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不愛想でつまらない女だと婚約者に捨てられた私…妹を選ぶあなたには、破滅が待っています。

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 私は昔から、表情に乏しい女だった。

 自分としては喜んだり怒ったりしているつもりだけど、どうにもそれが上手く表情に出せないのだ。

 彼と初めて会った時も、とても不思議がられた。

「お前は俺に不満があるのか?婚約するにあたって、嬉しくはないのか?」

 私は、以前から彼に憧れていた。
 だから、彼と婚約できる事はとても嬉しかった。

 私は表情で伝えられない分、言葉でそう伝えた。

 彼は納得し、私との婚約を受け入れた。

 そしてそれから、数年の月日が流れた─。

※※※

 ある日私は、突然彼に、婚約破棄を告げられたのだ。

「俺は、もうお前に飽きたんだ。お前のような不愛想でつまらない女より、愛想が良くて楽しい女と一緒に居たい。」

「…それは、もしかして妹の事ですか?」

「お前…!何だ、知ってたのか。」

 彼が、最近私の妹と密会して居ると噂で聞いていたけど…彼の反応を見るに、どうやら本当の事だったのね。

「あの子は、微笑みの令嬢と呼ばれるだけあって、とても笑顔が魅力的だ。お前とは正反対だな。それに…あの子から聞いたぞ?お前は、家では本当は我儘で横暴で…妹のあの子を虐めてるんだって?」

「ま、まさか!」

「不愛想でつまらない上に、悪女だったとは…本当に良い事なしだな、お前は。もう俺の事は忘れろ。そして、妹にも近づくな。」

 結局、彼は私の言い分を何も聞く事なく、私の元から去って行った─。

※※※

「…という事でな、あいつとはちゃんと婚約破棄しかたら。」

「私を虐めた事を理由に訴えたら、慰謝料貰えないかしら?そのお金があれば、私たち優雅に暮らせると思うの。」

「まぁ、あいつは金を溜め込んでたし…上手い事やれば、金はとれるかもな。」

 醜い笑みね…、あなた達の笑みは。
 私は、抱き合う婚約者と妹を見て、眉をひそめた。

「…そうはいかないわよ。」

「お前、何でここに!?」

「妹の真実のあなたに教えようと思いましてね。私がその子を虐めてたんじゃない…本当は、私がその子に虐められてたって。私が感情を表に出せなかったのは、その子に呪いをかけられてたからです。」

「何!?」

 私は鞄から、一枚の紙を取り出した。

「それ…!お姉様、私の部屋に入ったわね!」

「あなたの部屋から、夜な夜な呪文が聞こえてくるのは何だろうと思ってたけど…これは、昔王都で流行った禁呪じゃない。この術をかけられた者は生命力を削られ、感情が欠乏し、やがて廃人になってしまう。とても恐ろしい物だから、使った者は死罪になるのよ?」

「だ、だって…お姉様がいけないのよ!私はあなたよりも優位でありたかったのに…あなたの笑顔の方が可愛いって言われてたから…だからそれで!」

「それで物心ついた時からずっと、私をこの術で呪ってたって訳?あなたって子は…恐ろしい子!」

 彼は、妹を見て真っ青な顔をしている。

「事実が明らかとなった以上、こんな呪いはすぐに解くわ。」

 私はその紙を持つ手に、ぐっと力を込めた。

「まさか…辞めてお姉様!」

 私は、その紙をビリビリと破り捨てた。

「きゃあぁ──!」
 
 途端妹はその場に崩れ落ち…意識を失ってしまった。

「呪いは正しい方法で解かないと、かけた本人にしっぺ返しが来るものね。その子は、もう二度と正気に戻らないでしょう。だから、面倒はあなたが一生見て頂戴。」

「な、何!?」

「それが私を捨て、その子を選んだあなたの罪滅ぼしです。それから、私への慰謝料も忘れないで下さいね。私との婚約中にその子と浮気したんだから、当然よ。」

「そ、そんなぁ…!」

※※※

 その後彼は、私に払った慰謝料と、妹の世話のせいでとても苦しい生活を送っているらしい。

 やがて、自分たちの浮気を棚に上げ、私から慰謝料を取ろうとした愚かさが世間に知られ…皆に白い目で見られる事に耐えられなくなった彼は、妹を連れ夜逃げの様にしてこの地を去って行った─。

 一方私はというと…子供の頃以来の笑顔を取り戻す事ができ…妹に代わり、私が微笑みの女神と呼ばれるようになった。

 そして、そんな私の微笑みが素敵だと言う殿方は、今や星の数程居る。
 私に特定の相手が居ないと知るや、彼らは私を求めてやまない。

 私はその中でも、優しくて、真面目で…何より私だけを見てくれる方と出会う事ができた。

 そして近い内に、私はその方との婚約が決まったのだ。

 私は今度こそ本当の幸福を手にし、心からの笑みを浮かべる事が出来るでしょう─。
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