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幼馴染の助言で婚約破棄を回避しようとした私ですが…彼女には、ある秘密がありました。
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「あいつなど、絶対好きになるか!なのに…ベタベタくっ付いて来て、鬱陶しい。」
不機嫌な彼と、それをなだめる従者─。
やはり彼は、私の事が嫌いだったのね。
家同士の約束とはいえ、私はあなたの事を…密かに想っていたのに。
やはりこんな私が相手では、ご不満だったんでしょう─。
※※※
「自分を好きでもない男と一緒になるなんて、そんなの虚しいわ。あなたには、もっとお似合いの方が居るわよ。ほら、この前私が紹介してあげた方はどう?」
幼馴染の言葉に、私は困った顔をして見せた。
「何だったら、私が彼と婚約してもいいのよ?あの人…私は嫌いじゃないわ。そもそもあんな無口な人、あなたには合わないのよ。」
確かに、この子のようなお喋りで明るい子の方が、彼にはお似合いかもしれないけど…だけど─。
「じゃあ…今のあなたの気持ち、手紙にして書いたら?何なら、私が渡してあげてもいいわよ?」
そうか…手紙なら、私も思った事が書けるわ。
そして幼馴染に手紙を託し数日後…彼が、私を避けるようになった。
私と顔を合わせると、すぐに目を反らしその場を去って行くのだ。
そうか…私は、そこまであなたに嫌われてたのね。
これはついに、婚約破棄される時が来たんだわ─。
※※※
あの子ったら、あんなに落ち込んで…彼の事がそんなに好きなのね。
でももう、その想いは通じないわ。
だってあの手紙、私が書き換えて彼に渡したから─。
最初に彼を好きになったのは私、なのに…一足違いで、あなたが彼の婚約者になってしまった。
あの子は彼が好き、そして彼だって…。
でも幸いな事に、二人の気持ちはすれ違って居る。
それもこれも、あの子が─。
だから、私がつけ入る隙はどれだけでもあった。
手紙を提案したのは、私と彼女は字が良く似ていたからだ。
学園の教師だって、たまに彼女が書いた物を私の物だと思い渡して来るくらいだもの。
そして私が渡した手紙を読んで、彼は険しい顔をしていた。
それから数日後、私は彼を学園の裏庭に呼び出した─。
※※※
「あの子の気持ち、お分かりになったでしょう?早く婚約破棄して差し上げたら?そしてあなたは、私を好きになればいいのよ。」
「前にも言ったはずだ、お前など絶対好きになるかと。もう俺にベタベタ付きまとうな、鬱陶しい。」
「あなた、手紙を読んだでしょ!?」
「あぁ…彼女が俺を好きじゃない、婚約破棄したいと思ってると。」
「じゃあ、別れてよ!」
「でも一つ、おかしな事に気付いた。それで、以前彼女がくれた手紙と比べてみたら…そこに書かれていた文字はそっくりで、文章も違和感が無かった。」
「じゃあ、いいじゃない!」
「違っていたのは、手紙を書く時に使われたインクだ。君から渡された手紙の文字からは…俺の魔力が感じられなかった。」
「え…?」
「以前、俺が彼女にインクをあげた事があって…彼女はそれを使い、手紙や文書を書いていたんだ。持ち主の魔力が、物に籠ると言うのは本当だな…君から受け取った手紙からは、君の魔力しか感じられなかったよ。」
「そんな…。」
「そして、もう一つ分かった事が…。彼女は、俺との婚約の話が出てからおかしな病に罹り、話す事が出来なくなったそうだが…それもお前の仕業だったんだ。お前が魔力で、彼女の声を封じていたんだ。彼女を話せなくして、俺との仲を拗れさせようとするのが目的だったんだろう?」
そ、そこまでバレて…!?
