!」
彼の腕の中で震えているのは、この家で一番若く可愛いメイドだった。
「私は…彼女を虐めた覚えはありません。頼んだ仕事だけやればいいと、注意をしただけです。」
彼女は頼まれた仕事は一切しない癖に、彼の書斎や私の部屋の良い掃除だけは一生懸命やろうとするおかしなところがあった。
しかしそれを彼の前では上手く隠し、良い子のメイドで通していた。
だから、彼に彼女の行動について話をしても全く信じて貰えず…それどころかこんな事に─。
「注意だと?この家の主は俺だ、お前が出しゃばるな!もういい…さっさと荷物をまとめ出て行け!」
彼の言葉に、その腕の中に居たメイドがニヤリと笑みを浮かべた。
「これで、君を守る事が出来るよ。今日から君を俺付きのメイドにする…一生、俺の傍に居てくれ。」
「はい、ずっとあなたのお傍に─。」
どうやらこの二人は、互いを好いているらしい。
あなた達が結ばれるには、私が邪魔という事ね…。
ここまで言われたら、仕方ないわ…ちゃんと出て行くわよ。
でも、そのメイドの行動は気になるけど…それで彼がどうなろうと、仕方ないか─。
※※※
あの女が居なくなって良かった。
これでこの可愛いメイドを、思う存分愛でる事が出来る。
ところがある日、城の兵が屋敷に押しかけて来て…メイドと俺を捕えてしまった。
「お前達、大人しくしろ!今から城に来てもらうぞ!」
一体どういう事なんだ─!?
「随分逃げ回ってくれたな…この男に匿って貰って居たのか、この犯罪者が!」
「お、王様…俺が匿うとは、彼女は何を─?」
「この女は、窃盗団の一味でな。お前の家に居る前はこの城でメイドをしていたのだが…城に窃盗団の仲間を手引きし、自身は姿を消して居たんだ。」
「そ、そんな…。」
「他の仲間たちは捕らえたが、その女は中々見つからなくてな…だがある者の訴えで、漸く見つける事が出来た。」
「ある者…?」
王に言われ部屋に入って来たのは、俺が追い出した元婚約者だった。
「彼女の行動に疑問を持った私は、不可解な行動を取るメイドが居ると憲兵に通報だけしておいたんですよ。そしたら…あれよあれよという間に、この女が犯罪に加担していた事が分かりましてね。そんな女を、あなたが大事にしていると伝えたら…あなたも彼女の仲間と思われたみたいで。」
「じょ、冗談じゃない!俺は、彼女がただのメイドと思ったから傍に置いただけで─」
「そんな!一生私を傍に置いてくれると言ったのに…あっさり見捨てないでよ!」
「もうよい!それぞれの言い訳は、牢の中で聞く…この者達を連れて行け!」
「そ、そんな!おい…元婚約者なら、見てないで俺を助けてくれ─!」
彼に縋るような目で見られたが、私はそれを無視した。
だって、もうあなたとは他人だもの…助ける義理は無いわ。
それより、私がここに来たのは─。
「そなたのおかげで、これで窃盗団の一味は全て捕らえられた。そなたの働きに感謝し、褒美を与えよう。」
私は王から報奨金を貰い、それを元手に事業を始めた。
そしてその義業が成功すると同時に、私のこの活躍は世に広まり、あちこちの殿方から求愛される事に。
私はその中から、一番真面目で誠実な人を婚約者に選んだ。
一方、あの女と一緒に連れて行かれた彼は、匿った訳でも仲間でない事も分かって貰えたが、牢に入っている間に事業が傾き…またあの女を傍に置いて居た間に、屋敷の貴金属や財産をとっくに盗まれて居たせいで、すぐに破産してしまった。
今は住む家さえ失い、路頭に迷う事になってしまったそうだが…自業自得よ。
捕らえられた女は、他の窃盗団の仲間と共に処刑されたけど…それで彼の財産が返って来る訳でもないし…あの可愛さにすっかり騙され、とんでもない悪女を傍に置いてしまったものね─。
そう言い放ったこの男は、私の婚約者だ。
「…それは、本気ですか?」
「ああ。だってお前は、彼女を虐めているだろう?そんな悪女は、この家に必要ない!」
彼の腕の中で震えているのは、この家で一番若く可愛いメイドだった。
「私は…彼女を虐めた覚えはありません。頼んだ仕事だけやればいいと、注意をしただけです。」
彼女は頼まれた仕事は一切しない癖に、彼の書斎や私の部屋の良い掃除だけは一生懸命やろうとするおかしなところがあった。
しかしそれを彼の前では上手く隠し、良い子のメイドで通していた。
だから、彼に彼女の行動について話をしても全く信じて貰えず…それどころかこんな事に─。
「注意だと?この家の主は俺だ、お前が出しゃばるな!もういい…さっさと荷物をまとめ出て行け!」
彼の言葉に、その腕の中に居たメイドがニヤリと笑みを浮かべた。
「これで、君を守る事が出来るよ。今日から君を俺付きのメイドにする…一生、俺の傍に居てくれ。」
「はい、ずっとあなたのお傍に─。」
どうやらこの二人は、互いを好いているらしい。
あなた達が結ばれるには、私が邪魔という事ね…。
ここまで言われたら、仕方ないわ…ちゃんと出て行くわよ。
でも、そのメイドの行動は気になるけど…それで彼がどうなろうと、仕方ないか─。
※※※
あの女が居なくなって良かった。
これでこの可愛いメイドを、思う存分愛でる事が出来る。
ところがある日、城の兵が屋敷に押しかけて来て…メイドと俺を捕えてしまった。
「お前達、大人しくしろ!今から城に来てもらうぞ!」
一体どういう事なんだ─!?
