愛の誓いを破り私を捨て妹を選んだ婚約者…愛しかない彼女では、あなたには役不足でした。

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愛の誓いを破り私を捨て妹を選んだ婚約者…愛しかない彼女では、あなたには役不足でした。

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『君をずっと愛すると誓う…だから、俺と婚約してくれ!』

 そんなあなたは、今まさにその誓いを破ろうとしている。

「あいつにこんな美しい妹が居たとは…もっと早く知ってれば、あいつと婚約などしなかった。」

「お姉様が私の美しさをねたみ虐めるから…そのせいで私は家を出された。でも、やっとこの地へ帰って来た。それはあなたと出会い、あなたに愛される為だったのよ。」

「可愛い事を…!」

 婚約者は妹抱き締め、そっとベッドに押し倒した。

「お姉様なんて捨てて?私がお姉様の分まであなたを愛すから…いいでしょう?」

「あぁ、あいつとは婚約破棄だ。そして俺は、君を新たな婚約者に迎える。」

 …これで誓いは破られた。

 私を捨て妹を選ぶなど…そんな愛しかない女では、あなたには役不足よ─。

※※※

「…そういう訳で、もうこの家から出て行って欲しいんだ。」

「お姉様がいては私たちは結ばれない、あなたは邪魔者なの!」

「…分かったわ。彼とはもう婚約破棄します。でも…どうなっても知らないから。」

 そう言って、あいつは家を出て行った。

「何だあの態度は…せっかく慰謝料を渡してやったのに!」

「ただの嫉妬よ…別れた女の事など、もう気にしないで。」

 それもそうだ、今は目の前に居る彼女を大事にしなければ─。

 ところがそれから暫くし、俺は自身の身体の異変に気付いた。

 体重が落ち、肌の張りや艶もなくなり…何だか、昔の自分に戻ったようだ。

 俺は子供の頃、体が弱かった。
 それがいつの間にやら健康体になり、病弱だった自分などもう遠い過去の事…今の今まで忘れていたくらいだ。

 その後も体はやせ細っていき、その変化に妹も気づいたようだ。

「あなたの身体に、いくら治療費がかかってるの?私はあなたがお金持ちだから近づいたのに…どんどん財産が減って行って!それに私は、逞しい男が好きなの…こんなひ弱な男、好みじゃない!」

 妹は俺を見捨て家を出て行き、俺はこの家に一人きりになった。

 その間にも体が弱って行くのが止められず、俺はとうとうベッドの上で一日を過ごす事に。

 そんな中、俺はある事を思い出していた。

『あの子はあなたにぴったりの婚約者よ、生命力たっぷりで神に愛された娘…あの子を傍に置けば、あなたは幸せになれる。』

『誓いを立てれば、神のご加護が─。』

 亡き母と、俺が捨てた元婚約者の言葉だ。

 …だからあいつが俺の婚約者で、俺はあいつに誓いを…そしてここまで元気になれたのか。
 そんな彼女を、俺は…!

「お邪魔してます。」

※※※

「お前…どうしてここに?もしや、俺と復縁を!?妹と別れた今なら、お前とやり直せるぞ!」

「復縁…?私はただ、妹を迎えに来ただけです。居ないなら…もうここに用はないわ。」

「迎えにって…また虐める為か!?」

「違いますよ、妹を修道院に送る手筈が整いましたので…。簡単に逃げてしまえるような追放先は駄目です、もっと厳しい場所に置かねば。あの子は私と違い、人の命を縮めるという厄介な力がある。そしてそれを自覚しながら、何も対処せず自由に生きている。むしろ、嫌いな人間に近づきわざと命を縮めたり…そんな悪女、野放しに出来ません。」

「もしや、俺の身体も…!?」

「私との誓いを破り神の加護を失った上に、そんな妹を傍に置くから…。偽りの愛しか持たないあの子では、あなたに役不足…むしろあの子は、あなたにとって一番選んではならない相手だった。」

「ならば、お前と復縁し、もう一度誓いを立てる。それで俺を─」

「それは無理です。私はもう、あなたの事をこれっぽっちも愛していないので。それに、一度裏切った者に救いの手を伸ばす程、神は都合のいい存在ではありません。」

「そんな…!」

 その後逃げた妹は無事見つかり、修道院の地下に幽閉された。
 厳重な監視の元、彼女はもう逃げる事は出来ない。

 病に臥せっていた彼は一命を取り留めたものの、病の後遺症か天罰か…廃人同然となってしまった。
 結果好調だった事業は他人の手に渡り、やがて彼は財産も奪われ家から追い出される事に─。

 今は田舎の療養所で、ひっそりと余生過ごしているそうだけど…その命の灯も、長くはないだろう。

 元々彼は、私なしでは人の半分も生きられなかった。
 彼は今、本来の運命を辿っているのだ。

 愛の誓いを破り私を捨て、あんな死神のような悪女を選ぶから…それとも、こうなる事があなたの運命だった?
 だとしたら、自業自得ね─。
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