癒され怪談。SS集

みみ

　Fさんが公園を散歩していた時の話です。
　
　公園内の遊歩道を歩いていると、一体のウサギのぬいぐるみが落ちていました。
　こんなところに、可愛そうだな。
　そう思ったFさんは、そのぬいぐるみを拾うと、汚れを払ってあげました。
　
　その時、ぬいぐるみのタグに、マジックで名前のようなものが書いてあることに気づきました。
　これは持ち主の名前だろうか、それともぬいぐるみの名前だろうか…？
　
　名前は幼い字で「みみ」と書いてありました。
「君の持ち主がみみちゃんかな？それとも君がみみちゃんんかな？早く持ち主が見つかるといいね。」
　そうぬいぐるみに話しかけ、公園内にある管理室に届けました。

※※※

　それから一週間ほどたった、ある夜のことです。
　Fさんは不思議な夢を見ました。

　目の前にあのウサギのぬいぐるみがいて、Fさんにぺこりとお辞儀じぎをすると、こんなことを言いました。
「この前は、ありがとう。ちゃんとお家うちに帰れました。みみちゃんは私のお名前です。」
　そしてFさんにバイバイと手を振り、消えていきました。

　翌日Fさんは公園の管理人さんに、あのウサギのぬいぐるみについて尋ねました。
　すると2日前に持ち主が無事現れ、引き取られていったそうです。
　Fさんはそれを聞いて安心するとともに、あのぬいぐるみには心があって私の話したことを理解し、夢に現れ教えてくれたんじゃないかなと思ったそうです。