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可愛いメイドに夢中になった婚約者は、私を捨てましたが…後に不幸に見舞われました。
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「お前とは、もう婚約破棄だ!」
そう言い放ったこの男は、私の婚約者だ。
「…それは、本気ですか?」
「ああ。だってお前は、彼女を虐めているだろう?そんな悪女は、この家に必要ない!」
彼の腕の中で震えているのは、この家で一番若く可愛いメイドだった。
「私は…彼女を虐めた覚えはありません。頼んだ仕事だけやればいいと、注意をしただけです。」
彼女は頼まれた仕事は一切しない癖に、彼の書斎や私の部屋の良い掃除だけは一生懸命やろうとするおかしなところがあった。
しかしそれを彼の前では上手く隠し、良い子のメイドで通していた。
だから、彼に彼女の行動について話をしても全く信じて貰えず…それどころかこんな事に─。
「注意だと?この家の主は俺だ、お前が出しゃばるな!もういい…さっさと荷物をまとめ出て行け!」
彼の言葉に、その腕の中に居たメイドがニヤリと笑みを浮かべた。
「これで、君を守る事が出来るよ。今日から君を俺付きのメイドにする…一生、俺の傍に居てくれ。」
「はい、ずっとあなたのお傍に─。」
どうやらこの二人は、互いを好いているらしい。
あなた達が結ばれるには、私が邪魔という事ね…。
ここまで言われたら、仕方ないわ…ちゃんと出て行くわよ。
でも、そのメイドの行動は気になるけど…それで彼がどうなろうと、仕方ないか─。
※※※
あの女が居なくなって良かった。
これでこの可愛いメイドを、思う存分愛でる事が出来る。
ところがある日、城の兵が屋敷に押しかけて来て…メイドと俺を捕えてしまった。
「お前達、大人しくしろ!今から城に来てもらうぞ!」
一体どういう事なんだ─!?
「随分逃げ回ってくれたな…この男に匿って貰って居たのか、この犯罪者が!」
「お、王様…俺が匿うとは、彼女は何を─?」
「この女は、窃盗団の一味でな。お前の家に居る前はこの城でメイドをしていたのだが…城に窃盗団の仲間を手引きし、自身は姿を消して居たんだ。」
「そ、そんな…。」
「他の仲間たちは捕らえたが、その女は中々見つからなくてな…だがある者の訴えで、漸く見つける事が出来た。」
「ある者…?」
王に言われ部屋に入って来たのは、俺が追い出した元婚約者だった。
「彼女の行動に疑問を持った私は、不可解な行動を取るメイドが居ると憲兵に通報だけしておいたんですよ。そしたら…あれよあれよという間に、この女が犯罪に加担していた事が分かりましてね。そんな女を、あなたが大事にしていると伝えたら…あなたも彼女の仲間と思われたみたいで。」
「じょ、冗談じゃない!俺は、彼女がただのメイドと思ったから傍に置いただけで─」
「そんな!一生私を傍に置いてくれると言ったのに…あっさり見捨てないでよ!」
「もうよい!それぞれの言い訳は、牢の中で聞く…この者達を連れて行け!」
「そ、そんな!おい…元婚約者なら、見てないで俺を助けてくれ─!」
彼に縋るような目で見られたが、私はそれを無視した。
だって、もうあなたとは他人だもの…助ける義理は無いわ。
それより、私がここに来たのは─。
「そなたのおかげで、これで窃盗団の一味は全て捕らえられた。そなたの働きに感謝し、褒美を与えよう。」
私は王から報奨金を貰い、それを元手に事業を始めた。
そしてその義業が成功すると同時に、私のこの活躍は世に広まり、あちこちの殿方から求愛される事に。
私はその中から、一番真面目で誠実な人を婚約者に選んだ。
一方、あの女と一緒に連れて行かれた彼は、匿った訳でも仲間でない事も分かって貰えたが、牢に入っている間に事業が傾き…またあの女を傍に置いて居た間に、屋敷の貴金属や財産をとっくに盗まれて居たせいで、すぐに破産してしまった。
今は住む家さえ失い、路頭に迷う事になってしまったそうだが…自業自得よ。