私は怒りの表情を浮かべる彼が恐ろしくて、一歩後退った。
「逃がしはしないわ!」
「あなた、声が─!?」
※※※
「彼が…私にかけられた魔法を解いてくれたの。最近よそよそしかったのは、あなたにかけられた魔法を解く方法を調べるのに忙しかったのと…自分のせいで、私をこんな目に遭わせてしまったと、自分を責めていたからよ。でも、悪いのは彼じゃない…あなたよ!」
「な、何よ…いつも私に甘えてばかりだった癖に、偉そうに…!」
「そうね…私、幼馴染のあなたに甘えすぎてた。だから私、今ここでちゃんと伝えるわ。私は彼が好き、卑怯者のあなたには渡しません!」
「俺は最初から、お前のような女は好きじゃないと言ってきた。俺が好きなのは彼女だ…婚約したいのも、この先共に生きて行きたいのも。」
すると幼馴染は…私を突き飛ばし逃げようとしたが彼に引き倒され、そして駆けつけた教師たちによって連れて行かれた─。
それから私と彼は、以前の事が嘘のように仲良くなった。
これには彼の従者や、私たちを心配していた互いの両親も安心し喜んでくれた。
一方私たちの仲を引き裂こうとした幼馴染は…魔力を悪用し人を傷つけたとして、牢へと送られた。
最近になり、あの行いを後悔している、だからここから助けて欲しいと、私の元に手紙が来たけど…私はそれを読んで、すぐに破り捨てた。
…今更謝られても。
それにもう、彼の目には私しか映って居ないのだから…そこから出て来られては、邪魔なのよ─。
不機嫌な彼と、それをなだめる従者─。
やはり彼は、私の事が嫌いだったのね。
家同士の約束とはいえ、私はあなたの事を…密かに想っていたのに。
やはりこんな私が相手では、ご不満だったんでしょう─。
※※※
「自分を好きでもない男と一緒になるなんて、そんなの虚しいわ。あなたには、もっとお似合いの方が居るわよ。ほら、この前私が紹介してあげた方はどう?」
幼馴染の言葉に、私は困った顔をして見せた。
「何だったら、私が彼と婚約してもいいのよ?あの人…私は嫌いじゃないわ。そもそもあんな無口な人、あなたには合わないのよ。」
確かに、この子のようなお喋りで明るい子の方が、彼にはお似合いかもしれないけど…だけど─。
「じゃあ…今のあなたの気持ち、手紙にして書いたら?何なら、私が渡してあげてもいいわよ?」
そうか…手紙なら、私も思った事が書けるわ。
そして幼馴染に手紙を託し数日後…彼が、私を避けるようになった。
私と顔を合わせると、すぐに目を反らしその場を去って行くのだ。
そうか…私は、そこまであなたに嫌われてたのね。
これはついに、婚約破棄される時が来たんだわ─。
※※※
あの子ったら、あんなに落ち込んで…彼の事がそんなに好きなのね。
でももう、その想いは通じないわ。
だってあの手紙、私が書き換えて彼に渡したから─。
最初に彼を好きになったのは私、なのに…一足違いで、あなたが彼の婚約者になってしまった。
あの子は彼が好き、そして彼だって…。
でも幸いな事に、二人の気持ちはすれ違って居る。
それもこれも、あの子が─。
だから、私がつけ入る隙はどれだけでもあった。
手紙を提案したのは、私と彼女は字が良く似ていたからだ。
学園の教師だって、たまに彼女が書いた物を私の物だと思い渡して来るくらいだもの。
そして私が渡した手紙を読んで、彼は険しい顔をしていた。
それから数日後、私は彼を学園の裏庭に呼び出した─。
※※※
「あの子の気持ち、お分かりになったでしょう?早く婚約破棄して差し上げたら?そしてあなたは、私を好きになればいいのよ。」
「前にも言ったはずだ、お前など絶対好きになるかと。もう俺にベタベタ付きまとうな、鬱陶しい。」
「あなた、手紙を読んだでしょ!?」
「あぁ…彼女が俺を好きじゃない、婚約破棄したいと思ってると。」
「じゃあ、別れてよ!」
「でも一つ、おかしな事に気付いた。それで、以前彼女がくれた手紙と比べてみたら…そこに書かれていた文字はそっくりで、文章も違和感が無かった。」
「じゃあ、いいじゃない!」
「違っていたのは、手紙を書く時に使われたインクだ。君から渡された手紙の文字からは…俺の魔力が感じられなかった。」
「え…?」
「以前、俺が彼女にインクをあげた事があって…彼女はそれを使い、手紙や文書を書いていたんだ。持ち主の魔力が、物に籠ると言うのは本当だな…君から受け取った手紙からは、君の魔力しか感じられなかったよ。」
「そんな…。」
「そして、もう一つ分かった事が…。彼女は、俺との婚約の話が出てからおかしな病に罹り、話す事が出来なくなったそうだが…それもお前の仕業だったんだ。お前が魔力で、彼女の声を封じていたんだ。彼女を話せなくして、俺との仲を拗れさせようとするのが目的だったんだろう?」
そ、そこまでバレて…!?
私は怒りの表情を浮かべる彼が恐ろしくて、一歩後退った。
「逃がしはしないわ!」
「あなた、声が─!?」
※※※
「彼が…私にかけられた魔法を解いてくれたの。最近よそよそしかったのは、あなたにかけられた魔法を解く方法を調べるのに忙しかったのと…自分のせいで、私をこんな目に遭わせてしまったと、自分を責めていたからよ。でも、悪いのは彼じゃない…あなたよ!」
「な、何よ…いつも私に甘えてばかりだった癖に、偉そうに…!」
「そうね…私、幼馴染のあなたに甘えすぎてた。だから私、今ここでちゃんと伝えるわ。私は彼が好き、卑怯者のあなたには渡しません!」
「俺は最初から、お前のような女は好きじゃないと言ってきた。俺が好きなのは彼女だ…婚約したいのも、この先共に生きて行きたいのも。」
すると幼馴染は…私を突き飛ばし逃げようとしたが彼に引き倒され、そして駆けつけた教師たちによって連れて行かれた─。
それから私と彼は、以前の事が嘘のように仲良くなった。
これには彼の従者や、私たちを心配していた互いの両親も安心し喜んでくれた。
一方私たちの仲を引き裂こうとした幼馴染は…魔力を悪用し人を傷つけたとして、牢へと送られた。
最近になり、あの行いを後悔している、だからここから助けて欲しいと、私の元に手紙が来たけど…私はそれを読んで、すぐに破り捨てた。
…今更謝られても。
それにもう、彼の目には私しか映って居ないのだから…そこから出て来られては、邪魔なのよ─。
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