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お得意の嘘泣きで男を惑わす義妹ですが…肝心の愛する彼に嫌われては、お終いですね。

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「あの子は、私を虐める酷い女なのに…。」

 悲しみのなみだを流し、男に訴える義妹。

「分かったから、もう泣かないで?君が泣きやんでくれるなら、あいつとは婚約破棄こんやくはきするよ。」

うれしい!」

 義妹の涙に、男は落ちた─。

※※※

「いい加減、その涙で男をまどわすのは辞めなさい!いくら自分より人気のある令嬢が気に喰わないからって、婚約破棄させるなど…。」

「うるさいわね!女の涙は最大の武器だから、使わないとそんよ。まぁ、私の様に外見にめぐまれた女にしか出来ない事よね。お姉様のような地味女には…フフッ、一生かかっても無理ね。」

「…ところであなた、彼の事は本気なの?」

勿論もちろんお姉様の婚約者は私が奪うわ…この得意の嘘泣きでね!だから、あきらめて早く他の男を探してよ。まぁどうしても諦められないなら…私の様に嘘泣きして、すがってみたら?」

 義妹はケラケラと笑いながら、って行った。

 義妹の本命は、私の婚約者だ。
 いつか私から彼を奪ってやろうと、虎視眈々こしたんたんと狙っている。

 あなたは、いつだって本気で泣いた事などない。
 悲しみや絶望ぜつぼうの涙がどんなものかなど、全く知らずにいる。

 だけどもうすぐ、あなたは本気で泣く事になるわ。
 
 そして後悔しても、私は知らないから─。

※※※

 血も繋がってないのに姉ぶって…偉そうに!
 あんな女、私に婚約者を奪われ泣きを見ればいい─。

「…あの人はね、気に喰わないからとすぐ小言を言って来て…私を泣かす酷い女なの。あんな女とは、すぐに婚約破棄なさった方が良いわ。」

 私は姉の婚約者の元を訪ね、得意の嘘泣きでそう訴えて見せた。

「彼女が、そんな事を…?」

「あの人は、自分より可愛い私が憎いんです。だから虐めの様な真似を…!私なら、そんなおろかな事はしません。姉と婚約破棄したら、新しい婚約者は是非ぜひこの私を─」

「お断りだ。」

 彼は私の手を取ると、私の指から指輪を抜き取った。

 すると…指輪から光が放たれ、その中にある映像が浮かび上がった。

 私がお姉様からこの指輪を貰う所から始まり…そして令嬢の婚約者を奪う所と─。

『女の涙は最大の武器だから、使わないと損よ。』

『お姉様の婚約者は私が奪うわ…この得意の嘘泣きでね!』

「嫌だ…辞めてよ!一体何なのよ、これは!?」

「これは、俺の魔力をめた魔道具だ。俺はこれを彼女に渡し、そして君に付けさせるように頼んだ。」

「な、何でそんな事…。」

「君の嘘泣きの証拠を集め…嘘つきな君の真の姿を公のものにしようと思って。それに…君が俺を手に入れる為に、何かしてくるんじゃないかと警戒していた。」

「私の嘘泣きは完璧なのに、どうしてあなたは─!」

「俺はただ、愛している婚約者の言葉を信じただけさ。そして俺は…こんな汚い涙を流す嘘つき女など、大嫌いだ。」

「そんなぁ…。」

※※※

 そして家へと戻ってきた義妹は、私の前で号泣。
 私に恨み言を言っていたけど…やがて怒った表情で部屋に入って来たお父様に、連れて行かれてしまった。
 きっとお父様、彼から義妹の事を聞かされ、あの証拠を見たのね…。

 そして義妹は親子の縁を切られ、そのまま家から追放されたのだ。
 
 というのも、あの指輪が元で、これまで嘘泣きをしていた事…それと、令嬢を婚約破棄させた事がバレてしまったからだ。

 余り知られてはいないが、あの令嬢の家は王家とも繋がりがあるそうだからね。
 義妹にはそれ相応の罰を受けさせねば、この家も大変な事になるから仕方ないわ。

 その後義妹はその令嬢の元で、使用人としてタダ働きの上に毎日こき使われ、後悔の涙を流しているそうよ。

 まぁ…完全に他人となった私には、もう関係のない話だけどね。

 義妹の事が片付くと、私は彼から改めて正式に貰う筈だった指輪を渡され、プロポーズを受けた。

 私は嬉しくて、思わず涙ぐんだ。
 そんな私の涙を、彼は優しく指でぬぐってくれた。

 そして涙を流す私を、彼は美しいと言って抱きしめてくれた。

 こういう時の女の涙って、最大の武器ね…義妹の嘘泣きなど目じゃないわ─。
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