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私を貧乏人と見下し金持ちの娘を選んだ婚約者ですが…後にそれを後悔する事となりました。
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「お前みたいな貧乏人の婚約者とは、もう婚約破棄だ!」
自分の横に座る女性の肩を抱き、私にそう言い放った婚約者。
「ここにいる彼女の家はな、代々この領地を治めて来た領主。俺は、そんな家の一人娘の彼女に見初められてな…そして気づいたんだ。俺にふさわしいのは、彼女のような名家のご令嬢だと。」
「聞けば、あなたは彼の家でお世話になってる身なのでしょう?そんな貧乏人と婚約させられたなんて、彼が可哀そうよ。私と彼が結ばれるに為は、あなたの存在が邪魔なの。もう、彼の家を出て行ってくれない?」
「これは手切れ金だ、受け取れ。俺に捨てられた上に行き場も無くなるんじゃ、流石に惨めだからな。」
そう言って、彼は私に札束を投げつけると…彼女と腕を組み部屋を出て行った。
私は床に散らばったお金を拾い集め、溜息をついた。
私が、この家で世話になる貧乏人ですって?
そんな事、いつ私が言いました?
勝手に勘違いして私を見下し、あのような性格の悪い女を選ぶなど…実に愚かね─。
※※※
「婚約、おめでとう。君が次の領主になるのか?」
「ええ。いずれ彼女の父に代わり、俺がこの地を立派に治めてみせます。」
婚約発表の為にこんな盛大なパーティーを開いてくれるなんて…さすが領主様の家だ。
こうして次期領主とちやほやされ、多くの者から祝福されるのはいい気分だな。
するとその会場に、俺の父親が焦った表情で駆けつけて来た。
「お前…あの娘と婚約破棄したと言うのは本当だったんだな!」
「一体どうしたんです、そんなに慌てて?婚約破棄した挙句、家から追い出してやりましたよ?父上もお荷物が減って、さぞや嬉しいでしょう?」
「お前というやつは、何て馬鹿な事を…。」
父は、その場にガクリと崩れ落ちた。
するとその父の後ろから、一際豪華なドレスを纏った娘が歩いて来るのが見えた。
…この娘、すごい数の宝石を身に着けてるな。
ドレスにも、あちこち宝石がちりばめられている。
これは、とんでもない金持ちの家の娘だ。
それこそ、領主の娘である彼女が見劣りしてしまう。
一体、どこのご令嬢だ?
「婚約、おめでとうございます。」
「お、お前、なぜこんな所に?その宝石は、何だ!?」
それは、俺が捨てたはずのあの女だった。
※※※
「ああ、この宝石ですか?これは私の所有する山から採れる物ですわ。これくらいの宝石、ゴロゴロと出てきますけど?」
「何だと!?」
「実は私、鉱山を持つ家の一人娘なんですが…ある日、あなたの家を訪ねよと神託を受けましてね。それをあなたのお父上にお話しした所、私の実家の事を知ったあなたのお父上が、是非私をあなたの婚約者にと願われ…それであの家に住む事と、この婚約が決まったのです。でも…肝心のあなたが、私と結ばれるのをお望みではなかったから。」
「い、いや、それはだな─」
「今日は、こちらをお返しに来たのです。あなたが手切れ金だと、私に渡したお金。私には、こんなお金は必要ないので。」
「な、なぁ…俺ともう一度、やり直さないか?お前がそんな金持ちと知ってたら、俺は─」
「ちょ、ちょっと…何を言ってるのよ!」
「うるさい!だって…あの宝石を見て見ろ。どう見てもお前より、彼女の方が大金持ちだ。」
そして、二人はその場で喧嘩を始めたが…私はそれを冷ややかな目で見た。
「ご冗談を…私には、もう素敵な方がみえますから。」
「用事は、済んだかい?」
「まさか、この方は…この国の第一王子?何故王子と一緒に居るんだ!?」
「この方には、先程この屋敷に来る際に偶然にも見初められまして。私が受けたご神託の相手は、あなたでなく彼だったんですね。」
「お前が、見初められた!?」
「昨日神官長が神託を受けてね。この領地の領主の娘が、婚約を発表するパーティを開くが…そこに、俺の未来の妃が訪れると。その娘は、王家を更に豊かにしてくれる特別な財力を持ち…しかも、立派な世継ぎを埋める健康な体、妃としての賢さを備えた娘だと言うじゃないか。」
「特別、と言えるのか分かりませんが…私の家の鉱山で採れる宝石には、全て魔力が備わってましてね。その価値は、普通の宝石と比較にならない程なのです。」
「そ、そんな娘を、俺は手放してしまったのか…。」
そして彼は、彼の父同様にその場に崩れ落ちた。
「私の家は…もうこの領地での宝石の取引は一切しないつもりです。だからあなたは、いずれ貧乏領主様になり果てます。これは、人の事を貧乏人と見下した報いだわ─。」
私は貧乏人ではない。
宝石に囲まれて、優雅に暮らす令嬢だった。
そんな私は、宝石よりもっと素敵なものを手にした。
王子の妃となる未来を手にした今の私は、どんな宝石よりも光輝いて見える事でしょう─。
自分の横に座る女性の肩を抱き、私にそう言い放った婚約者。
「ここにいる彼女の家はな、代々この領地を治めて来た領主。俺は、そんな家の一人娘の彼女に見初められてな…そして気づいたんだ。俺にふさわしいのは、彼女のような名家のご令嬢だと。」
「聞けば、あなたは彼の家でお世話になってる身なのでしょう?そんな貧乏人と婚約させられたなんて、彼が可哀そうよ。私と彼が結ばれるに為は、あなたの存在が邪魔なの。もう、彼の家を出て行ってくれない?」
「これは手切れ金だ、受け取れ。俺に捨てられた上に行き場も無くなるんじゃ、流石に惨めだからな。」
そう言って、彼は私に札束を投げつけると…彼女と腕を組み部屋を出て行った。
私は床に散らばったお金を拾い集め、溜息をついた。
私が、この家で世話になる貧乏人ですって?
