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私の結婚は、決して幸せになる事は出来ない…あなたたち兄妹の思い通りにはさせませんよ?
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「俺と…結婚して欲しい!」
「それは…。」
「必ず、君を幸せにするから。」
恋人のその言葉で、私は家出を決意した。
だってこの結婚、不幸でしかないもの─!
彼にプロポーズされた私は、領地の外れにある深い森の中に辿り着いた。
ここは、通称「惑わしの森」。
一度足を踏み入れたら、二度と出る事は出来ないと言われている。
でも私には、ここが一番安全な場所だわ…。
恋人とあのまま結婚する方が、どれだけ危険だったか。
もし結婚してたら…私は、この世から去る事になって居ただろう─。
※※※
「…だからお兄様は、何としてもあの娘と結婚してね?」
「分かったよ、可愛いお前とこの家の為だ。あの女は、俺の言う事なら何でも聞く。結婚しろと言えば、はいと言って俺の胸に飛び込んでくるさ。」
ある日聞いてしまった、彼とその妹の会話。
二人は、ある紙を見ながら話をしていた。
その紙を覗き込む二人は、とても醜い笑みを浮かべていた─。
後日、私は部屋に忍び込むと、机の引き出しからその紙を取り出した。
「…私の、財産に関して?」
私はその時、漸く二人の企みに気づいたのだった。
そして決めた。
彼から結婚の話が出たその時は、ここへ逃げようと─。
※※※
「あの女は、まだ見つからないの?」
「大丈夫だよ。女の足で行ける所なんて、たかが知れてる。俺の従者が総出で探してるんだ、もうすぐ見つかるさ。」
「娘が戻って参りました!」
「ウフフ、逃げ切れないと思って諦めたのね。」
「今行くから、待たせておけ。」
※※※
「心配したんですよ、急に居なくなるから…!きっと、マリッジブルーというものね。」
「ハハハ、そんなに気負う事は無いのに。俺の愛で、必ず君を幸せにするのだから。」
「いいえ…あなたとの結婚は不幸にしかなりません。私…知ってますよ?あなたは私と結婚したら、病に見せかけすぐ私を殺すつもりだって事。その為の計画が、この紙に書いてありますから。」
「そ、その紙…無くなったと思ったら、あなたが持ち出してたの?ち、違うの…それは何かの誤解です!」
「そうだ、俺がお前にそんな事するはずが…!」
「お前たち、嘘を言うな…もう調べはついてる。お前の遊び仲間が、つい最近、お前に毒を渡したと自白した。」
一人の青年が、部屋の中へ入って来た。
「あなたは…領主様のご子息様!何故、あなたがここに!?」
「彼女が俺に助けを求め、惑わしの森を抜けてやって来たんだ。彼女は俺の幼馴染。彼女に何かあれば俺が助ける、昔からそう約束していた。あの森は、一度足を踏み入れたら二度と出る事は出来ないと言われているが、例外がある。あそこには、領主しか知らない道が存在するんだ。そしてその道を辿れば、すぐ領主の屋敷に着くようになっているんだ。」
「私は幼い頃に、彼の案内で何度もその道を通った事があるから、決して迷わない自信があった。あなたたちは必死に私を探す…だから、わざわざあの森を逃げる必要があったの。」
「お前たちの目的は、身寄りのない彼女の財産。この家はお前たち兄妹の浪費で破産寸前らしいな。それを、その金で穴埋めしようとしてたんだろう。次期領主として、この犯罪を見過ごす訳にはいかない!」
「頼む、許してくれよ…お前は俺の恋人だろ?」
「だからこそ、許せないんじゃないの!私は、絶対にあなたたち二人を許しませんから─。」
※※※
二人は、私を殺そうとした罪で捕らえられた。
主が居なくなり使用人も去ったあの家は、そのまま朽ちて行き…やがて潰れた。
これで何もかも…全て消えて無くなったわね─。
「…それにしても、昔に教えた道をよく覚えていてくれたね。」
「あの時、あなたの顔がすぐ浮かんだの。あなたに会いたい、あなたの元へ行きたいって思ったら、すぐに道が分かったわ。」
「そうか…でも君はもう、二度とあの森に入る必要は無いよ。これからは、ずっとここに…俺の傍に居てくれないか?」
「傍にって…!」
「俺と結婚しよう。必ず、君を幸せにするから。」
この人となら、今度こそ幸せになれるはず。
だって…お金じゃなく、私自身を求めてくれる人だから…。
私は頷き、彼の胸へと飛び込んだ─。
「それは…。」
「必ず、君を幸せにするから。」
恋人のその言葉で、私は家出を決意した。
だってこの結婚、不幸でしかないもの─!
