義妹に夢中になった王子に捨てられたので、私はこの宝を持ってお城から去る事にします。

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義妹に夢中になった王子に捨てられたので、私はこの宝を持ってお城から去る事にします。

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「このドレス、もう飽きちゃったの。」

「すぐに新しい物を買おう、ついでにアクセサリーも─」

「お待ち下さい!この子は、つい最近ドレスを買い替えたばかりで─」

「うるさい!俺がいいと言ったらいいんだ、黙ってろ!」

「王子が決めた事に口を出すなんて…お姉様は、婚約者失格よ!王子…何故こんな人と婚約してるの?私の方が、あなたにお似合いなのに。」

「仕方ない…そういう決まりなんだ。」

 そう…私と王子は、生まれた時から一緒になる事が決まっていた。
 
 王子が生まれたその日に私が生まれ…そして成長した私の身体から、ある物が生み出された。
 それが、このお城と王子に必要な物だった。
 
 私はそのある物を、ちらりと横目で見た。

 伝説の聖剣─。

 見た目は、何て事ない普通の剣だ。

『つまらない剣だな…。まぁ、お前が生み出した剣だから納得だが。なんでもそれは、魔を払い幸運を呼び寄せる剣だそうだが…そんな物より、俺はお前の妹が欲しい。そちらの方が、俺にとっては余程価値がある。』

 私は、初めて王子と出会った時に言われたこの言葉が、今でも忘れられない。

 妹…私の義妹なのだが、私の婚約相手が王子と知るや否や、無理やりくっ付いてきたのだ。

 そしてその美しい顔で王子を虜にし、今では彼女の方こそが王子の本当の相手なのだと思われているくらいだ─。
 
「こんな生意気な人、一度城から追い出したら?そうしたら、きっと反省するはずよ。」

「そうだな、それがいい。おい、反省したら戻ってきてもいいぞ?まぁその間に、既にお前の居場所は無くなってるかも知れんがな。」
 
 そう…そんなに言うなら出て行くわよ、あの聖剣と共にね。
 あれは私が生み出した宝だから、返してもらってもいいわよね─。

※※※

 あの女、言われた通りに出て行ったな。
 
 あいつが勝手に城を出た事にして婚約を破棄し、妹の方と新しく婚約関係を結ぶか。
 
 しかしあいつ、わざわざ聖剣も持って行ったんだな。

「あんなガラクタより、王子にはもっと派手で豪華な剣がお似合いですよ。せっかくだから、新しい物を買いましょうよ!」

「そうだな、宝石が付いた目立つ物にしよう!」

 でも王が、あれの説明をしていた気がするが…まぁいいか。

 俺は彼女の言う通り、新しい剣を買うと…早速、その台座に飾った。

「素敵~!ねぇ王子、一度でいいから、私も剣を振るってみたいわ。」

「お前が…?まぁ、好きにしろ。」

 俺は剣を彼女に渡した。

「わぁ、意外と重い…やっぱり、もうお返し…あ、れ?やだ、剣が手から離れない!」 

「何だって!?」

「あ、熱い…手が燃えるように熱いわ!」

「大丈夫か!?お、おい…危ないから、剣を振り回すな!」

 何だ…何が起きてるんだ!?

 すると彼女が振り回した剣が…運悪く、俺の腹に刺さった。

「きゃ、きゃああぁ──!」

「い、痛い…助けてくれ!」

 すると、俺たちの叫び声を聞いた兵が駆けつけ…彼女をすぐに捕らえ、部屋から連れ出した。

 そして俺は、医者にその傷を診て貰う事になったのだが─。

※※※

「大変な事が起きたから戻ってきて欲しいと、城の使者からお願いされしぶしぶ戻ってみれば…こんな物を飾るからよ。」

 聖剣が置かれた台座には術がかけられていて…他の剣を置くと術が発動し、それを置いた者を排除しようとするのだ。

「私を城に迎えた時、王がそう言ってたじゃない。あなた、義妹に見とれて話をちゃんと聞かないから…そう言えばあの子、あなたを殺そうとした罪で、死罪になるそうね。」

 王子を刺した義妹は、それが王族に対する反逆行為だとみなされ、近く処刑される事になった。

「あの女の事は、もうどうでもいい!それより、俺の腹の傷だ!どうして一向に治らないんだ?」

 見れば彼のお腹の傷は、醜く腫れ上がり…どす黒い不気味な色に変わってしまって居る。

「きっとあの剣が、術によって魔剣へと変化したからでしょう。そしてその剣で傷を受けたから、いつまでも治らず、そんな状態に…。」

「こんな不気味な姿になっては、もう俺を幽閉するしかないと…そして、次期王は任せられないと王に言われたんだ。頼む…この傷を消してくれ。俺を助けてくれ…!」

 王子は泣いて訴えたが…私にも、それはどうする事も出来なかった─。

 そしてこのお城は弟君の第二王子が任される事になり…私は、彼の妃になる事が決まった。

 すると第二王子は、あの男に代わりこれまでの事を詫びた。
 そして、私と聖剣は必ず大事にすると、そう誓ってくれたのだ。

 天が選んだ運命の相手は本当は彼で、今までの事は彼と幸せになる為の布石に過ぎなかったと言うのだろうか…だとしたら、今度こそ私は幸せになりたい。

 そう思い、私は手にした聖剣を元の台座に飾った─。
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