魔族令嬢の私を恐ろしい化け物に仕立て上げた罪深き悪女は、罰を受けます。

coco

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<前編>

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魔族まぞくとはおそろしいものだ…君とは婚約破棄こんやくはきするから、ここを出て行け!」

「私があなたに、何をしたと言うんです?」

「今まで何もしてなくても、これから悪さをするかもしれないでしょ?魔族なんて気持ち悪いのよ。今は私たちと同じ見た目をしてても、何をきっかけに本性ほんしょうを現すか…。」

「俺はそんな女から彼女を守るんだ!」

「何て頼りになるの!」

 2人は私の目の前で、熱い抱擁ほうようを交わした。

「…さようなら。」

 私の言葉は彼らにはもう聞こえていないようで、振り返る事も無かった─。

※※※

 魔族の血が流れる私は、婚約者に捨てられた。
 異世界から来た女によって、魔族は恐ろしいものと信じ込まされたのがその原因だった。

 この女、何でもそういうゲームとやらに夢中になっていたらしく、そこには私たちのご先祖様が何体も登場していたらしい。

 その凶暴きょうぼうさや残酷ざんこくさを、彼女は私の婚約者に一生懸命に説明した。
 最初は半信半疑はんしんはんぎの彼だったけど、あなたの為を思って言ってるとか、あなたが心配だから言ってるなどとあの女に言われる内に、次第しだいに耳を傾けるようになっていった。

 そして今では魔族は恐ろしいものだと、私を見て震えあがるまでに…。
 
 そんなのははるか昔の話よ?

 勇者様がこの世界に現れて、魔王と悪い魔族を倒した。
 残ったのは人間が大好きな、人畜無害じんちくむがいな魔族だけ。

 そしてその末裔まつえいの1人が私だ。

 あれはあの女の可愛さにだまされ、信じ込まされたようなものね。
 
 それにしても小心者しょうしんもののくせに、何が彼女を守るよ。
 私や魔族よりも、その女の方がよっぽど恐ろしいのに─。

※※※

 この世界に来て、当たり前のように魔族の末裔が居るのは驚いたわ。
 そんなのが人間の、しかも美形の金持ちと婚約してるだなんて!

 私はこの人に見捨てられたら行く所がないし、きっと生きていけない。

 だからあの化け物女を追い出して、私がその後釜あとがまに収まれば一生楽に暮らしていける。

 その為にいかに魔族が恐ろしいかを彼にり込ませたんだけど、思いのほか上手くいったわ。
 
 彼はこの地の領主をやってるそうで、この地にはまだあの女みたいな魔族の末裔が住んでるらしい。
 せっかくだから、そいつらも追い出したらいいのに。
 
 そうだ、いい事を思いついた。
 恐ろしい化け物を追い出した聖女…この先の私の立ち位置は、こんな所でどうかしら─。

「魔族の瘴気しょうきで、この地が汚染おせんされる?」

「最近、作物が採れなくなったと言ってましたでしょう?あれは魔族の放つ瘴気で、土が汚染されたのが原因です。私がやってたゲームにそういう描写びょうしゃがありました。きっと魔族の末裔にもそういう事は可能です、そんな奴らは他の地へ追い出すべきです!」
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