「随分逃げ回ってくれたな…この男に匿って貰って居たのか、この犯罪者が!」
「お、王様…俺が匿うとは、彼女は何を─?」
「この女は、窃盗団の一味でな。お前の家に居る前はこの城でメイドをしていたのだが…城に窃盗団の仲間を手引きし、自身は姿を消して居たんだ。」
「そ、そんな…。」
「他の仲間たちは捕らえたが、その女は中々見つからなくてな…だがある者の訴えで、漸く見つける事が出来た。」
「ある者…?」
王に言われ部屋に入って来たのは、俺が追い出した元婚約者だった。
「彼女の行動に疑問を持った私は、不可解な行動を取るメイドが居ると憲兵に通報だけしておいたんですよ。そしたら…あれよあれよという間に、この女が犯罪に加担していた事が分かりましてね。そんな女を、あなたが大事にしていると伝えたら…あなたも彼女の仲間と思われたみたいで。」
「じょ、冗談じゃない!俺は、彼女がただのメイドと思ったから傍に置いただけで─」
「そんな!一生私を傍に置いてくれると言ったのに…あっさり見捨てないでよ!」
「もうよい!それぞれの言い訳は、牢の中で聞く…この者達を連れて行け!」
「そ、そんな!おい…元婚約者なら、見てないで俺を助けてくれ─!」
彼に縋るような目で見られたが、私はそれを無視した。
だって、もうあなたとは他人だもの…助ける義理は無いわ。
それより、私がここに来たのは─。
「そなたのおかげで、これで窃盗団の一味は全て捕らえられた。そなたの働きに感謝し、褒美を与えよう。」
私は王から報奨金を貰い、それを元手に事業を始めた。
そしてその義業が成功すると同時に、私のこの活躍は世に広まり、あちこちの殿方から求愛される事に。
私はその中から、一番真面目で誠実な人を婚約者に選んだ。
一方、あの女と一緒に連れて行かれた彼は、匿った訳でも仲間でない事も分かって貰えたが、牢に入っている間に事業が傾き…またあの女を傍に置いて居た間に、屋敷の貴金属や財産をとっくに盗まれて居たせいで、すぐに破産してしまった。
今は住む家さえ失い、路頭に迷う事になってしまったそうだが…自業自得よ。
捕らえられた女は、他の窃盗団の仲間と共に処刑されたけど…それで彼の財産が返って来る訳でもないし…あの可愛さにすっかり騙され、とんでもない悪女を傍に置いてしまったものね─。
84
お気に入りに追加
22
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
好き避けするような男のどこがいいのかわからない
麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
マーガレットの婚約者であるローリーはマーガレットに対しては冷たくそっけない態度なのに、彼女の妹であるエイミーには優しく接している。いや、マーガレットだけが嫌われているようで、他の人にはローリーは優しい。
彼は妹の方と結婚した方がいいのではないかと思い、妹に、彼と結婚するようにと提案することにした。しかしその婚約自体が思いがけない方向に行くことになって――。
全5話
美しい容姿の義妹は、私の婚約者を奪おうとしました。だったら、貴方には絶望してもらいましょう。
久遠りも
恋愛
美しい容姿の義妹は、私の婚約者を奪おうとしました。だったら、貴方には絶望してもらいましょう。
※一話完結です。
ゆるゆる設定です。
愛する婚約者に、生贄になれと命じられましたが…身勝手な者達には、罰が下る事になりました。
coco
恋愛
婚約者から、この地の為に生贄になれと命じられた私。
彼は、自身の妹を守りたい一心で、私にそんな事を言った様だが…?
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
私の療養中に、婚約者と幼馴染が駆け落ちしました──。
Nao*
恋愛
素適な婚約者と近く結婚する私を病魔が襲った。
彼の為にも早く元気になろうと療養する私だったが、一通の手紙を残し彼と私の幼馴染が揃って姿を消してしまう。
どうやら私、彼と幼馴染に裏切られて居たようです──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。最終回の一部、改正してあります。)
格上の言うことには、従わなければならないのですか? でしたら、わたしの言うことに従っていただきましょう
柚木ゆず
恋愛
「アルマ・レンザ―、光栄に思え。次期侯爵様は、お前をいたく気に入っているんだ。大人しく僕のものになれ。いいな?」
最初は柔らかな物腰で交際を提案されていた、リエズン侯爵家の嫡男・バチスタ様。ですがご自身の思い通りにならないと分かるや、その態度は一変しました。
……そうなのですね。格下は格上の命令に従わないといけない、そんなルールがあると仰るのですね。
分かりました。
ではそのルールに則り、わたしの命令に従っていただきましょう。
うるさい!お前は俺の言う事を聞いてればいいんだよ!と言われましたが
仏白目
恋愛
私達、幼馴染ってだけの関係よね?
私アマーリア.シンクレアには、ケント.モダール伯爵令息という幼馴染がいる
小さな頃から一緒に遊んだり 一緒にいた時間は長いけど あなたにそんな態度を取られるのは変だと思うの・・・
*作者ご都合主義の世界観でのフィクションです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる