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浮気者でろくでなしの婚約者を家から追い出したその日に、素敵な方と縁を結ぶ事が出来ました。
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「考え直してくれ!女遊びは、当分控えるから…な?」
「当分って何よ!私達、婚約してるのよ!?いいから、もう出て行って…あなたとは、婚約破棄よ!」
彼は、これまでの女遊びが祟り…彼のお父様に家を追い出され、私の家へと転がり込んできたのだ。
これには、私も困ってしまい…もう他の女に絶対に手を出さないなら…そういう条件で、婚約破棄もせず…彼を家に置く事にした。
だが彼は…私を裏切り、若く可愛いメイドに手を出していたのだ。
それに気づいた私は…もう彼に更生の余地はないと判断し、ここから追い出す事にしたのだ─。
※※※
「…これで、平穏な暮らしが戻ってくるわね─。」
去って行く彼の背中を、家の前で見送った私は…ホッと溜息をついた。
その時だった。
隣の家の門から…可愛らしい動物が顔を出し、私を見ているのに気付いた。
この子は…犬、にしては大きいような…。
まさか…狼?
するとその子は…尻尾を振り可愛らしい声を上げ、私に近づいて来た。
そういえば…この隣のお屋敷、少し前に誰かが越して来たわね。
彼の浮気騒ぎで、あまり気にする余裕がなかったけれど─。
すると、一人の美しい殿方が家から出て来て…その子の後に続き、私の元へやって来た。
「彼を追い出してくれて、本当にありがとう。この子と共に、君に感謝するよ─。」
何だろう…この方を見ていると、胸の高鳴りが止まらない。
この方が、キラキラと輝いて見える。
私の心は、どうしてしまったというの─!?
「あの…むしろ、私と同居人の喧嘩の声とか…うるさかったですよね?確か、ご丁寧_に挨拶に来て下さったそうで…。私は所用があり不在でしたので、彼が…同居者が対応したと話しておりました。」
「そうだったね。庭に出たら、その彼が出て行くのが見えて…これで、漸く俺に平穏な日々が訪れるよ。」
平穏って、一体どういう事?
彼は、一体この方に何をしたの─!?
※※※
あの後、立ち話も失礼だと思い…私は彼を家にお招きする事にした。
「それで…彼は、あなたに何をしたのですか?」
「実は…彼はかなりの動物嫌いらしくて─。何もしていないこの子に向かって、石やゴミを投げたり…酷い時には、毒の入った餌を食べさせ様としたんだ。更に、勝手に庭に入って来て花を折り、一緒に居た女に渡したりと…好き勝手庭を荒してね。せっかく俺もこの子も、この地が気に入ってやって来たと言うのに…。どうしたものかと困ってたところを、君が追い出してくれたんだ。」
あ、あの人…私だけでなく、隣人のこの方にまで不快な思いをさせていたの─!?
「本当に、申し訳ありません!これも全て、私の男を見る目が無いばっかりに…あなたにまでとんだご迷惑を─!」
「いや…悪いのはあの男だ、君が謝る事は無いよ。むしろ…君は、俺にとって必要な人なんだ─。」
「え…?」
その時、玄関のドアを激しく叩く音がして…私はビクリと肩を震わせた。
「おい、開けてくれ!やっぱり、もう少しここに居させてくれよ!」
あ、あの人…戻って来たの!?
「お金なら、渡したでしょう?そのお金で、宿屋に泊ればいいじゃない!もう少しだけと言って…あなた、そのまま居座る気でしょう?」
私は、ドア越しに返事をした。
「頼むよ~、俺とお前の仲だろう?」
「さっき、婚約破棄したでしょう!?これ以上、私を振り回すのは─」
「待って…ここは、俺に任せて。」
隣に立っていた彼が、私を制し…ドアを開けた。
「そうか、このまま帰ってくれ。」
「お前…隣の─!」
「これまで、あなたには随分と嫌がらせをされてきたが…いい加減、俺も我慢の限界だ。ここで大人しく帰らないなら…痛い目を見るぞ?」
「何…?言っておくが、俺は喧嘩は得意だぞ!?」
そう言って、元婚約者は彼に掴みかかろうとしたが…それを守ったのは、彼に寄り添っていた獣だった。
その子の身体は、人の背を遥かに超える程大きくなり…鋭い牙と爪で、元婚約者に襲い掛かったのだ。
すると、彼は情けない声を上げ…その場で腰を抜かし、地面を這いずる様に逃げて行った─。
「これでもう、あの男は来ないよ。」
「あの、この子は、一体…?」
「この子は…代々、俺の一族を守護している聖獣なんだよ。そして…この地に行きたいと言ったのも、この子なんだ。というのも…君が、とても清い心を持って居て…この地の精霊や守護神に好かれている魂を持って居るからだそうだ。君の傍は、とても居心地がいいとこの子が言っているよ。」
「えぇ…!?」
「そんな君に、いつか会ってみたいと…そして、話をしてみたいと俺は思って居たが、それが叶い嬉しいよ。そして、この子が言うには…俺と君は、どうも運命の相手というものらしいんだ。俺は、君と会ってそれを実感する事が出来た。君は…どうだろうか?」
「私は…あなたを初めて見た時、胸がときめくのを感じました。それは、恐らく恋という感情で…私も、あなたに惹かれたのだと思います。」
こうして私達は、互いの家を行き来する様になり…やがて家の間にあった塀は無くなり、私達は婚約…同じ敷地内で暮らす事となった。
あのどうしようもない婚約者を追い出したら…まさか、こんな素敵な方と縁を結ぶ事が出来るなんて…あの時、思い切って別れを決断し、本当に良かったわ─。
「当分って何よ!私達、婚約してるのよ!?いいから、もう出て行って…あなたとは、婚約破棄よ!」
彼は、これまでの女遊びが祟り…彼のお父様に家を追い出され、私の家へと転がり込んできたのだ。
これには、私も困ってしまい…もう他の女に絶対に手を出さないなら…そういう条件で、婚約破棄もせず…彼を家に置く事にした。
だが彼は…私を裏切り、若く可愛いメイドに手を出していたのだ。
それに気づいた私は…もう彼に更生の余地はないと判断し、ここから追い出す事にしたのだ─。
※※※
「…これで、平穏な暮らしが戻ってくるわね─。」
去って行く彼の背中を、家の前で見送った私は…ホッと溜息をついた。
その時だった。
隣の家の門から…可愛らしい動物が顔を出し、私を見ているのに気付いた。
この子は…犬、にしては大きいような…。
まさか…狼?