そんな事、いつ私が言いました?
勝手に勘違いして私を見下し、あのような性格の悪い女を選ぶなど…実に愚かね─。
※※※
「婚約、おめでとう。君が次の領主になるのか?」
「ええ。いずれ彼女の父に代わり、俺がこの地を立派に治めてみせます。」
婚約発表の為にこんな盛大なパーティーを開いてくれるなんて…さすが領主様の家だ。
こうして次期領主とちやほやされ、多くの者から祝福されるのはいい気分だな。
するとその会場に、俺の父親が焦った表情で駆けつけて来た。
「お前…あの娘と婚約破棄したと言うのは本当だったんだな!」
「一体どうしたんです、そんなに慌てて?婚約破棄した挙句、家から追い出してやりましたよ?父上もお荷物が減って、さぞや嬉しいでしょう?」
「お前というやつは、何て馬鹿な事を…。」
父は、その場にガクリと崩れ落ちた。
するとその父の後ろから、一際豪華なドレスを纏った娘が歩いて来るのが見えた。
…この娘、すごい数の宝石を身に着けてるな。
ドレスにも、あちこち宝石がちりばめられている。
これは、とんでもない金持ちの家の娘だ。
それこそ、領主の娘である彼女が見劣りしてしまう。
一体、どこのご令嬢だ?
「婚約、おめでとうございます。」
「お、お前、なぜこんな所に?その宝石は、何だ!?」
それは、俺が捨てたはずのあの女だった。
※※※
「ああ、この宝石ですか?これは私の所有する山から採れる物ですわ。これくらいの宝石、ゴロゴロと出てきますけど?」
「何だと!?」
「実は私、鉱山を持つ家の一人娘なんですが…ある日、あなたの家を訪ねよと神託を受けましてね。それをあなたのお父上にお話しした所、私の実家の事を知ったあなたのお父上が、是非私をあなたの婚約者にと願われ…それであの家に住む事と、この婚約が決まったのです。でも…肝心のあなたが、私と結ばれるのをお望みではなかったから。」
「い、いや、それはだな─」
「今日は、こちらをお返しに来たのです。あなたが手切れ金だと、私に渡したお金。私には、こんなお金は必要ないので。」
「な、なぁ…俺ともう一度、やり直さないか?お前がそんな金持ちと知ってたら、俺は─」
「ちょ、ちょっと…何を言ってるのよ!」
「うるさい!だって…あの宝石を見て見ろ。どう見てもお前より、彼女の方が大金持ちだ。」
そして、二人はその場で喧嘩を始めたが…私はそれを冷ややかな目で見た。
「ご冗談を…私には、もう素敵な方がみえますから。」
「用事は、済んだかい?」
「まさか、この方は…この国の第一王子?何故王子と一緒に居るんだ!?」
「この方には、先程この屋敷に来る際に偶然にも見初められまして。私が受けたご神託の相手は、あなたでなく彼だったんですね。」
「お前が、見初められた!?」
「昨日神官長が神託を受けてね。この領地の領主の娘が、婚約を発表するパーティを開くが…そこに、俺の未来の妃が訪れると。その娘は、王家を更に豊かにしてくれる特別な財力を持ち…しかも、立派な世継ぎを埋める健康な体、妃としての賢さを備えた娘だと言うじゃないか。」
「特別、と言えるのか分かりませんが…私の家の鉱山で採れる宝石には、全て魔力が備わってましてね。その価値は、普通の宝石と比較にならない程なのです。」
「そ、そんな娘を、俺は手放してしまったのか…。」
そして彼は、彼の父同様にその場に崩れ落ちた。
「私の家は…もうこの領地での宝石の取引は一切しないつもりです。だからあなたは、いずれ貧乏領主様になり果てます。これは、人の事を貧乏人と見下した報いだわ─。」
私は貧乏人ではない。
宝石に囲まれて、優雅に暮らす令嬢だった。
そんな私は、宝石よりもっと素敵なものを手にした。
王子の妃となる未来を手にした今の私は、どんな宝石よりも光輝いて見える事でしょう─。
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