捕らえられた女は、他の窃盗団の仲間と共に処刑されたけど…それで彼の財産が返って来る訳でもないし…あの可愛さにすっかり騙され、とんでもない悪女を傍に置いてしまったものね─。
そう言い放ったこの男は、私の婚約者だ。
「…それは、本気ですか?」
「ああ。だってお前は、彼女を虐めているだろう?そんな悪女は、この家に必要ない!」
彼の腕の中で震えているのは、この家で一番若く可愛いメイドだった。
「私は…彼女を虐めた覚えはありません。頼んだ仕事だけやればいいと、注意をしただけです。」
彼女は頼まれた仕事は一切しない癖に、彼の書斎や私の部屋の良い掃除だけは一生懸命やろうとするおかしなところがあった。
しかしそれを彼の前では上手く隠し、良い子のメイドで通していた。
だから、彼に彼女の行動について話をしても全く信じて貰えず…それどころかこんな事に─。
「注意だと?この家の主は俺だ、お前が出しゃばるな!もういい…さっさと荷物をまとめ出て行け!」
彼の言葉に、その腕の中に居たメイドがニヤリと笑みを浮かべた。
「これで、君を守る事が出来るよ。今日から君を俺付きのメイドにする…一生、俺の傍に居てくれ。」
「はい、ずっとあなたのお傍に─。」
どうやらこの二人は、互いを好いているらしい。
あなた達が結ばれるには、私が邪魔という事ね…。
ここまで言われたら、仕方ないわ…ちゃんと出て行くわよ。
でも、そのメイドの行動は気になるけど…それで彼がどうなろうと、仕方ないか─。
※※※
あの女が居なくなって良かった。
これでこの可愛いメイドを、思う存分愛でる事が出来る。
ところがある日、城の兵が屋敷に押しかけて来て…メイドと俺を捕えてしまった。
「お前達、大人しくしろ!今から城に来てもらうぞ!」
一体どういう事なんだ─!?
「随分逃げ回ってくれたな…この男に匿って貰って居たのか、この犯罪者が!」
「お、王様…俺が匿うとは、彼女は何を─?」
「この女は、窃盗団の一味でな。お前の家に居る前はこの城でメイドをしていたのだが…城に窃盗団の仲間を手引きし、自身は姿を消して居たんだ。」
「そ、そんな…。」
「他の仲間たちは捕らえたが、その女は中々見つからなくてな…だがある者の訴えで、漸く見つける事が出来た。」
「ある者…?」
王に言われ部屋に入って来たのは、俺が追い出した元婚約者だった。
「彼女の行動に疑問を持った私は、不可解な行動を取るメイドが居ると憲兵に通報だけしておいたんですよ。そしたら…あれよあれよという間に、この女が犯罪に加担していた事が分かりましてね。そんな女を、あなたが大事にしていると伝えたら…あなたも彼女の仲間と思われたみたいで。」
「じょ、冗談じゃない!俺は、彼女がただのメイドと思ったから傍に置いただけで─」
「そんな!一生私を傍に置いてくれると言ったのに…あっさり見捨てないでよ!」
「もうよい!それぞれの言い訳は、牢の中で聞く…この者達を連れて行け!」
「そ、そんな!おい…元婚約者なら、見てないで俺を助けてくれ─!」
彼に縋るような目で見られたが、私はそれを無視した。
だって、もうあなたとは他人だもの…助ける義理は無いわ。
それより、私がここに来たのは─。
「そなたのおかげで、これで窃盗団の一味は全て捕らえられた。そなたの働きに感謝し、褒美を与えよう。」
私は王から報奨金を貰い、それを元手に事業を始めた。
そしてその義業が成功すると同時に、私のこの活躍は世に広まり、あちこちの殿方から求愛される事に。
私はその中から、一番真面目で誠実な人を婚約者に選んだ。
一方、あの女と一緒に連れて行かれた彼は、匿った訳でも仲間でない事も分かって貰えたが、牢に入っている間に事業が傾き…またあの女を傍に置いて居た間に、屋敷の貴金属や財産をとっくに盗まれて居たせいで、すぐに破産してしまった。
今は住む家さえ失い、路頭に迷う事になってしまったそうだが…自業自得よ。
捕らえられた女は、他の窃盗団の仲間と共に処刑されたけど…それで彼の財産が返って来る訳でもないし…あの可愛さにすっかり騙され、とんでもない悪女を傍に置いてしまったものね─。
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