するとその子は…尻尾を振り可愛らしい声を上げ、私に近づいて来た。
そういえば…この隣のお屋敷、少し前に誰かが越して来たわね。
彼の浮気騒ぎで、あまり気にする余裕がなかったけれど─。
すると、一人の美しい殿方が家から出て来て…その子の後に続き、私の元へやって来た。
「彼を追い出してくれて、本当にありがとう。この子と共に、君に感謝するよ─。」
何だろう…この方を見ていると、胸の高鳴りが止まらない。
この方が、キラキラと輝いて見える。
私の心は、どうしてしまったというの─!?
「あの…むしろ、私と同居人の喧嘩の声とか…うるさかったですよね?確か、ご丁寧_に挨拶に来て下さったそうで…。私は所用があり不在でしたので、彼が…同居者が対応したと話しておりました。」
「そうだったね。庭に出たら、その彼が出て行くのが見えて…これで、漸く俺に平穏な日々が訪れるよ。」
平穏って、一体どういう事?
彼は、一体この方に何をしたの─!?
※※※
あの後、立ち話も失礼だと思い…私は彼を家にお招きする事にした。
「それで…彼は、あなたに何をしたのですか?」
「実は…彼はかなりの動物嫌いらしくて─。何もしていないこの子に向かって、石やゴミを投げたり…酷い時には、毒の入った餌を食べさせ様としたんだ。更に、勝手に庭に入って来て花を折り、一緒に居た女に渡したりと…好き勝手庭を荒してね。せっかく俺もこの子も、この地が気に入ってやって来たと言うのに…。どうしたものかと困ってたところを、君が追い出してくれたんだ。」
あ、あの人…私だけでなく、隣人のこの方にまで不快な思いをさせていたの─!?
「本当に、申し訳ありません!これも全て、私の男を見る目が無いばっかりに…あなたにまでとんだご迷惑を─!」
「いや…悪いのはあの男だ、君が謝る事は無いよ。むしろ…君は、俺にとって必要な人なんだ─。」
「え…?」
その時、玄関のドアを激しく叩く音がして…私はビクリと肩を震わせた。
「おい、開けてくれ!やっぱり、もう少しここに居させてくれよ!」
あ、あの人…戻って来たの!?
「お金なら、渡したでしょう?そのお金で、宿屋に泊ればいいじゃない!もう少しだけと言って…あなた、そのまま居座る気でしょう?」
私は、ドア越しに返事をした。
「頼むよ~、俺とお前の仲だろう?」
「さっき、婚約破棄したでしょう!?これ以上、私を振り回すのは─」
「待って…ここは、俺に任せて。」
隣に立っていた彼が、私を制し…ドアを開けた。
「そうか、このまま帰ってくれ。」
「お前…隣の─!」
「これまで、あなたには随分と嫌がらせをされてきたが…いい加減、俺も我慢の限界だ。ここで大人しく帰らないなら…痛い目を見るぞ?」
「何…?言っておくが、俺は喧嘩は得意だぞ!?」
そう言って、元婚約者は彼に掴みかかろうとしたが…それを守ったのは、彼に寄り添っていた獣だった。
その子の身体は、人の背を遥かに超える程大きくなり…鋭い牙と爪で、元婚約者に襲い掛かったのだ。
すると、彼は情けない声を上げ…その場で腰を抜かし、地面を這いずる様に逃げて行った─。
「これでもう、あの男は来ないよ。」
「あの、この子は、一体…?」
「この子は…代々、俺の一族を守護している聖獣なんだよ。そして…この地に行きたいと言ったのも、この子なんだ。というのも…君が、とても清い心を持って居て…この地の精霊や守護神に好かれている魂を持って居るからだそうだ。君の傍は、とても居心地がいいとこの子が言っているよ。」
「えぇ…!?」
「そんな君に、いつか会ってみたいと…そして、話をしてみたいと俺は思って居たが、それが叶い嬉しいよ。そして、この子が言うには…俺と君は、どうも運命の相手というものらしいんだ。俺は、君と会ってそれを実感する事が出来た。君は…どうだろうか?」
「私は…あなたを初めて見た時、胸がときめくのを感じました。それは、恐らく恋という感情で…私も、あなたに惹かれたのだと思います。」
こうして私達は、互いの家を行き来する様になり…やがて家の間にあった塀は無くなり、私達は婚約…同じ敷地内で暮らす事となった。
あのどうしようもない婚約者を追い出したら…まさか、こんな素敵な方と縁を結ぶ事が出来るなんて…あの時、思い切って別れを決断し、本当に良かったわ─。
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