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あなたの愛はいつも私を傷つける…だって本当は、出来損ない聖女だと嘲笑ってる癖に─。
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「姉なんだから、お前にだって出来る。否…姉の癖に、出来なきゃおかしい。」
「…申し訳ありません。」
「謝って欲しいんじゃない…早く妹の様な立派な聖女になれと、そう言ってるんだ。全く…それくらい、何で分からないんだ。」
彼は、大きな溜息をついた。
それにすら、私の身体はビクリと反応する。
「おい、泣くなよ…。俺は婚約者だから、お前の為に、あえて厳しく言ってるだけだ。これも、俺の愛だ─。」
※※※
私と妹は生まれながらに神の声が聞こえ、物心ついた時には既に神殿に預けられていた。
なのに、いつからだろう…。
私と妹に、天と地程の力の差がついたのは─。
治癒能力、結界を張る能力、加護を授ける力…妹はどれも優れていた。
私は…神の声は聞こえるがそれだけで、他の力は目覚めずにいた。
だから最近では、妹は聖女として、私はその付き人として周りに認識される事が多くなった。
でも、私の婚約者は違った。
お前だっていつか力に目覚める、落ち込む私をそう励ましてくれた。
そう…最初は優しく励ましてくれていたのだ。
でも今では…姉の癖にとか、出来なきゃおかしいとか…彼の言葉に、棘の様なものを感じる。
私の心が、卑屈だから、そう感じるの…?
彼の愛を疑うなど…私は、何て捻くれ者なの…!
そう、色々思い悩む内…私は、とうとう神の声すら聞こえなくなった─。
そんなある日の事─。
私は神殿の隅で、彼と妹が話す姿を偶然見かけた。
「…あいつは、すぐ落ち込むんだ。でも、それを見るのが楽しくて。」
「えぇ?私は好きよ…あなたの言葉攻め。ベッドの上で、毎日の様に言われたいくらいね。」
「そりゃあ…君には愛があるから。」
「あら、お姉様にもあるんでしょ?」
「フッ、そう言ってるだけだ。…あんな無能の出来損ない聖女、誰が愛するか。全く…俺の父があんな夢を見なければ、あいつと婚約などしなかったのに!」
「お姉様がいずれ私を超え、大聖女になる夢?そんなの、ある訳ないのにねぇ。だからさっさと婚約破棄して、私のものになってよ~。」
この二人…まさか、そういう関係だったなんて!
そしてやはり、彼の言葉に私への愛など微塵もなかったんだわ…!
私は、フラフラと神殿から出て行った─。
※※※
「あいつ、まだ見つからないな。」
「もう、どこかで野垂れ死にしてるかもね。でも、その方が良いわ…。だってそうなれば、あなたは完全に私のものになるんだし。それに今は、お姉様に構ってる暇はないのよ。というのも、隣国の王子がこの地を視察に訪れてね…滞在中は、私が加護を授ける予定だから─。」
その数日後、王子が神殿に到着─。
妹は、皆の前で王子に加護を授ける運びとなった。
ところが…彼女の様子がおかしい。
王子を前に、冷や汗を流し焦っている。
「も、申し訳ありません!加護は、またの機会に…。今日は日が良くないと、神がそう申してまして…。」
「…俺の国の神官長と聖女は、今日が一番いい日と言ったが?」
俺は妹を庇う為、王子の元に向かった。
「聖女様は、体調が優れない様で…ここは婚約者である俺に免じ、何卒お許しを!」
「いくら待っても…今の妹では、加護など付けられないわ。彼女は姉の婚約者を寝取り奪うなど、聖女にあるまじき行為をした者ですから─。」
※※※
「お前、今までどこに…!?」
「あなたたちの裏切りを知った私は…傷ついた心を癒す為、一人旅に出ました。そこで…こちらの王子に拾われ、隣国の聖女としての役割を与えられたんです。」
「お前の様な、出来損ないが…?」
「あなたの元を離れたおかげかしら…?言葉の呪縛から心が解放された私は、自然の中でゆったり過ごす内に神の声がまた聞こえるようになり、眠っていた力が目覚めたの。そして今や私は、妹を超える力を持っている。逆に、妹は全ての力を失い…今は神の声も聞こえない。そうよね?そうじゃないなら…改めて王子に加護を授けて見せてよ。」
私の言葉に、妹は涙を流し…フルフルと首を振った。
「それは、出来ないと捉えていいんだな?王子の俺に嘘を付くとは…何と無礼な!この婚約者も、聖女同様嘘付きだ。二人まとめて捕えろ…不敬罪で罰する!」
二人は慌てて逃げようとしたが、王子の声で集まった兵により捕らえられた。
そして妹は、聖女の座を剥奪され…神殿の地下に、一生幽閉の身となった。
また、元婚約者は牢に幽閉の後、この国を追放され…僻地へと送られた。
私はというと…隣国の王子の元、大聖女として国を守る手伝いをしている。
私の心を縛る、呪いの様な偽りの愛は消えた…。
だからこれからは、自分の心を大事に…そして、一生懸命自分の役割を果たし生きて行くわ─。
「…申し訳ありません。」
「謝って欲しいんじゃない…早く妹の様な立派な聖女になれと、そう言ってるんだ。全く…それくらい、何で分からないんだ。」
彼は、大きな溜息をついた。
それにすら、私の身体はビクリと反応する。
「おい、泣くなよ…。俺は婚約者だから、お前の為に、あえて厳しく言ってるだけだ。これも、俺の愛だ─。」
※※※
私と妹は生まれながらに神の声が聞こえ、物心ついた時には既に神殿に預けられていた。
なのに、いつからだろう…。
私と妹に、天と地程の力の差がついたのは─。
治癒能力、結界を張る能力、加護を授ける力…妹はどれも優れていた。
私は…神の声は聞こえるがそれだけで、他の力は目覚めずにいた。
だから最近では、妹は聖女として、私はその付き人として周りに認識される事が多くなった。
でも、私の婚約者は違った。
お前だっていつか力に目覚める、落ち込む私をそう励ましてくれた。
そう…最初は優しく励ましてくれていたのだ。
でも今では…姉の癖にとか、出来なきゃおかしいとか…彼の言葉に、棘の様なものを感じる。
私の心が、卑屈だから、そう感じるの…?