彼にプロポーズされた私は、領地の外れにある深い森の中に辿り着いた。
ここは、通称「惑わしの森」。
一度足を踏み入れたら、二度と出る事は出来ないと言われている。
でも私には、ここが一番安全な場所だわ…。
恋人とあのまま結婚する方が、どれだけ危険だったか。
もし結婚してたら…私は、この世から去る事になって居ただろう─。
※※※
「…だからお兄様は、何としてもあの娘と結婚してね?」
「分かったよ、可愛いお前とこの家の為だ。あの女は、俺の言う事なら何でも聞く。結婚しろと言えば、はいと言って俺の胸に飛び込んでくるさ。」
ある日聞いてしまった、彼とその妹の会話。
二人は、ある紙を見ながら話をしていた。
その紙を覗き込む二人は、とても醜い笑みを浮かべていた─。
後日、私は部屋に忍び込むと、机の引き出しからその紙を取り出した。
「…私の、財産に関して?」
私はその時、漸く二人の企みに気づいたのだった。
そして決めた。
彼から結婚の話が出たその時は、ここへ逃げようと─。
※※※
「あの女は、まだ見つからないの?」
「大丈夫だよ。女の足で行ける所なんて、たかが知れてる。俺の従者が総出で探してるんだ、もうすぐ見つかるさ。」
「娘が戻って参りました!」
「ウフフ、逃げ切れないと思って諦めたのね。」
「今行くから、待たせておけ。」
※※※
「心配したんですよ、急に居なくなるから…!きっと、マリッジブルーというものね。」
「ハハハ、そんなに気負う事は無いのに。俺の愛で、必ず君を幸せにするのだから。」
「いいえ…あなたとの結婚は不幸にしかなりません。私…知ってますよ?あなたは私と結婚したら、病に見せかけすぐ私を殺すつもりだって事。その為の計画が、この紙に書いてありますから。」
「そ、その紙…無くなったと思ったら、あなたが持ち出してたの?ち、違うの…それは何かの誤解です!」
「そうだ、俺がお前にそんな事するはずが…!」
「お前たち、嘘を言うな…もう調べはついてる。お前の遊び仲間が、つい最近、お前に毒を渡したと自白した。」
一人の青年が、部屋の中へ入って来た。
「あなたは…領主様のご子息様!何故、あなたがここに!?」
「彼女が俺に助けを求め、惑わしの森を抜けてやって来たんだ。彼女は俺の幼馴染。彼女に何かあれば俺が助ける、昔からそう約束していた。あの森は、一度足を踏み入れたら二度と出る事は出来ないと言われているが、例外がある。あそこには、領主しか知らない道が存在するんだ。そしてその道を辿れば、すぐ領主の屋敷に着くようになっているんだ。」
「私は幼い頃に、彼の案内で何度もその道を通った事があるから、決して迷わない自信があった。あなたたちは必死に私を探す…だから、わざわざあの森を逃げる必要があったの。」
「お前たちの目的は、身寄りのない彼女の財産。この家はお前たち兄妹の浪費で破産寸前らしいな。それを、その金で穴埋めしようとしてたんだろう。次期領主として、この犯罪を見過ごす訳にはいかない!」
「頼む、許してくれよ…お前は俺の恋人だろ?」
「だからこそ、許せないんじゃないの!私は、絶対にあなたたち二人を許しませんから─。」
※※※
二人は、私を殺そうとした罪で捕らえられた。
主が居なくなり使用人も去ったあの家は、そのまま朽ちて行き…やがて潰れた。
これで何もかも…全て消えて無くなったわね─。
「…それにしても、昔に教えた道をよく覚えていてくれたね。」
「あの時、あなたの顔がすぐ浮かんだの。あなたに会いたい、あなたの元へ行きたいって思ったら、すぐに道が分かったわ。」
「そうか…でも君はもう、二度とあの森に入る必要は無いよ。これからは、ずっとここに…俺の傍に居てくれないか?」
「傍にって…!」
「俺と結婚しよう。必ず、君を幸せにするから。」
この人となら、今度こそ幸せになれるはず。
だって…お金じゃなく、私自身を求めてくれる人だから…。
私は頷き、彼の胸へと飛び込んだ─。
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