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帰還した聖女の妹に心変わりした婚約者ですが…神を裏切った悪女に溺れて、愚かですね。

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「皆、聖女様のお帰りだぞ!」

 聖女の妹が、巡礼旅を終え帰って来た。
 
 領民たちは皆、彼女を温かく迎え…そしてそれは、私の婚約者も同じだった─。

※※※

「私、暫くここに居てもいいですか?」

「勿論だ!旅の疲れもあるだろう…是非、ゆっくり過ごしてくれ。」

 そして妹は、私が守っている神殿に入る事になった。

「お姉様も聖女になったって言うけど…巡礼旅を終えた大聖女の私には、到底敵わないわね。この私が、お姉様の分まで祈りを捧げてあげる。」

「…結構よ。これまであなたが居なくても、この地は平和そのものだったから。」

「な、何よ…普通の聖女の癖に偉そうに!」

 それからというもの、妹は神殿に居座り、これ見よがしに私の役目を次々と奪って行った。
 
 そして、ついには─。

「妹に聖女の務めを任せ、自分は遊び惚けてるんだって?その上で、身の回りの世話もさせてるそうじゃないか。領主である俺の婚約者の癖に、何と情けない…。お前みたいな女、もう婚約破棄だ!」

「待って下さい、それは何かの間違いで─」

「お姉様、言い訳は見苦しいわ。潔く彼から身を引いたそれによりら?」

 そんな事…勝手に神殿を出て行き、この地を捨てたあなたに言われたくないわ!

 妹は巡礼旅を目的とし、この地を去ったのではない。
 
 真実を知った私は、それによりこの地の民が不安に思い騒動になるのを避ける為に、必死な思いで聖女の修業に励み、今の立場を得たのだ。
 そしてそのおかげでこの地は守られ、聖女としての妹の名誉も守られたというのに…。

 そこまで言うなら、もういいわ─。

※※※

「この祭壇に祀られている、鏡を見なさい。あなたが何故旅に出たか…旅の間に、本当は何をしていたかが分かるわ。」

『…この地にも飽きたな。金持ちで顔のいい男など限られてるし…どうせなら、他の地に行って探してみたいわ。でお、金もないし…。そうだ!この神具をお金に換えて、旅の資金にしちゃおう。』

「な、何だこれは!?」

「だ、駄目、見ないで!」

 そして鏡は、男と行為に及ぶ妹も映し出した。

『お前…そろそろ、戻らなくていいのか?』

『え~…私が居なくても、どうせお姉様が上手くやってるでしょう?それより…もっと私と良い事しましょうよ?』

「や、辞めて─!」

「あなたは、本当は巡礼旅などしていない。神具を売って得たお金で…他の地で男遊びをして居ただけよ。そんなふしだらな女、聖女でもなんでもないわ。」

「よ、よくも俺を騙したな!」

「何よ!私が好きだ…お姉様みたいな地味女には飽きたから、もう捨てる。だから傍に居てくれって言ったのは、あなたの方じゃない!」

「そうね…確かに、その男はそう言った。あなたも愚かね…こんな犯罪者の女を、愛してしまうなんて。」

「そ、それは…。」

「この神殿を守る神は、妹の行為に大変お怒りだった。それを私が何とか鎮め、それでこの地は守られて来たのに…。なのに、穢れた身のあなたが帰って来て、私から聖女の務めを取り上げてしまうし…私の婚約者である男は、そんな女を愛し裏切り行為に走ってしまい─。それを見た神は、再びお怒りになってしまった。あなた達に罰を与えるまで、その怒りは収まらないでしょう。」

「そんな…ちょっと、浮気心を抱いただけなのに…!」

「妹は、神を裏切った悪女よ?そんな女と幸せになれるだなんて…あなた、本気で思ってたの─?」

※※※

 こうして、真実が明らかとなった妹は聖女の座を剥奪され…更に、神具を盗んだ罪で牢に入れられた。
 そして、牢の中で謎の病を発症し…やがて命を落とした。
 
 また、元婚約者は領主の座を退く事となり…それと同時に妹と同じ病を発症し、こちらも帰らぬ人となった。
 
 恐らくこれが、二人に与えられた神の罰だったのだろう─。
 
 その後この地は、新しい領主様が治める事になった。

 彼はあの男と違い、穏やかで優し心を持った人だった。

 そして彼が、聖女である私に加護を授けて貰おうと神殿にやって来ると…私たちは、何故かすぐに惹かれ合った。

 まさにそれは、神のお導きだったのだろう。
 
 私は彼と婚約する事となり…永遠の愛と、これからは共にこの地を守って行こうと、誓いを立てたのだった─。
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