彼の愛を疑うなど…私は、何て捻くれ者なの…!
そう、色々思い悩む内…私は、とうとう神の声すら聞こえなくなった─。
そんなある日の事─。
私は神殿の隅で、彼と妹が話す姿を偶然見かけた。
「…あいつは、すぐ落ち込むんだ。でも、それを見るのが楽しくて。」
「えぇ?私は好きよ…あなたの言葉攻め。ベッドの上で、毎日の様に言われたいくらいね。」
「そりゃあ…君には愛があるから。」
「あら、お姉様にもあるんでしょ?」
「フッ、そう言ってるだけだ。…あんな無能の出来損ない聖女、誰が愛するか。全く…俺の父があんな夢を見なければ、あいつと婚約などしなかったのに!」
「お姉様がいずれ私を超え、大聖女になる夢?そんなの、ある訳ないのにねぇ。だからさっさと婚約破棄して、私のものになってよ~。」
この二人…まさか、そういう関係だったなんて!
そしてやはり、彼の言葉に私への愛など微塵もなかったんだわ…!
私は、フラフラと神殿から出て行った─。
※※※
「あいつ、まだ見つからないな。」
「もう、どこかで野垂れ死にしてるかもね。でも、その方が良いわ…。だってそうなれば、あなたは完全に私のものになるんだし。それに今は、お姉様に構ってる暇はないのよ。というのも、隣国の王子がこの地を視察に訪れてね…滞在中は、私が加護を授ける予定だから─。」
その数日後、王子が神殿に到着─。
妹は、皆の前で王子に加護を授ける運びとなった。
ところが…彼女の様子がおかしい。
王子を前に、冷や汗を流し焦っている。
「も、申し訳ありません!加護は、またの機会に…。今日は日が良くないと、神がそう申してまして…。」
「…俺の国の神官長と聖女は、今日が一番いい日と言ったが?」
俺は妹を庇う為、王子の元に向かった。
「聖女様は、体調が優れない様で…ここは婚約者である俺に免じ、何卒お許しを!」
「いくら待っても…今の妹では、加護など付けられないわ。彼女は姉の婚約者を寝取り奪うなど、聖女にあるまじき行為をした者ですから─。」
※※※
「お前、今までどこに…!?」
「あなたたちの裏切りを知った私は…傷ついた心を癒す為、一人旅に出ました。そこで…こちらの王子に拾われ、隣国の聖女としての役割を与えられたんです。」
「お前の様な、出来損ないが…?」
「あなたの元を離れたおかげかしら…?言葉の呪縛から心が解放された私は、自然の中でゆったり過ごす内に神の声がまた聞こえるようになり、眠っていた力が目覚めたの。そして今や私は、妹を超える力を持っている。逆に、妹は全ての力を失い…今は神の声も聞こえない。そうよね?そうじゃないなら…改めて王子に加護を授けて見せてよ。」
私の言葉に、妹は涙を流し…フルフルと首を振った。
「それは、出来ないと捉えていいんだな?王子の俺に嘘を付くとは…何と無礼な!この婚約者も、聖女同様嘘付きだ。二人まとめて捕えろ…不敬罪で罰する!」
二人は慌てて逃げようとしたが、王子の声で集まった兵により捕らえられた。
そして妹は、聖女の座を剥奪され…神殿の地下に、一生幽閉の身となった。
また、元婚約者は牢に幽閉の後、この国を追放され…僻地へと送られた。
私はというと…隣国の王子の元、大聖女として国を守る手伝いをしている。
私の心を縛る、呪いの様な偽りの愛は消えた…。
だからこれからは、自分の心を大事に…そして、一生懸命自分の役割を果たし生きて行くわ─。
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